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オーストラリアOTHレーダーの性能改修が完了 マレーシア航空370便は探知していたのか




Australia’s Jindalee Radar System Gets Performance Boost

Sep 22, 2014
Bradley Perrett | Aviation Week & Space Technology
人口23百万人のオーストラリアは国防装備の整備で慎重になる。資金不足、専門人材の手薄さが避けて通れないからだ。
  1. そのオーストラリアが数十年にわたり取り組んできたのがジンダリーJindalee超水平線レーダーシステムだ。
  2. 大幅改修がこのたび完成した。アウトバック奥地に巨大なアンテナ群が3つあり、高周波無線ビームを電離層に放射し、3,000 km 先を監視する。改修で動作速度、感度、精密度が上がり、オーストラリア空軍(RAAF)の指揮統制システムに組み込んだ
  3. さらに2015年の再改修の準備が進み、RAAFは2040年ごろまで利用する。
  4. オーストラリアはジンダリーの多くを明らかにせず、作動原理の以上の情報は出てこない。しかしAviation Weekの取材に国防資材機構Defense Material Organization (DMO) は今回の改修内容および次の目標を語ってくれが、依然として性能は数値で明らかにしていない。
  5. 直近の改修は第五段階で、国防相デイビッド・ジョンストンが5月28日に目標性能を達成と発表した。実は目標水準は昨年末に達成とDMOのマイク・ウォーキントン准将 Air Commo. Mike Walkingtonは述べた。
  6. 完成は予定より2年遅れたがほぼ全部が予算内で実現できたとウィルキントンは言う。実施主体はロッキード・マーティンBAEシステムズのオーストラリア事業体で、国防科学技術機構 Defense Science & Technology Organizationが支援した。予算規模は非公表。
 
オーストラリアはジンダレーレーダーを三か所、各奥地に配備している。昨年完了した改修工事でレーダー有効範囲は変わっていないとされるが、実際の距離は相当拡大しているだろう。Credit: Australian Defense Ministry
  1. これにより西オーストラリアにあるラヴァートン Lavertonおよびクイーンズランド州ロングリーチ Longreachの各レーダー施設が国内中央部アリススプリングス Alice Springsと同じ性能水準になった。
  2. 第五段階は高速電子装置を多用し、アレイはこれまでより多くデータを集め、アデレイド近郊のRAAFエディンバラ空軍基地(オーストラリア南部)に送信し、同基地から各レーダーを操作する。基地との間の帯域幅は大幅に拡大された。
  3. エディンバラで生情報からトラックデータを抽出し、ニューカッスル(ニューサウルウェールズ州)のRAAFウィリアムタウン空軍基地に送信する。同基地でボーイングの指揮統制システム、ヴィジレアVigilareにデータを送り、戦術航空情報に統合する。ジンダレーは以前からヴィジレアに接続されているが、統合度が向上したとウォーキントンは述べる。
  4. 感度を上げたジンダレーはノイズと目標を仕分けて、大きさで分類する。位置も割り出し、速度と方位が従来より正確に把握できるらしい。
  5. 国防省はジェット練習機または300トンクラス哨戒艇まで探知可能としているが、実際の性能はこれ以上かもしれない。
  6. センサーはドップラー効果で目標探知するが、電離層の予測不可能な変動により、ビーム反射が不鮮明・不安定になるとはいえ、有効距離は相当大きい。数千キロメートルの距離で反射するエネルギーは極小だが、アレイを巨大にして対応する。アリススプリングスの送信用アレイは全長2.8km。
ジンダレーレーダー施設の設置場所と有効範囲

