指向性エネルギー兵器特にレーザーで何らかの進展が生まれつつあるのか複数のサイトで取り上げられています。今のところ将来を見通した観測記事の域を脱していませんが、技術の成熟化が着々と進んでいることが伺われます。この話題は今後も追っていきます。
The Laser Revolution: This Time It May Be Real
米海軍のLsWS(レーザーウェポンシステム)はUSSポンセに搭載されペルシア湾に展開中
TYSON’S CORNER: 新しいレーザー技術なら中国式の大量攻撃への対応手段として有望だ。ただし、レーザーではこの数十年、期待ばかり先行してきた。レーガン時代のスターウォーズ計画から航空機搭載レーザー(2011年計画中止)まであった中で推進派は懐疑的に感じる向き、特に議会筋を納得させる必要がある。ただし、今回は事情がちがうようだ。
- 議会指向性エネルギー議員会 Congressional Directed Energy Caucus の副会長ジム・ランジェヴィン下院議員 Rep. Jim Langevin は「議会内で指向性エネルギーへの態度はまだら模様だが、技術が成熟化しつつあり支持が強まっている」
- 「これまで指向性エネルギーは過剰宣伝され実態が追いついてなかった。多分これが一番の阻害要因だろう」
- 米国が指向性エネルギー兵器に費やした予算は1960年から累計で60億ドルを超す。「ただし最近まで成果があまりに貧弱だった」とダグ・ランボーン下院議員 Rep. Doug Lamborn もランジェヴィン議員の同僚として発言している。ただし現在は「興奮を呼ぶほどの移行期にあり、COCOM(戦闘部隊司令官)の要求水準にもうすこしで到達する所まで来た」
- 「指向性エネルギー兵器への関心を喚起するのは大変だが、議会内では超党派的な支持がある一方、反対意見もある。予算をめぐる競争は大変だ」とランボーン議員は述べている。
- 国防総省の指向性エネルギー関連の支出実績は年間3億ドルほどだが、すべて研究開発向けである。「拡大すると約束できないが、縮小はないだろう」とフランク・ケンドール副長官(調達、技術開発、兵站担当)は語っている。
- ケンドールの履歴を見ればどこまで開発が進んでいるのか、いないのかがわかる。ケンドールは指向性エネルギーにかれこれ40年間携わっており、最初は陸軍の防空部隊で若い大尉の時で、有望なこの新分野で論文を書いている。レーガン時代の戦略防衛構想、空中発射レーザー事業に関与してきたが、今回いよいよレーザーが現実の手段になろうとしている。
- ただし簡単ではない。「DE(指向性エネルギー)は1976年にもうすぐ実用化と言われた。1986年でも同じだったので、今や用心深くなっている。ただし、注目すべきブレイクスルーが本当に発生している」とトレイ・オバリング中将(退役)retired Lt. Gen. Trey Obering が発言している。
- オベリングは現在はブーズ・アレン・ハミルトンにいるが、以前はミサイル防衛庁長官で空中発射レーザー事業(ABL)の末期を見ている。ABLが失敗したのは戦術面を犠牲にしてまで技術の完成を目指したためだという。「実施可能かという点が支配し、何ができるのか、作戦上稼働するかは二の次だった」という
- それに対して今の技術は実験室レベルを脱し作戦レベルになってきたとオベリングは指摘する。とくに海軍の30キロワット級レーザーがUSSポンセに搭載された事例に言及している。「技術が完成するまで待つのではなく、今利用可能な手段を軍に取り入れ、フィードバックから第一線部隊がこの新兵器を話題にしています」 この方法で技術成熟化が進む中で「第一線部隊は受領して違和感なく感じている」という。
- このような現実的かつ経験を増やす形のテスト使用が議会内に着実に支持派を生んでいる。「米海軍がUSSポンセで行っている内容についてはよく言及しています。R&Dというだけでなく一部作戦レベルにあると見ています」(ランジェヴィン議員)
- 海軍の30キロワット級レーザーは現時点で米軍で唯一の作戦用レーザーだ。(目標照射用の非致死性レーザーは普及している) だがそれ以外の兵器も準備が進んでいる
- 空軍特殊作戦軍団は高出力レーザーをAC-130ガンシップの次期モデルに搭載しようとしている。「ブロック60にレーザーを搭載するのは10年後になるでしょうが、ブロック60自体はあと数年登場します」とAFSOC司令官ブラッド・ハイトホールド中将 Lt. Gen. Brad Heithold は語っている
- 空軍研究所は中規模出力レーザーの実用化を企画中だ。中規模といってもミサイルを破壊したりセンサーを利用不可能にできるが、航空機撃墜は不可能だ。これを戦闘機に搭載可能なポッドに収めようとしている。この実証を2020年までに実施するとAFRL司令官トム・マシエロ少将 Maj. Gen. Tom Masiello が発言している。ただし実戦化の日程は公表していない。
- 海軍は100から150キロワット級レーザーの海上公試を2018年までに実施する予定で、ポンセに搭載したレーザーより一気に3倍の強度を狙う。さらに2018年度予算に盛り込む。レイ・メイバス海軍長官の肝いりでできた海軍指向性エネルギー運営グループから提案書が出ている他、作業も開始されている。
- このように海軍は試作品を迅速に実戦部隊の要求に合わせようとしている。
- 第一線部隊司令官がレーザーに求める内容は今日では大きく異る様相を示している。
- 「ミサイル防衛庁に初めて足を踏み入れた2001年当時、実戦部隊はミサイル防衛を真剣に捉えていなかった」とオベリングは回想する。「これから登場するミサイル防衛手段としてイージスなどのモデルをつくろうとしたが、COCOMの側に関心が全く見られなかった。つまりまるっきり信じていなかったのだ。これが今は180度変わりましたね」
- 違いを生んでいるのは脅威対象だ。1991年に米軍は精密兵器体系でどんな仕事ができるかを世界に示した。それを一番注目していたのは中国だ。「それ以来、相手方も精密兵器を装備した場合の想定を恐れてきた」とケンドールは言う。
- 中国は高精度のミサイルに多大な投資をしているとケンドールは言うがロシア、イラン、北朝鮮もそれぞれ整備している。また非国家勢力が精密誘導ロケットや迫撃砲弾と既成品のカメラを無人機に積んで強力な効果を生む手段を作るかもしれない。
- 「現実に直面している問題は指向性エネルギーシステムズがずっと前に想定していたそのもので、特に精密誘導ミサイル、巡航ミサイル、弾道ミサイルです」とケンドールは言う。「今こそこの技術が重要な意味を帯びているわけです」
- だが作業を妥当な長さの時間の間に完成させられるだろうか。
- 「指向性エネルギーの開発ロードマップでは各種技術を応用して効果実証をあと5年で実施できることになっています」とケンドールは報道陣に語っている。「順調なペースではないでしょうか」
- 「現時点で達成できた成果をお知らせすることもできるのですが、まだリスクが多いのが現実です。複数の技術アプローチを取る理由はリスクですが、一歩踏み出さねば、結局どこにも到達できませんからね」■
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