同じロッキードのF-104も最後の有人戦闘機と言われていましたが、(こんなことを言っていたのは日本だけ?) どうもF-35が最後の有人機になる可能性は低いようです。
F-35 Lightning II - last of the manned fighters?
Gareth Jennings, London - IHS Jane's Defence Weekly
27 July 2015
(US Air Force)
米海兵隊はロッキード・マーティンF-35ライトニングII供用打撃戦闘機(JSF)の初期作戦能力獲得を7月末までに宣言する見込みだが、次の有人戦闘機があるのか、いいかえればJSFが最後の有人戦闘機になるかと多くの筋が問いかけている。
- 軍事航空にはこれまでも誤った予測があり、従来どおりの概念としての戦闘機は消滅すると何回も言われてきた。ヴォートF-8クルセイダーが1950年代中頃に開発され付けられたニックネームは「最後のガンファイター」で、以後の戦闘機はミサイルのみ搭載すると見られていた。
- 英国は更に先を行き、1957年の国防白書は大胆にも有人戦闘機は今後地対空ミサイルに置き換えると主張していた。これは全く誤った見解で代償は英国国防宇宙航空産業の衰退と高くついた。.
- 最近も今年4月に米海軍長官レイ・メイバスがF-35が「打撃戦闘機として海軍省が調達する最後の有人戦闘機になるのはほぼ確実」と発言している。
- 有人戦闘機が終焉を迎えるといわれてきたのは空対空、地対空ミサイルの開発が根拠だったが、今日では無人機技術が進展し、戦闘機パイロットの仕事を奪いかねない勢いだ。.
- 名称こそ無人航空機(UAVs)、無人航空システムズ、遠隔操縦航空機、遠隔操縦機システムズ、あるいは単にドローンといろいろあるが、無人機は戦場に初めて登場した1980年代から指数関数的に増加している。
- 無人機の先陣を切ったのはイスラエル国防軍で敵防空網を無力化する手段としてUAVを地対空ミサイルの前に飛ばせ有人戦闘機にミサイル陣地の場所を教える方法が生まれた。近年のUAVは情報収集・監視・偵察(ISR)用途でアフガニスタン、イラク、リピア、シリアで運用され、今後も別の国が加わるだろう。ISRに加え、攻撃力も付与され、用途はひろがり、性能も向上している。.
- 無人機の支持派は有人機と比較すれば、人的被害ゼロ、また開発、調達、運用、支援の各コストが低減できると主張している
- 確かにコックピットから地上基地に操縦を移せば、操縦パイロットを危険から解放することはできるが、それでも操作員に被害が出ないとは言い切れない。UAVパイロットが高レベルの精神病に罹患するとの報道はあり、「遠隔操作」戦争に長い期間さらされると、勤務時間内は戦闘員殺りくをし、帰宅すれば平常の家庭生活に戻るパターンを繰り返すうちに精神に異常をきたす例が報告されている。戦闘機パイロットは確かにもっと厳しい身体的危険にさらされるが、配備基地では同輩や仲間が支援する構造になっており、これは無人機操作員にはないぜいたくだ。
- また政治上の見地からはパイロットがコックピットで危険状態にさらされる方が望ましいといえる。UAVを投入すると大きな論争が発生する。その理由として運用国には全く危険がない状態なので投入の閾値が下がるという主張がある。反対派には無人機も有人機の交戦規則 (RoE) に従う点で違いはなく(各国の空軍では同じなのだが、CIAのような秘密組織が同じRoEを適用しているかは不明) 無人機の使用が「フェアでない」から道義にかなわないというのだ。有人機が同じミッションを実施しても哲学的な考察の余地はない。
- 有人機無人機で開発・調達・運用・支援の各コストを比較するとUAVの発達はF-35の開発時期と重なっているのが有人機にとっては不運としかいいようがない。F-35は国防産業で浪費と無駄の象徴とされている。
- 1.5兆ドルをF-35に投じることで(同機は歴史上最も効果な国防事業となった)UAVのほうが安上がりでコスト効果が高い解決方法だと言うのは実に易しいことだ。だがそんな比較は誤解の元となる。つまり比較自体がおかしいということだ。
- F-35は敵防空体制の中ですべての形式の戦闘を実施する設計で、UAVはISRや軽攻撃を比較的脅威度の少ない空域で実施する前提だ。無人機の妨害は極めて簡単にできる。たしかに次世代の無人機として敵防空体制の下でも作戦飛行できる構想が完成にちかづいており、米国の無人艦載監視偵察攻撃機(UCLASS)や英仏共同開発の次世代戦闘航空機システム(FCAS)さらにヨーロッパ共同開発のnEUROnがあるが、やはり他のUAVと同じ政治課題からは免れ得ない。
- また「無人」ということばも誤解を与えかねない。パイロットがいないのではなく地上に移動させただけだ。皮肉なことに今日の無人機の運用には有人機よりも多くの人員が必要だ。グリペン戦闘機の例ではパイロット一名でミッションを実施するが、無人機リーパーには二名が機体を空域に投入し、その後ミッション部分は別の二名あるいは三名のチーム(米国内)に任せて、再び最初のチームが機体回収にあたるので、5名が関与する。両機種にはほぼ同様のレベルのインフラ施設が必要であり、有人サポート体制が必要なので、UAVが宣伝するような人員減・支出減が本当に実現するのか判断できない。これはすくなくとも近い将来まで同じだ。
- メイバス長官がF-35が海軍最後の有人戦闘機になると発言しているが、ペンタゴンはすでにJSFの後継機種開発を始めている。ただし、無人機ではない。
- 米空軍及び海軍は第六世代戦闘機と呼称する新型機の開発を開始しており、次世代戦術航空機Next Generation Tactical Aircraft (Next Gen TACAIR) と呼んでいる。事業開始は2013年で、Next Gen TACAIRは国防高等研究プロジェクト庁(DARPA)が主導し、次世代の制空戦闘システム・機材の開発を目指している。
- ボーイング、ロッキード・マーティン、ノースロップ・グラマンの各社が第六世代戦闘機の競合に参加する意向を示しており、ボーイング、ロッキードは概念図を示しているが、ともに有人機だ。まだ概念段階だが、第五世代機と同様の特徴があるといわれる。ただし推進力、機体構造、エイビオニクスで未来的な進歩がある。F-35が最後の有人戦闘機になるのかという点について各第六世代機は選択的に有人になるといわれているので完全に無人機にはならない。
- 選択的に有人機になると完全な有人機あるいは無人機よりも利点があり、今後の戦闘機設計でひとつの道を示しているようだ。選択的有人操縦型にすれば両方の良い点をとり、無人機のクルーのリスクを減らす一方で有人機ならではの柔軟性と能力発揮を実現できる。
- Next Gen TACAIRの情報要求では選択的有人操縦型機を求めており、将来の高速航空機の方向性がひとつ打ち出されている。Next Gen TACAIRの初期作戦能力獲得時期は2030年ごろとされ、就役する新型機はF-35と並行して相当期間にわたり運用され、そのあとの機種に役目を譲るとしても戦闘機パイロットの役目がなくなる事態はまだ終わらない。■
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