Buk Missile System Lethal, But Undiscriminating
Finnish army
マレーシア航空MH17便がウクライナ分離派が軍用機と誤って撃墜した証拠が固い中、アルマズ・アンテイ製のブクM-1地対空ミサイルシステムground-based air defense system (GBADS) への関心が高まっている。
ブクM-1(NATO名称SA-11ガッドフライ(あぶ))は最小限の訓練さえ積めば誰でも操作でき、その威力は致命的損傷を与えられるが、その他のGBADSと異なり安全装置はついていない。世界の紛争地域で見られる旧ソ連製GBADS二形式のひとつでもある。
ブクシリーズは1970年代にティホミロフNIIP(現アルマズ・アンティの一部門)が設計し、2K12 クブKub低高度迎撃ミサイルシステム(NATO名称SA-6ゲインフル)の後継装備とされたもの。
クブはエジプトに輸出され、1973年のヨム・キプル戦争(第四次中東戦争)で威力を発揮した。ただし弱点があり、目標一つにしか対応できない。クブ部隊にはレーダー車両1と発射車両4で構成され、セミアクティブレーダーホーミング (SARH) 誘導が可能。レーダー車にはアンテナが二つあり、探査と連続波による追跡用に分かれ、ミサイルは追跡用アンテナが出す照射に沿って誘導されル設計だった。ただし各部隊に照射装置はひとつのみのためいったん発射したミサイルが命中するまで第二波の発射ができなかった。
レバノン戦争(1982年)でイスラエル国防軍の空軍部隊は囮をクブ等GBADSに向け発射し、クブが囮をロックオンしてしまうとそのあとに現れるイスラエル機に対応できず、逆に破壊されている。
そこでブクの設計ではこの問題を克服しようとした。レーダー車両を一新したほか、発射車両それぞれにXバンドマルチモードレーダーを取り付けている。そこでこの車両は運搬・発射・レーダーの機能をもつTelarになった。戦闘機レーダーと同様にTelarのレーダー(NATO呼称ファイヤードーム)は探査、追跡、照射機能があり、120度の円弧内でスキャンが可能だ。
この機能がMH17便事故の悲劇を招いた可能性がある。ファイヤードームレーダーの一番の役割は多数目標を同時に攻撃させることにある。Telarでは単一目標しか処理できない。ソ連はここにバックアップモードを組み入れTelarsに目標捕捉と攻撃を自動的に行わせることにしている。これはレーダー車両が攻撃を受け使用不能になる想定への対応だった。.
この自動モードはTelar操作員が最後の手段として選択する想定で、発射司令車両に乗るもっと訓練を積んだ操作員は想定外だった。ロシア製レーダーにくわしい専門家によれば、自動レーダーモードは射程範囲内の目標を表示し、操作員はそれを見てロックアップし、照射・命中させる。
ただしバックアップモードは安全装置ふたつを経由せずに使えてしまう。ひとつが敵味方識別装置 (IFF) であり、もうひとつが非友好機識別non-cooperative target recognition (NCTR) モードだ。IFFは専用の照会を航空機に問いかけるもので最新の民間航空基準に適合しているはずだ。
レーダー車両には新型のNCTR処理技術が導入されているとブクの設計者が語っている。NCTR技術は秘匿されているが、777のターボファンエンジンとターボプロップ輸送機やSu-25攻撃機は容易に識別できるはずである。
IFF送信機がブクのファイヤードームあるいは車両に搭載されている形跡はない。通常なら必要のない装置である。なぜなら一般交戦規則により目標の所属が確認できている前提でデータをTelarに送っているからだ。その他のGBADSでは識別機能は主捜索レーダーや指揮命令司令所に任せて発射している。ブクはこの点でIFFやNCTR機能を持っていないところが変わっている。
ブクM1と、その後の改良型M2、M2Eは合計14カ国で運用されており、内戦状態の紛争地にも投入されている。2013年1月のイスラエル空爆は明らかに改良型ブクM2Eの撃滅を狙ったものだった。シリアからレバノン内のヒズボラに引き渡されていた。シリアはブクM2E8部隊を保有していると伝えられ、同時にS-125(SA-3ゴア)40隊も運用しているらしい。S-125も移動可能な地対空ミサイルであるがレーダーは発射部隊に配備されていない。
エジプトも50以上のS-125 隊を有しており、一部は改修を受けているほか、ブクM2E取得も交渉中と伝えられている。イエメンにもS-125装備がある。イラクとリビアのGBADSは大部分が破壊されたと分析されている。■
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