空爆開始から一か月、期待された大きな変化は発生せず、高価な兵器で安価な車両等を攻撃する事例が報告されていますが、これは泥沼化するのではと冷や汗をかく高官が多いでしょうね。しかしISISに占領された(されかかっている)住民が自ら蜂起しISISの教義に真っ向から立ち向かう日が来るでしょうか。筆者はそう思いませんが。
One Month In, Mixed Reviews on Iraq, Syria Airstrikes
http://www.defensenews.com/article/20141019/DEFREG02/310190006/One-Month-Mixed-Reviews-Iraq-Syria-Airstrikes
Oct. 19, 2014 - 03:03PM |
By AARON MEHTA | Comments
F-22 ラプターがシリア空爆に備え格納庫からタキシ―中。9月23日撮影。民間人被害を懸念して空爆には制約が課せられているのがイラク、シリア作戦の現状だ。 (Tech. Sgt. Russ Scalf / US Air Force)
WASHINGTON —シリア国内のイスラム国(IS)戦闘員を標的にした空爆を9月23日に開始した際に、バラク・オバマ大統領はじめ指導層は作戦は当分継続する見込みと発言していた。
- しかし米軍の空爆作戦には空軍力の信奉者含め批判的な見方が日増しに強くなってきた。一方でIS部隊はコバニなど各地で進軍を続けており、戦術変更を求める圧力が強くなっている。
- 一ヶ月経過したがシリア、イラクの状況は混沌のままで、合衆国は長期間かつ複雑な戦闘に巻き込まれてた観があることで全員が意見を同じにしている。
- ペンタゴンによるとイラク空爆は対ISミッションが始まった8月8日以来10月15日現在で合計294回。これに対しシリアでは9月23日から10月15日までに計229回の空爆を実施している。
- 「アフガニスタンでは同じ期間で近接航空支援3回あれば武器投下は一回だった」と軍関係者は明かす。
- 8月8日以来の弾薬投下回数は延べ1,300回ほどで、合衆国は同盟各国と一日平均100機出撃のうち25機が一発以上の兵装を投下している。
- 数字を聞くと相当の規模と思えるが、空軍力の専門家は不十分とする。「ISISを相手にした不誠実な航空戦」“The Unserious Air War Against ISIS”の題で戦略研究予算評価センターCenter for Strategic and Budgetary Assessments の研究員二名が今回の作戦と類似した1999年の対セルビア軍作戦と比較している。当時は一日平均138回の攻撃を実施しており、今回の対IS作戦より規模が一段大きい。
- 著者のマーク・ガンジンガーMark Gunzingerとジョン・スティリオンJohn Stillionは状況が複雑なことは認めつつ空からの攻撃に増強の余地があると主張する。
- 「空軍力を出し惜しみするとイラクでもシリアでもイスラム国戦闘員に制圧された領土の奪回は不可能だ」
- 退役米空軍中将デイヴィッド・デプチュラ David Deptula は2001年にアフガニスタンの航空作戦を主導したが、この意見に賛成で「問題は空軍力に制約があることではなく、空軍力の活用が不十分なことだ」とする。
- 「ISILのいるイラク・シリアの状況はタリバンのいたアフガニスタンと同じではない。今われわれが目にしているのは航空作戦を支援用にしか使ったことのない地上部隊指揮官中心の司令部が主導権を握る最後の戦争だ」
- それでは航空作戦をさらに増強すべきか。意見は分かれ、専門家は複雑さを指摘する。
- シリア作戦はシリア国内体制の変化をねらうよりもイラクのIS勢力向け支援を断ち切ることが目的で開始されたものだ。
- 「短期的にはまずイラクを叩く戦略だ」と作戦遂行に詳しいペンタゴン関係者がDefense Newsに語っている。「イラク軍が反撃しイラクを奪回するのを助ける。シリアではISILの戦闘能力を妨害、除去するのが目的だ」
