新しい防衛白書を米海軍協会が早速紹介しています。忙しくて邦字新聞を見る暇がなかった方(当方含む)はご一読ください。(紹介の仕方が相当違うのではないかと思います)なお、本ブログでは護衛艦を駆逐艦、各自衛隊を各軍と表記しています。原文を尊重してDestroyer, Servicesからの訳語です。ご承知おきください。
Japan’s ‘Increasingly Severe’ Security Environment
By: Kyle Mizokami
Published: August 6, 2014 11:26 AM
Updated: August 6, 2014 11:26 AM
防衛省がこのたび公表した防衛白書では日本の安全保障を取り巻く環境は「厳しさを増している」と表現している。白書では 中国、ロシア、北朝鮮で潜在的な脅威とし、サイバー攻撃、海上挑発行為、核兵器を取り上げている。
同時に「動的防衛力」“dynamic defense”の各論として組織改編とともに5か年中の防衛装備の整備を概括している。自衛隊 Japanese Self Defense Forces (JSDF) の組織構造面での改編は冷戦終結後最大規模とし、人員増せずに新規能力の整備と既存能力の温存を図るとする。
新しい防衛方針の核心部分は陸海空の各部隊を「動的防衛隊」 “dynamic defense force”に再編することだ。これは高度機動力があり、日本各地での活動展開を可能とし、とくに尖閣諸島など辺境部で駐屯地の開設が困難な地点の防衛を視野にいれている。また米軍を参考に自衛隊も「共同運用」を拡大していく。
「動的防衛」の基本任務は島しょ部分への侵攻の阻止、特殊部隊あるいはゲリラの攻撃を封じ込めること、災害救難や非戦闘員緊急避難があげられている。とくに後者では韓国有事の際に日本国民を撤退させる想定だ。
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防衛予算は微増と見込み、現在の換算レートでは平成26年度予算は約469億ドル前年度比2.2%増となっている。このうち18.8億ドルは日本に駐留する米軍部隊の支援部分である。
海洋兵力
中国が海軍力整備を続ける中で海上自衛隊も増強を図っている。このうち新型P-1長距離哨戒機を23機導入し、P-3Cオライオンと交代させる。
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駆逐艦(護衛艦)は現行48隻を54隻に増強し、総トン数は52千トン増加させる。あたご級イージス駆逐艦の既存2隻でBMDソフトウェアを更新し、あらたに2隻を建造してBMD対応艦を8隻にする。各艦にSM-3ブロックIIA迎撃ミサイルを搭載する。潜水艦は22隻に増強。護衛隊は14へ増強し、潜水艦部隊は6になる。
興味を引くのは米海軍の沿海戦闘艦に類似した新型駆逐艦構想でモジュラー式の性能変更が可能としている点だ。この新型駆逐艦はさらに小型で曳航式ソナーを備える点が異なる。掃海装備をモジュラー化して搭載でき、現行の掃海艇が25%削減され18隻になることにも対応する。海上自衛隊は人員増が難しい中、駆逐艦を増強しつつ掃海能力を維持しようとしている。
航空戦力
航空自衛隊の改編では尖閣諸島で中国の領空侵犯に対処するため、那覇基地のF-15J配備数を倍増する。また同地区の空中早期警戒体制も1飛行隊を追加して2隊体制とする。このうち603飛行隊は那覇基地常駐とする。AWACs4機を追加導入する。
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戦闘機部隊も増強する。唯一残る偵察飛行隊は解隊する。F-15Jでは26機に性能改修を施す。F-35共用打撃戦闘機(JSF)の最初の28機の前払い金を支出する。F-35は三沢基地に配属される。
高性能無人機(UAVs)も導入する。このうち長時間滞空無人航空機調達事業はノースロップ・グラマンのグローバルホーク3機の導入になるのは確実だ。UAV運用は三軍が共同で行う。
陸上兵力
陸上自衛隊も装備の更新を受ける。まずペイトリオット部隊にはペイトリオットPAC-3性能改修型が配備され、北朝鮮と中国の弾道ミサイルへの拠点防衛能力を向上させる。
陸上自衛隊は機動性を重視していく。西部方面隊に水陸両用部隊を編成しようとしており、長崎県に配備される新部隊は琉球、尖閣双方の防衛を担当する。兵員3,000名と水陸両方強襲車両52両が配備される。V-22オスプレイ17機が即応展開を可能とするだろう。
陸上自衛隊の常設部隊の半数を「迅速配備編成」とし、師団単位で迅速な移動を可能にし国内の有事に備える他、周辺部への対応もさせる。この迅速展開部隊に3師団と7旅団を対象とする。このため戦車を整理し、300両を残すが、新型機動戦闘車両を配備する。
東シナ海での中国の活動強化に呼応して陸上自衛隊は琉球諸島全般に沿岸監視部隊を配備し、中国の軍事活動を監視する。移動式対空レーダーを遠隔の島しょ部に配置し、新型対艦ミサイル部隊9を整備し、沖縄に移動すれば宮古海峡の外国船舶通航を阻止できる。
サイバー対応
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白書ではサイバー防衛隊(Cyber Defense Group, CDG)を創設し、指揮通信システム隊C4 Systems Commandに編入するとしている。サイバー戦の重要性が高まってきたこともあり、CDGは防衛相から階層二つ下に編成される。同隊は防衛省及び各軍のネットワークを24時間監視し、一層高度になってきたサイバー攻撃の被害を予防する。CDGは各軍のサイバー戦部隊とも連携する。
興味を引くのは白書が安倍政権による集団自衛権の変更について多くを語っていない点だ。とくに米国との絡みでの言及がない。白書執筆の時点が方針変更の前だったことがその理由だろう。■
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