  1. 第五段階で大きく変化したのは処理速度。ジンダレーのような大型レーダーは見通し線を走査するのではなく、タイルと呼ぶ区画を観察する。改修が完了した三基のジンダレー施設は「短時間で今までより大きなタイルを見ることができる」とウォーキントンは語る。ただし、各タイルの処理時間は明らかにしていない。第五段階でデジタル化が進んだが、完全デジタル化ではないとウォーキントンは述べる。アナログ・デジタル変換は瞬時ではなく、アンテナがフェイズドアレーとなり、ビームを包囲核に電子操作してタイル一枚ずつレーダー観察するようだ。二枚以上のタイルを同時に観察できるかという質問に、ウォーキントンは「レーダーは三基ある」とだけ答えた。
  2. ウォーキントンが性能で口にしたのは有効範囲が最低で1,000 km、最高3,000 kmだけだ。この数字は国防省、RAAFが前から発表している。オーストラリアの国防専門家は電離層の状態が良好なら有効範囲は伸びると見る。
  3. 第五段階で感度・精度の向上範囲が相当大きい証拠がある。ひとつ、国防省は次期改良に大きな期待をしていない。ウォーキントンは「探知精度を向上していくべく電離層の状態は常に把握していく」と言っており、ここにデータ抽出の鍵がありそうだ。
  4. もうひとつ、感度が向上したが運営費用は下がっているらしい。各レーダーは従来より低出力で作動し、今後10年の節減効果は100百万オーストラリアドル(93百万ドル)と見込まれる。第五段階で高周波数増幅器は更新されていない。当初の出力で十分ということだ。.
  5. RAAFはジンダレーを常時作動させていない。コスト以外に平時に連続運転の必要がないためだ。しかし低出力運転が可能となり運転時間を延長する可能性が出てきた。.
  6. マレーシア航空370便が行方不明になった直後に、Aviation Week はジンダレーが同機を追尾したか照会している。可能性は低いとわかっていた、夜間の電離層反射は弱くなり超水平線レーダーの効力が落ちるからだが、問題の777機がジンダレーレーダーのタイルの中を飛行していたらと考えたのだ。国防省からは情報は全部マレーシアに渡したと回答があったが、超水平線レーダー施設への言及はなかった。
  7. 第五段階改修は予定より遅れ2003年にジンダレーが稼働状態に入ってから実施された。
  8. ジンダレーの大きな利点はオーストラリアが動員する航空機、艦船を最小限に抑える効果、とオーストラリア戦略政策研究所のアンドリュー・デイヴィスAndrew Davies of the Australian Strategic Policy Institute.は語る。システムからのデータはそのままでは不正確だが、その他の監視システム、ボーイングのウェッジテイル早期警戒レーダー機やロッキードP-3オライオンを使う。また同盟各国のデータも利用できるはずだ。
  9. 答えが期待できない質問にジンダレーで戦闘機を目標へ正確に誘導できるのかというものがある。開発が開始された24年前だったら不可能だと思われていたことが米空軍の発表からうかがわれる。.
  10. 超水平線レーダーの利点はステルス機の探知だ。英王立合同軍組織研究所Royal United Services Instituteのロシア人研究員イゴール・スチャジンIgor Sutyaginは超長波レーダーなら可能との論文を今月に発表した。「より長い波長、デカメーター(10m)バンドのレーダー」としてロシアのレゾナンスーNEならノースロップ・グラマンのB-2等を探知できると主張。ステルス機は超高周波(メートル級バンド)のレーダー探知を回避する設計になっているとスチャジンは言う。
  11. ジンダレーの作動バンドはこれに近い。米国の技術文献によると超長波は実機の物理的な大きさに近づくと、これまでのレーダー断面積削減策は効果がないとしている。
  12. 改修後のジンダレーはゆっくりと始動された。ほぼ二年が初期段階で無駄になり、納期も2年遅れたのは製造に携わった人員が現場を離れたことが大きい。単独で高性能防空システムを構築するのは人材の薄いオーストラリアには難題だ。
  13. 次回の第六段階でも作業員不足の危険がある。そこで国防省は中核人材60名ほどを確保する。
  14. 第六段階の課題には別にレーダー解析ツールの開発があり、波形発生器と受信機の技術改良が期待される。多チャンネルデジタル受信機の開発で機材数を削減する効果が期待され、電離層測深機を改良しソフトウェアツールを開発して長期間使用とするのも課題だ。
  15. 第六段階では技術陳腐化対策を狙う。国防省としては2015年上半期に政府承認を勝ち取り、契約企業各社の入札を絞りたいとする。二年後に契約書の承認を得るとしているが、国防方針の見直しで影響を受けそうだ。
  16. 第六段階では、操作員がタイルの大きさを変更できるようになるだろう。ネットワーク 能力も改良の対象となろう。■

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