スキップしてメイン コンテンツに移動

★ボーイングは空中給油機市場のチャンスを逸したのか エアバスの一人勝ち?



せっかく一度決まりかけたエアバス案を覆して受注に成功したものの、予想外の開発遅延で損失が膨らむボーイングがこのまま米国内の需要だけを満たす存在になるとは思えませんが、いかがでしょうか。当然日本にもそのうち導入の検討を迫ると見ていますが。実際には給油機の市場はそれほど大きくないのでその分だけKC-46Aの存在が不思議なものに写るでしょうね あいかわらずアブラフィア氏は的確な(その分ボーイングには耳の痛い)指摘をしていますね。

Opinion: For Boeing, Big Losses And Missed Opportunities In The Tanker Market

KC-46 falls flat in international market
Jul 22, 2015 Richard Aboulafia | Aviation Week & Space Technology


給油機の動向を占重要な.出来事が今夏に二つあった。まずボーイングがKC-46開発でふたたびつまづいた。二番目はエアバスのKC-30が再度受注に成功したことだ。ここから今後の給油機市場の動向が見えてくる。
  1. ボーイングはKC-46開発続行のため再度自社資金を投入すると7月に発表し、今回は835百万ドル(税引前)規模だ。これで同機開発の損失は12.6億ドル(税引前)に上る。たった一つ明るいニュースは開発費用が61.6億ドルになることで、これは空軍開発室の試算63億ドルに近い。だがバンクオブアメリカ/メリルリンチのアナリストはこう記している。「ボーイングが12.6億ドルを投じたKC-46Aの原型は767で過去30年間生産されていることを見過ごしていはいけない」
  2. そのわずか前に痛い損害の知らせが入ってきた。韓国がKC-30を採用し、オーストラリアも発注済みKC-30の5機に加え2機追加発注した。
  3. 今のところボーイングはKC-46の海外受注を一機も獲得していない。KC-30は48機で、さらに12機の商談が続いている。インド、カタール、韓国である。KC-46では開発の遅れがボーイングの営業の足を引っ張っているようだ。
  4. エアバスは確定発注を9か国で確保した。事実上追加購入の可能性がある。このことから今後の世界規模での給油機需要の地図が浮かび上がってくる。
  1. ボーイング試算の給油機の市場規模は全世界で800億ドルだが、実は新規かつ未成熟市場だ。2001年まで各国は新造ジェット給油機を導入しようとしても選択はひとつしかなかった。空中給油能力の導入に踏み切ったのはサウジアラビアだけで、ボーイング707を8機、KE-3として新造させている。英空軍が米国除くと最大の給油機運用国だが、中古のロッキードL-1011 とヴィッカースVC-10を使っていた。
  2. その他各国は民間旅客機の改造型あるいは米国から払い下げのKC-135を供用していた。フランスはKC-135Rを、トルコとシンガポールも同型機を受領し、その他国はロッキード・マーティンのKC-130を使う例が多かった。
  3. 2001年になりイタリア空軍が初の次世代新型給油機KC-767の導入を調印した。4機を購入し、日本が同様に4機を同年末に導入決定している。新造給油機の顧客が一年で三倍にふえたことになる。だがボーイングは深刻な予算超過と執行問題をここで起こしている。l.
  4. 今後10年で期待できる規模はわずか40機しかない。その一部がKC-30を供用中の各国分で、その他には中古機を狙うものがあり、イスラエル航空宇宙工業はボーイング767給油機・輸送機転換をコロンビアとブラジルに売り込んでいる。
  5. また時間もボーイングに味方していない。エアバスA330neoの路線就航は2017年で、新型エンジンで性能と燃料消費率が向上する。KC-30がKC-30neoになるだろう。だが767にアップグレード案はなく、KC-46は不利な立場になる。
  6. 一方で787の炭素繊維複合材による機体構造では給油機への転用が大変であり、国防総省がその開発費用を払うとは思えない。777も同様で、給油機に改装される可能性はもっと低い。なぜなら登場予定の777Xでは大きすぎるという問題があるからだ。
  7. 一方でKC-Xが本格的に動き出すと逆に止めるのが難しくなる。予定の179機発注の最後の機体が引渡されるのは2027年以降だろう。その時点で200機のKC-135の平均機齢は60年以上になっているはずだ。KC-10は40年ほどになる。佳境に入る機体生産を中止し、全く新規の給油機(概念としてのKC-Y)を調達するのは空軍には魅力がないだろう。一方でKC-46を取り巻く政治力は同機予算を継続させ別の機体には入り込む余地がなくなるだろう。
  8. そうなるとこのまま続けば、エアバスが給油機の国際需要を一手に勝ち取り、ボーイングは米国内の市場を支配することになる。米軍がお墨付きをつけた機体が国際市場で訴求力がない事例は珍しい。だがボーイングがKC-46開発期間中の損失を最終的には米国内向け販売で黒字に変換するのは大いに有り得る話だ。■


コメント

このブログの人気の投稿

フィリピンのFA-50がF-22を「撃墜」した最近の米比演習での真実はこうだ......

