本来なら装備はバランスよく、いろいろな事態に備えるべきものですが、現在の財政状態ではこれは無理です。そこで新戦略思考ではUAVを優先、F-35や大型水上艦は削減というのが「革命的な」提案を盛り込んだ報告書の骨子ですが、なんでも調達できた時代ではないので考えてみれば当たり前の内容ですね。しかし軍と民間に根付いた既成の考え方(F-35がその頂点)を放棄するのは簡単ではないでしょう。もたもたしているうちに数で勝利する中国他が先に進んでしまいかねません。この数年が新思考が実現するかの勝負とみているのですがいかがでしょうか。
New Strategy Would Cut F-35s, Boost Bombers and UAVs
The U.S.’s air-centered strategy has top-level backing
Revolutionary Roadmap
今も機密扱いのノースロップ・グラマンRQ-180無人機がCSBA報告書でもそれとなく言及され、精密攻撃や電子攻撃ミッションに投入されるのだという
Ronnie Olsthoorn Concept for AW&ST
中国その他が進める接近阻止領域拒否(A2AD)には今日の米軍兵力投射装備および現在計画中の装備では効果的に対抗できない、との戦略予算評価センター(CSBA)報告書が発表され、第三相殺Third Offset として知られる防衛戦略の新しい方向性を説明している。
- かわりにペンタゴンは汎地球偵察攻撃global surveillance and strike (GSS) のシステム開発を中心とすべきで、この範疇に収まるのが長距離打撃爆撃機(LRS-B)や長距離高ステルスの無人戦闘航空機システム(UCAS)や潜水艦であるという。戦術戦闘機や水上戦闘艦、重装備の陸上部隊は削減すべきだとの趣旨で、予算との関連で戦力構造を再調整すべきとする。
- このCSBA報告書が注目されているのはロバート・ワーク国防副長官と上級顧問が直々に関与してまとめられたためだ。ペンタゴン内外の観点で国家防衛のありかたを変える議論に火をつけるのが狙いだという。編集にあたったロバート・マーティネイジRobert Martinageはペンタゴン勤務の職歴をもち、ワーク副長官の関与を「確認も否定もできない」と Aviation Weekに語っている。
- このCSBA報告書は第三相殺戦略における既存および新型装備の役割を詳細に説明している。その提言では長距離打撃爆撃機の役割を拡大することを求め、その整備を「加速、拡大」することが望ましいとする。新しく提言している兵器として潜水艦発射の滑空ミサイル boost-glide missile があり、中程度あるいは高度の防空体制を突破し強化した地下構造の目標を攻撃する唯一の手段だとする。また同ミサイルは電子攻撃手段の代役ともなり、大量精密攻撃にも投入できるという。
- 提言で規模が最大なのはUCAS機材だ。概念上ではマーティネイジは試作機がノースロップ・グラマンX-47B UCAS-D(Dは実証機の意味)で海軍の求める作戦機材がここから生まれるという。CSBAではN-UCASとして8から10時間連続飛行でき、3,000ないし4,000-lbのペイロードがある機体を想定する。CSBAのアナリストとしてワークは「ハイエンド」型海軍UCASの推進役でその影響で海軍は低性能、低価格の考え方を無人空母運用空中偵察攻撃機(UCLASS)構想に使えなくなった。
- CSBA報告書はUCAS-Dに先行していた共用UCAS構想 Joint UCAS:を復活させるものだ。艦上運用型は主翼機体一体型となり、陸上運用型は機体を大型化する。米空軍向けのMQ-Xはペイロードを二倍にできると報告書は述べ、無給油で12時間飛行できる。同期に空対空ミサイルを攻撃、防衛双方で装備する案は戦闘機出身者には支持しにくいだろう。
