米中軍事衝突が将来発生するかは予断を許しませんが、テロとの闘いは現実です。しかも下記事が指摘するようにフランチャイズ化しつつ要注意組織が広がっている事実は実に厄介と言わざるを得ません。人質交渉など相手側の期待する効果を一切排除し、冷淡と言われようが筋を貫く姿勢が必要なのでしょう。
Panel: ISIS, Al Qaeda Franchising Efforts Changed the Face of Terrorism
By: John Grady
April 3, 2015 12:22 PM
アルカイダ系集団アルシャハブの戦闘員たち(ソマリア、2013年)
アルカイダあるいはISISと連携していると称する集団がフランチャイズ化しているのが国際テロリズムで最大の変化点だと専門家二名が大西洋協議会で指摘している。.
- ジョージタウン大学で安全保障を専門とするブルース・ホフマンBruce Hoffmanによれば米国は2001年9月11日のニューヨーク及びペンタゴン攻撃のあと「アルカイダの成功に自らをつなげる」テロリスト集団多数の動きを把握できなかったと述べている。「今回も全く同様の誤ち」をボコ・ハラム(ナイジェリア)、アルシャハブ(ソマリア)ほかエジプト、リピアのISISとつながりがあると称する集団で犯していると指摘。
- 17もの集団が各地で活動している。ブルース・ライデルBruce Riedel はブルッキング研究所で情報関連事業の統括者で、ワシントンの聴衆に対して「数が限られているアナリスト、有限な無人機」をどこに配備すべきかと問題提起した。
- アルカイダは組織存続のため劇的な攻撃を仕掛ける可能性があり、ISISは迅速な衝撃を与える作戦を取ることが多いが、テロリズムは米大使館襲撃やレバノン海兵隊隊舎爆破(1983年)で十分効果をあげられることを実証済みだ。実施しても失う代償はごくわずかだが、成功した場合の効果は大きく、海兵隊はレバノンからわずか数カ月後に撤退している。同様に2001年の同時攻撃に投じた50万ドルは米国の支出5兆ドルを呼んだ。ここにはアフガニスタン、イラクでの長期戦の経費を含む。
- ホフマンによればアルカイダを主導するアイマン・アルザワヒリAyman al Zawahiri が数ヶ月に渡り沈黙を保っているのはアルカイダが南アジアで支援拡大を図っているためだという。この南アジアとはインド亜大陸からミャンマー、インドネシアまでを指す。
- パキスタン海軍の誘導ミサイルフリゲートの乗組員、士官に潜入し艦を占拠し、各国海軍が海賊対策活動を展開中の海域に同艦を移動させ米海軍艦船を攻撃しようとして失敗した試み(2014年9月)では「空母を狙っていた形跡がある」とし、攻撃を実施していたらパキスタンと米国の海上戦に発展していた可能性を指摘。
- ライデルはCIA分析官の経験があり、こう発言している。「全体的なアプローチ」がテロリスト対策に必要だ。「大規模な武力が必要、無人機も必要、SEALも必要」だが、これに漸進的な改革を可能とする方策を組み合わせる必要があり、しかもその対象国は独裁者が君臨してきたような国であり、方策ではイスラエル・パレスチナ間のような「二カ国問題の解決」の真価が理解されるものでなければならない。
- ホフマンも「指導層の排除は失敗した」とし、テロリズムの勢いをそぐことができなかったとする。「もっと重要なのはインフラストラクチャーの劣化だ」とCIA、FBI、国家地理空間情報機関が脅威環境の変化に対応して来たことを指摘。
- 「時期尚早の勝利宣言は避けるべき」であり「アルカイダ消滅の宣言」も控えるべきとライデルは発言し、これは自分で自分を痛めつけるのと同じと指摘。
- 合衆国政府も一部で「アメリカが制御できない現象がある」ことは承知していると、ライデルはアラブの春の例を上げた。
- アラブの春が始まった段階では民主的政府誕生への希望的観測があった。しかし期待は新政府が頓挫し、その後の反動でエジプトのように政治経済の進展に反撥が生まれ、あるいはリビアのように国家体制そのものが崩壊した中で失望に変わる。.
- イエメン事案ではライデルはサウジアラビアが空軍力の限界に気づきつつあり、フーシ反乱勢力から領土奪回するとしてもイランの影響力排除で困難に直面していると指摘した。
- パキスタンはサウジ主導の作戦への地上部隊派遣に同意しなかったが、「エジプトを説得して」地上部隊の動員に成功する可能性はあるという。
- 即位したばかりのサウジ新国王への教訓は「開戦するのは簡単だが終結させるのは困難」ということとライデルは語った。
- 20ヶ月後には米国にも新政権が誕生するが、その門出に待ち受ける課題として、ISISがイラクでも地下に潜入するのか、有志連合が撤兵する条件はなにかを考えることだろう。
- NATOがアフガニスタンで展開した作戦はきわめて有益な効果を示し、各国の部隊を統合して戦闘条件に合わせたが、英国のように国防予算そのものが縮小され地上部隊が規模縮小している例があるとライデルは指摘した。
- 両名ともアメリカの対テロ防衛体制は9.11以降大幅に拡充しているとはいえ、詰めの甘い点もあったとテキサス州フォート・フッド基地での兵士銃撃事件、マンハッタンのタイムズスクエアでの爆弾未遂事件、ボストン・マラソンのゴール地点付近の爆弾テロ事件があった。
- ボストン事件の際は大都市圏での活動が制限された。「今だったらあれほど柔軟な対応ができるだろうか」とライデルはコメントしているが、この事件は2001年9月1日に3千名の生命を奪ったテロ攻撃とは規模が全く違うものだった。■
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