  Wikimedia Commons フィリピン空軍のかわいい軽戦闘機FA-50が米空軍の獰猛なF-22を演習で仕留めたとの報道が出ていますが、真相は....The Nationa lnterest記事からのご紹介です。 フ ィリピン空軍(PAF)は、7月に行われた空戦演習で、FA-50軽攻撃機の1機が、アメリカの制空権チャンピオンF-22ラプターを想定外のキルに成功したと発表した。この発表は、FA-50のガンカメラが捉えた画像とともに発表されたもので、パイロットが赤外線誘導(ヒートシーキング)ミサイルでステルス機をロックオンした際、フィリピンの戦闘機の照準にラプターが映っていた。  「この事件は、軍事史に重大な展開をもたらした。フィリピンの主力戦闘機は、ルソン島上空でコープ・サンダー演習の一環として行われた模擬空戦で、第5世代戦闘機に勝利した」とPAFの声明には書かれている。  しかし、この快挙は確かにフィリピン空軍にとって祝福に値するが、画像をよく見ると、3800万ドルの練習機から攻撃機になった航空機が、なぜ3億5000万ドル以上のラプターに勝つことができたのか、多くの価値あるヒントが得られる。  そして、ここでネタバレがある: この種の演習ではよくあることだが、F-22は片翼を後ろ手に縛って飛んでいるように見える。  フィリピンとアメリカの戦闘機の模擬交戦は、7月2日から21日にかけてフィリピンで行われた一連の二国間戦闘機訓練と専門家交流であるコープ・サンダー23-2で行われた。米空軍は、F-16とF-22を中心とする15機の航空機と500人以上の航空兵を派遣し、地上攻撃型のFA-50、A-29、AS-211を運用する同数のフィリピン空軍要員とともに訓練に参加した。  しかし、約3週間にわたって何十機もの航空機が何十回もの出撃をしたにもかかわらず、この訓練で世界の注目を集めたのは、空軍のパイロットが無線で「フォックス2!右旋回でラプターを1機撃墜!」と伝え得てきたときだった。 戦闘訓練はフェアな戦いではない コープサンダー23-2のような戦闘演習は、それを報道するメディアによってしばしば誤解される(誤解は報道機関の偏った姿勢に起因することもある)。たとえば、航空機同士の交戦は、あたかも2機のジェット機が単に空中で無差別級ケージマッチを行ったかのように、脈絡な

主張:台湾の軍事力、防衛体制、情報収集能力にはこれだけの欠陥がある。近代化が遅れている台湾軍が共同運営能力を獲得するまで危険な状態が続く。

iStock illustration 台 湾の防衛力強化は、米国にとり急務だ。台湾軍の訓練教官として台湾に配備した人員を、現状の 30 人から 4 倍の 100 人から 200 人にする計画が伝えられている。 議会は 12 月に 2023 年国防権限法を可決し、台湾の兵器調達のために、 5 年間で 100 億ドルの融資と助成を予算化した。 さらに、下院中国特別委員会の委員長であるマイク・ギャラガー議員(ウィスコンシン州選出)は最近、中国の侵略を抑止するため「台湾を徹底的に武装させる」と宣言している。マクマスター前国家安全保障顧問は、台湾への武器供与の加速を推進している。ワシントンでは、台湾の自衛を支援することが急務であることが明らかである。 台湾軍の近代化は大幅に遅れている こうした約束にもかかわらず、台湾は近代的な戦闘力への転換を図るため必要な軍事改革に難色を示したままである。外部からの支援が効果的であるためには、プロ意識、敗北主義、中国のナショナリズムという 3 つの無形でどこにでもある問題に取り組まなければならない。 サミュエル・ P ・ハンチントンは著書『兵士と国家』で、軍のプロフェッショナリズムの定義として、専門性、責任、企業性という 3 つを挙げている。責任感は、 " 暴力の管理はするが、暴力行為そのものはしない " という「特異な技能」と関連する。 台湾の軍事的プロフェッショナリズムを専門知識と技能で低評価になる。例えば、国防部は武器調達の前にシステム分析と運用要件を要求しているが、そのプロセスは決定後の場当たり的なチェックマークにすぎない。その結果、参謀本部は実務の本質を理解し、技術を習得することができない。 国防部には、政策と訓練カリキュラムの更新が切実に必要だ。蔡英文総統の国防大臣数名が、時代遅れの銃剣突撃訓練の復活を提唱した。この技術は 200 年前のフランスで生まれたもので、スタンドオフ精密弾の時代には、効果はごくわずかでしかないだろう。一方、台湾が新たに入手した武器の多くは武器庫や倉庫に保管されたままで、兵士の訓練用具がほとんどない。 かろうじて徴兵期間を 4 カ月から 1 年に延長することは、適切と思われるが、同省は、兵士に直立歩行訓練を義務付けるというわけのわからない計画を立てている。直立歩行は 18 世紀にプロ