- 航続力がUAVの長所だと報告書は指摘する。第三相殺戦略での新型UCASの主要任務は「絶えず移動し続ける目標破壊者」でもともとの長距離航続能力に空中給油を加え48時間超の連続飛行任務をこなすことで、人間の限界を超えている。UAVが区域内の通信拠点の役割を果たし、敵方の宇宙攻撃手段への保険となり、結果的に衛星攻撃を実施する価値を減らす。同報告書では未公表のノースロップ・グラマンによる研究結果を引用し、F/A-18E/Fを無人機で代替すると25年間の機体寿命期間で合計560億ドルの費用節約になると示している。
- 新型N-UCASやMQ-X調達の予算は「有人戦術機の削減」を全軍にわたり実施し、F-35各型すべての調達縮小さらにF-35Cの中止も視野に入れて確保し、高性能スーパーホーネット導入やN-UCASで代わりにする」ことで担保する、としている。2011年7月ワークは海軍副長官当時にF-35B/Cの代替策の内部検討を命じている。
- 戦闘機の有効性には限界があり、それは「セミステルス」のF-35でも同じだとし、有効範囲が広く全域でステルス性能を発揮できるUAVとLRS-Bとは区別すべきとし、防御が困難で生き残りが難しい空中給油機への依存が高くなる注意を呼び掛けている。マーティネイジはAviation Weekによる成都J-20の性能評価におおむね賛同しており、同機が空中給油機など支援機材を狙う攻撃手段だとするもの。「空対空ミサイルの射程距離も考慮すると給油機は800から900カイリ離れる必要があり、それでは米軍の戦術戦闘機は沿岸にも到達できなくなる」
- もうひとつ提言されている無人機がステルス高高度長時間飛行UAVだ。しかし、報告書ではGSSの実施手段のうち三つしか現在開発に入っていないと指摘。(MQ-X、N-UCASSおよび潜水艦用曳航式モジュール) 通称HaleUAVとはノースロップ・グラマンが開発中のRQ-180そのもののようだ。報告書ではRQ-180には軽攻撃能力がある含みを持たせている。
- 見落としてはいけないのは第三相殺戦略で低強度紛争を取り上げている点だ。脅威の強度が低くなり、広範囲に広がると、「最も危険なコスト上昇戦略は自分で設定してしまうものだ」と新アメリカ安全保障センターCenter for a New American Securityのアナリスト・ベン・フィッツジェラルド Ben FitzGeraldは語る。「トヨタのハイラックストラックに50万ドルの武器を搭載するようなものだ」 一方で敵も同水準の武装を進める。「ほぼ同格の敵に対現在の優位性を捨てることはできない。一度失えば復活は無理だ」
- マーティネイジもCSBA報告書では新装備の調達数は具体的に提言していないとし、「報告書は予算編成の事前準備ではないから」と言う。しかし一つの例として報告書中に海軍がUCASを全面採用すれば、現行の有人機の半分の規模で可能としているノースロップ・グラマンによる社内検討を引用している。.
- 潜水艦は合衆国が相当の優位性を今後も確保できる分野とされる。第三相殺戦略報告書では潜水艦部隊の威力と柔軟性を高めるために無人潜航艇の開発を急ぐべきとし、長距離滑空兵器を潜水艦から発射し、曳航式ペイロードモジュールの開発も手提言する。曳航モジュールとは3,000トンから4,000トンクラスの無人船体で大口径発射管を最大12基積むもので、あらかじめ移動させ同じ場所に数か月留まる。ここでもその代償が発生し、DDG-51級など大型水上艦の調達を削るべき、としている。.
- 第三相殺戦略では大規模陸上兵力より特殊作戦部隊やテロ対策地上部隊を優先する。ただし地上部隊には「局地的A2ADネットワーク」の確保任務を想定する。これは脅威に直面する同盟国の領土に適用する。地上配備の対艦巡航ミサイルなどの装備と飛行船などに搭載したレーダーaerostat-borne radarsと組み合わせ沿岸部の防御を固め、敵海軍部隊の移動を阻止する。■
結局海軍の空軍にステルス戦闘機で先へ越された事で「F35を押しつけられる」反発ありきでしょう。
返信削除あるいはごひいきメーカーの力関係か
F35が「セミステルス」であるという主張からして根拠はないし、UAVは開発中止になってしまった。