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★日米防衛新ガイドラインは予想以上に多面的かつ画期的



ガイドラインの改定で国内報道は近隣同盟国(韓国、オーストラリア等)への対応などを中心にややバランスを欠いた記事の構成になっていませんか。本稿ではそれとはちがう視点(米国防高官=?)の発言を引用する形で広範囲の話題をコンパクトにまとめていますのでご紹介します。

US, Japan Strike New Military Agreement

By Aaron Mehta and Paul Kallender-Umezu 4:43 p.m. EDT April 27, 2015
WASHINGTON and TOKYO — 日米両国が新しい防衛協力改訂に月曜日合意した。日本の防衛面でのプレゼンスを世界規模にひろげ、サイバー、宇宙、産業分野で二国協力を強化するとの内容だと米国防関係高官が明かした。
  1. 新日米防衛ガイドラインは月曜日ニューヨークシティで日米間の外交、防衛トップによる2+2協議で合意された。
  2. 上記米国防高官は合意書署名に先立ち記者団に内容を話し、合意内容は日本を米国の軍事上のパートナーとして世界規模で再定義する意味があり「非常に大きな出来事」と評した。
  3. 日本は攻撃を受けた域内の同盟国を防衛することができるようになる。米国に向けて発射されたミサイルを日本のミサイル防衛で迎撃できることも意味し、上記高官は北朝鮮が地域安定度ヘの「脅威度を高めている」と評した。
  4. さらに日本が世界規模で平和維持活動や人道救助活動を展開すること、さらに情報収集・監視・偵察活動(ISR)の強化が見込まれる。
  5. 新ガイドラインは常設の「同盟間調整メカニズム」 ”alliance coordination mechanism" の創設を謳い、日米の防衛・外交関係者で構成するとしている。この機関が日米の作戦活動を調整・統制することが期待される。過去に同様の機能がなく防衛関係が進まなかった経緯がある。
【日本の観点】
  1. 各論は今後両国で詰めるが、まずガイドラインを日本の国会で審議可決する必要がある。障害はほとんど見られず順調に進展するだろう。
  2. 政策研究大学院大学の道下徳成教授は新ガイドラインは日本の安全保障を強固にする基盤と見ており、攻撃を受けた日本を救援する責任が米国にあることが前提とする。
  3. 2014年を通じ日本側関係者から異口同音のように日本が紛争に巻き込まれることへの警戒心と反撥する国内感情があると主張していた。日本と直接関係しない他国の紛争に巻き込まれることを警戒していると道下は説明する。
  4. 日本の観点とは世界は言うまでもなく地域内でも力を露骨に誇示する国には関わりたくないというものと道下は説明する。集団的安全保障に道を開く立法措置が今後生まれるが、妨害や制約を受けている。同様に新ガイドラインは米艦船を日本が守るための白紙小切手とは見られていない。
【中国】
  1. 今回のガイドラインは安倍内閣が昨夏示した日本の防衛での変更点をあらためて盛り込んだものだ。東アジアでの安全保障面の課題への対応を重要視しており、とくに中国による軍事外交面での挑戦を意識している。
  2. この点で日米両国は中国の台頭をいかに封じ込めるかで広範な合意形成ができており、今回の改訂でも重要課題と位置づけている。そこで中国や北朝鮮が今回の合意形成を歓迎することはない。両国とも兵力投射能力の拡大につながると見るのは必至であるが、新ガイドラインでは特定の国名は表記していないと上記高官は説明している。
  3. また上記高官によればガイドラインのあらましは中国側に説明済みで、今週も詳細なブリーフィングを行うという。ただし高官は新ガイドラインに中国がどう反応しているかの説明は避けた。
  4. 明治大学国際総合研究所の客員研究員奥村準によれば中国の対日姿勢はこの数カ月で厳しさが減っている。
  5. 「ここに来て日本に対する発言で中国にソフトさが出てきたのは経済の理由だけではない」と奥村は言い、新ガイドラインで同盟関係の「基礎重要部分」が強化されると見る。
  6. ただし日本が一夜にして軍事大国に変容すると期待しないよう釘を指している。
  7. 逆に奥村は「情報活動の共同作業の日常化」に焦点が当たることへ期待している。情報収集衛星の相互利用や南シナ海での共同パトロール、さらに防衛装備の研究開発を想定している。
【宇宙空間】
  1. 上記米国防高官も宇宙とサイバーを協力拡大の二大分野だと強調していた。日本の宇宙におけるプレゼンスは着実に増えており、今年早々に新宇宙利用10ヶ年計画が完成している。
  2. 上記米高官は宇宙空間状況認識データの共有拡大が新ガイドラインで示されていると注意喚起している。宇宙空間が一層混雑していく中で米国は地球を周回する物体の追跡能力、同盟各国とデータを共有する能力に重きを置いている。
  3. 「日米両国はこの分野で優れた能力を有しており、情報共有を拡大したい」と高官は述べている。
  4. 両国間で情報の流れが太くなるのか、日本も米空軍の合同宇宙オペレーションズセンター(米、英国、カナダ、オーストラリアが参加中)に加わるのかは不明。
【産業協力】
  1. 米高官は米国内産業も両国関係の強化で恩恵を多方面で受けるはずと語った。
  2. 「ガイドラインでは日米協力を共同開発、共同生産、軍事技術の共有で進めるとの条項があり、ぜひこれは進めたい」
  3. 高官は米国防総省の改革案の下でペンタゴンの調達業務改革も進み、海外同盟国との産業協力を拡大させる動きがあると指摘。
  4. 「この点は日本側と特に協議したい点だ」
  5. 日米間の軍事技術連携はすでに強固だが、日本がF-35共用打撃戦闘機の導入を決めたてさらに強くなった。
【ISR】
  1. ただ日本のグローバルナプレゼンスが増えれば防衛装備拡充の必要性も大きくなるはずで、特に日本がISR分野を世界規模で行うことになる場合で顕著になろう。日本はグローバルホーク無人機導入を決定済みだが、導入規模を拡大するかもしれない。あるいは低高度飛行ISR機材としてMQ-1プレデターやMQ-9リーパーの増設を決めるかもしれない。
【ミサイル防衛】
  1. 米高官はミサイル防衛も重要視しており、迎撃ミサイルシステムの追加もありえる。その場合艦上発射型か陸上発射型のどちらになるかまだ不明。■


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