- イラクが中心なら退役陸軍中将デイヴィッド・バーノretired Army Lt. Gen. David Barno(新しいアメリカの安全保障を考えるセンターthe Center for a New American Securityの上級研究員)は対応はやさしいと見る。
- 「とても複雑な構造です」と言い、「シリアの方がイラクよりも難易度が高いです.....合衆国にとってシリアは困難で長期にわたり問題となるでしょう」
- これが課題2番目のシリアで、合衆国が作戦展開中の地域はすでに内戦で荒らされているのでISとシリア大統領バシャ・アル-アサドの双方に今の段階で主導権を握る意欲がない。
- 上記ペンタゴン関係者もアサドを計画立案上は考慮しているが、空爆が間接的にアサドを強くするとの観測は軽視しているという。
- 「現在交戦中の各地ではアサド側が敗北ずみで奪還は不可能でしょう」と言うのだ。「そこに軍事力を投入すれば短期的にアサドによい効果となります。しかし長期的にはわれわれは反対勢力をテコ入れしますのでISILだけでなくアサド政権とも対決することになるでしょう」
- 三番目の要素は一般市民の死傷者を発生させないことだ。今回の取材では全員同じくIS勢力が民間市民にまぎれこんでいるので合衆国が目標を狩りたて攻撃することへの大きな制約となっていると認めている。
- 「軍は最大限に注意し正確・精密に目標捕捉に努めています」と同上ペンタゴン関係者は語る。「これができないと失うものが得るものより多くなります。地元住民の支援は絶対に必要です」
- バーノも空軍力から自らを守る方法をISは熟知していると指摘。「それに対し当方は制約を大きくせざるを得ない、一般市民で負傷者を発生させたくないからです」と言う。「このため思い切った作戦が実施できません」
- このため目標設定は限定的で、ISR強化を求める向きがあるが、上記ペンタゴン高官は「ISR機材は不足していません」とし、「もしそうなら、爆弾を積んだまま帰還する例が発生しているはず。目標が指定されていなければ投下できませんからね。そんなことは発生していません」
- デプチュラも巻き添え被害を恐れる傾向に異議を唱える。真の意味でIS打破に効果的なら一部緩和してもいいのではないか。
- 「交戦規則も変更し、下級の指揮権限にも目標攻撃を許すべきで、「誤爆」の可能性が増えますが、効果を引き上げるにはリスクも受け入れないと実現しません」
- 「反面で地上戦の効果を増やすためリスクはやむを得ないとの意見が大勢を占めれば継戦決意が高くなり、クルド人部隊やイラク軍から大きな歓迎を受けるでしょう」
- もうひとつ大きな疑問は地上戦部隊を投入するまでに空爆がどこまで成果をあげられるのか、と言う点だ。
- 重鎮議員のジョン・マケイン上院議員(共、アリゾナ)Sen. John McCain, R-Arizやバック・マケオン下院議員(共、カリフォーニア)Rep. Buck McKeon, R-Califはこの問題でペンタゴンを空爆開始当初から追求している。
- 「地上部隊を派遣しないと、連合軍を形成できず、占領された地方を奪還するのは不可能」とマケオンは10月9日に発言。
- 「地上部隊が必要で、合衆国でなくてもよいが、これがないと勝利はやってこない」とバーノもいい、先月は「空軍力の限界が明らかに示された」とする。
- そこで再びデプチュラが登場、問題は空軍力ではなく、その使い方だと主張する。
- 「空軍力は雷雨のように使うべきなのに今は小雨のようだ」
- 上記ペンタゴン関係者もイラク、シリアで領土保全のため地上部隊の必要を認める。そこで現地軍の訓練を急いでいるところだ、そして現地住民が蜂起し、ISの教義に立ち上がるべきという。
- 「空軍力だけでは不十分、軍部隊だけでも不十分です」と言い「ともに広範な戦略構想の要素に過ぎませんし、最終的にもし該当地域の住民がISの思想に反撥しなければ、軍の作戦は成功できないのです」■
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