通産省(当時)による産業政策を自由貿易に反するものと公然と非難していた米国ですが、米国防総省が防衛産業全体に目を配り、技術優位性を今後どう確保するかを考えている様は産業政策そのものだと思えるのですがどうでしょうか。
Interview: Frank Kendall, US DoD Acquisition Chief
Sep. 22, 2014 - 03:45AM |
By PAUL McLEARY and VAGO MURADIAN | Comments
Frank Kendall is US defense undersecretary for acquisition, technology and logistics. (CARL COURT/ / AFP)
フランク・ケンドール国防次官は調達、技術開発、兵站担当として数千億ドル規模の調達全般を取り仕切っている。9月19日に Better Buying Power 3.0 (第三次購買力増強計画案)を発表し、ペンタゴンと産業界の連携で将来のニーズを実現をするとしている。新指針はケンドールと前任者アシュトン・カーターが作り上げた購買力改善を実行するものだ。
最初の購買力増強では効率を追求し、第二弾は上層部の信頼関係を育てるとしていた。これは国防総省、議会、産業界が一緒になって初めて実現できるはず。ここまで大きく急変革になるとどう動機付けていくつもりなのか
大きく急な変化とは見ていない。重点項目の変更だ。重要なのは継続がであり、変更ではない。
Buying Power 1.0と 2.0では一定の進展があるが、やり残していることが多い。技術優位性の確保とならび合衆国内で懸念事項が発生中な中、ボブ・ワークス副長官の「補完戦略」 offset strategyで技術動向、技術革新、技術優位性を重視しつつ予算環境も配慮する。加えて世界情勢は変化しており、脅威も変化している。そこで重点を製品の側へ移し、装備を戦場の兵士の手に渡す、特に高度技術をいかに早く実戦投入できるかが課題だ。
その場合、どうやる気を起こさせるのか。最近の発言で各軍が予算を握る中、一部に感情的な理由が先行している、経験を軽視しているとしていたが。.
各軍なりに努力しているのだと思う。短期間で即応体制、兵力規模、近代化を配慮したバランスをとろうとしているのだろう。私自身は近代化を重視しつつ、その他も配慮しているつもり。我が国は技術優位性を維持してきたが、変化しつつあり、真剣に考えないといけない。短期間で高性能技術を応用した装備を配備する必要があると再認識すべきだ。
産業界も重要な役割を担うことになる。
業界は予算状況に対応しつつ奨励策にも反応している。強力な経済奨励策を提供することは可能だ。産業界の入札条件の中で最高の価値を定義したうえで業界に知らせておけば、よい製品を提供できる動機づけとなり、業界は必ず反応してくる。このこと自体に心配はない。従来は価格に難があったり、価格上限が制約となっていたが、あるべき費用分析から一貫して製品を実現し、実戦部隊に意図通りの装備を届けねばならない。
議会がこの方向に合わせると保証できるのか。
議会はこの点で理解してくれている。Better Buying Power 2.0 では法案上でも変更点があり、手続きの簡略化と柔軟性、さらに無駄を生む管理工程を省くことが主眼だった。下院ではソーンベリ議員、スミス議員他多数が、上院ではレヴィン議員、マケイン議員がコスト削減を支持してくれた。この点では議会の各位と方向性を共有している。
購買力を高めつつ国家安全保障に直結した技術革新を同時に進めるのか
技術をさらに早く高度化する必要がある。現時点で投資に制約があるが、それでもやるべきことがあり、優先順位によりこの目標に向かう。注目しているのは自律化、無人化が各種分野で応用でき、航続距離を延長しはるか先の地点で望む効果を実現できるようになること。
2020年までに現行装備のうち維持不可能となるものが出ると指摘している。航空母艦のように非常に高価な装備や宇宙システムが例だという。その他の分野が思い当たるか。
精密ミサイルが拡散普及していくこと、巡航ミサイル弾道ミサイルは頭が痛い。電子戦でも進展があり、すでに影響が表れ始めている。サイバー戦は今後も進展があるだろうし、大きくな問題になりつつある。
そこで実験的かつ新しい形で仕事ができないか検討している。予算環境は信じられないくらい厳しくなっており、予算強制削減による不確実性が増えていいるので計画立案は一層困難になっている。にもかかわらず今後進展を期待できるコンセプト案に資源を集中し、我が国の立ち位置を将来にわたって強固にしなければならない。
2020年代には購買力の問題が深刻になる。現時点でも減耗しつつある主力装備があるが、現時点の予算規模では20年代のニーズにこたえることは不可能なので、今のうちに何か手を打たねばならない。
業界の中にはこの戦略の相談を受けていないという企業もあるが、何か言うことはあるか。
産業界は3.0を歓迎すると思う。世界市場で優位にたつ我が国だが、国内でも技術優位性の維持で課題はたくさんあると思う。品質がまず問題だ。政府も優秀製品メーカーには市場で優位になれるよう後押しすべきだと思う。業界に対して望ましくない投資を思いとどまらせるつもりはない。もっとはっきりと価値のあるものはなにかを業界に示して提案をもっとさせるべきだ。すべてが前向きな結果を生む。業界とは太い対話を維持している。対話はオープンであり、極めて良い結果を出し続けている。
防衛産業は大幅に変貌している。これまでの契約企業は大規模システム統合は得意だが、一方でアマゾンやグーグルのような新規企業が宇宙にも参画しはじめている。これからの企業競争をどう扱うのか
新規市場参入は素晴らしい。民間企業モデルを政府にも導入したいと考えており、その点で新規企業を歓迎したい。たとえば無線通信があり、業界は政府が手掛けるよりも早く製品を提供し、競争力があることを実証している。そんな実例が発生すればわれわれとしては調達戦略を産業界の実態に合うように変更することはやぶさかではない。
調達力向上策には重要な中身がある。一つは競争に重点を置くことだ。もうひとつはコスト重視でコスト構造そのものはむしろ多くの皆さんに攻撃してもらいたいと思っている。さらにどこまで求めやすい価格にできるのかも重要で、そもそも買えない装備の開発は開始すべきでない。
業界と連携しての長期計画づくりは以前はもっと簡単だったと発言されているが真意は?
70年代中ごろの研究結果を見る機会があった。簡単に言って当時は才能ある人材を呼べばすぐ政府と合同チームができて、今のように利益の衝突や意見の衝突を考慮しなくてもよかった。言い換えれば考えを展開するのはずっと簡単だった。また共同作業も容易だった。今日はいろいろ制約があり遵守すべき事項が多いが、それでも産業界と一緒に作業する機会が多い。ただ、これまでの共同体制とは違う形になるだろう。これについては産業界からアイデアを求めたい。これは3.0に盛り込んでいる。
企業による自主研究開発(IRAD)は年間45億ドル規模もあるのに、長期戦略に合致する内容は一部しかない。これを改めさせられるか。
IRADについて整理している。一時は規制が厳しかった。90年代は逆に自由放任だった。現在は短期間で成果を出すのを重視している。技術の広がりを考えるとごく一部に固執しているようだ。企業幹部から取り組みの重点方向を聞き取りしているが、結果を整理すれば望ましい方向を決められるだろう■
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