Lockheed CEO On Defense And Space Endeavors
開発に13年を費やしているロッキード・マーティンF-35共用打撃戦闘機にもついに国際デビューが近づいてきた。ロイヤルインターナショナルエアタトゥーとファーンボロ航空ショーで飛行展示を予定し、ショーに合わせ大西洋横断出張する前にロッキード・マーティンCEO兼社長マリリン・ヒューソンをAW&ST編集長ジョセフ・アンセルモとペンタゴン担当上級編集者エイミー・バトラーがワシントン郊外で取材し同社の近況と課題について尋ねた。
F-35の経験で得られた教訓は多数ある中でもっとも重要な教訓はなにか。
ヒューソン: まったくの新型機開発で複雑な要素がたくさんあり、三軍に8か国も加わり、開発意外でも性能などで他に例がない事業である。過去の事業とまったく違う。教訓として連絡を強化し、要求内容を完全理解し、各工程をしっかりとこなしていくことだ。もう一つ重要な教訓は良い仕事だ。複雑な開発過程をこなし、増産し、維持し、全体通していい仕事をすることだ。
教訓をロッキード・マーティンは将来の事業にどう反映させるのか。
各事業担当は組織的な訓練を受けており、顧客に焦点を合わせ次のような疑問に答えられるよう強化している。「顧客に耳を傾けているか、また正しく対応しているか。顧客の目的を正しく理解しているか」 ただしこれは当社事業では当たり前のことだ。そこにあえて優先順位を付ける。顧客とはオープンで透明性のある意思疎通が重要と考えるし、ちゃんと聴いて顧客の要求にこたえ、顧客のニーズにあわせることが肝要だ
あなたのCEO就任前にペンタゴンの調達トップのアシュトン・カーターがロッキードの出す結果が一定の基準以下なら同社のJSF責任者は更迭されるべきだと発言している。部下の責任者たちの功績をどう評価し、F-35他事業に応用できる教訓が得られたと考えているのか。
おっしゃる意味での教訓についてはお話しできない。事業は2010年に再構成されてからうまく動いてきた。当社の事業責任者には要求内容の完全理解を求め、顧客と密接に動くことで各変動要因つまり性能、費用、日程、品質、技術面それぞれで対応させてきた。その代償として当社は契約金、奨励金等を受け取っているが、目的に対してはこれらは二次的な成果にすぎない。
あなたがCEOに就任してからロッキード・マーティン株価は85%も上昇しており、ダウジョーンズ工業株価平均より3倍も大きな変化を指名している。国防関連が不況に入る中、この結果をどう説明するのか。
当社担当チームの成果だ。当社の売り上げは減少しているが、予想した程度までの悪化ではない。ひと株あたり収益、利益率は増加しており、その主な原因は事業単位の業績内容だ。現在当社が実施中の事業は6,000件になり、好業績で過去最高を更新している。製品群は強力で投資拡大を続けている。当社の経営陣は業績の上下を経験してきたので、不況期をどう乗り切るのか、好調時をさらに利用する方法を熟知している。ひとことでいえば、適正価格を重視し、事業構造を正しく維持することだ。
現在の国防ビジネス下降は周期的なものか、それとも費用面で圧力が強いため構造的にビジネスが低調になっているのか。
今回の下降局面はこれまでと違っている。1980年代末から1990年代初めの不況時にはレーガン軍拡が終了にさしかかっていたが、この国は国防にすでに大規模投資をしていた。そこで「平和の配当」が生まれたが、2008年発生の世界規模での金融システムメルトダウンと言う構造的な問題もまだ存在していなかった。現在はというと、二つの戦役が終了し、需要が後退している。しかし世界規模の緊張は解消しておらず、むしろ拡大している。予算圧力と合わせると環境がこれまでと違っていることになる。
国防高等研究プロジェクト庁(Darpa)長官アラティ・プラバカーArati Prabhakarが大規模兵器システムの調達にかかる時間と費用に失望し、商用技術を国防製品開発に流用していないことも遺憾に感じている。このとおりなら国防体制が危うくならないか。
今の段階で投資を怠ると回復できない格差が生まれる。そこで国家として技術の主導権を維持し、新しい次元の性能に投資していく必要がある。一休みして、そのあとで追いつくのは不可能だ。研究開発への投資を維持する必要がある。これこそ当社の生命線だ。当社の顧客は技術開発や革新的技術の成果を求めて当社にやってくるのであり、そこで停滞は許されない。同じことが国家安全保障にも言えるだろう。
プラバカー長官は投資以外にも言及しており、システムがあまりにも低速で、柔軟性が欠け、システム開発そのものがあまりにも高額になっていると指摘しているが。
長官がみんなと一緒になって工程を改善できる立場だといいのに。Darpaは本当にいい仕事をして、インキュベーター式にハードルの高い問題や時短的に結果を出す課題の解決を助けている。当社のスカンクワークスは別のモデルだ。各社からどうやったらそんなにはやくイノベーションができるのかとよく聞かれる。
ロッキード・マーティンがIRAD(独立型研究開発)に投資を拡大しているというが、総売り上げ比率ではこれまでの標準を下回っているのでは。昨年実績ではわずか1.5%だった。
これまでの標準以下だとは思っていない。IRADだけでなくR&D支出全体を見てもらいたい。各開発案件の初期段階には相当の投資をしており、これが開発費用の相当を占め、縮小しているとは思わない。
IRADを活用して近い将来にビジネスの機会が生まれるのか、あるいは政府に自主的な提案ができるのか
今はまだお話しできない案件に注力しているところ。これは近い将来に当社の事業拡大につながるとみている。長期的には極超音速、指向性エネルギー、自律型ロボット工学、高機能素材としてのナノテクノロジー、3-Dプリント技術や高度加工技術を重視している。それぞれが業界地図を変える可能性がある技術。
米海軍のUclass(無人艦載監視攻撃機)の要求性能を見るとステルス性が軽視されているようだが、このままならロッキード・マーティンは入札を見送るか。
要求性能全般を見て判断する。スカンクワークの設計で大きな成果を上げており、米政府が求める内容にあわせることはできるだろう。すでに事業にとりくんでいるが、精査し当社ができることを決める必要がある。入札への対応にはこまかい手順を確立している。勝算があれば当然入札する。
ロシアからRD-180ロケットの対米販売を停止すると通告があった。もし新型エンジンが数年後に実用化されないとアトラスV打ち上げ機がたちゆかなくなる。そのなかでロッキード・マーティンとしてはUnited Launch Alliance (ULA) 合弁事業にボーイングとともに引き続き参画することに意味はあるのか
アトラスの在庫は2年分あるし、デルタIVもあり、数年先というご質問であればこれが答えだ。その先に打ち上げ事業が維持できなくなるかは誰にもわからない。別のエンジンが実用化される公算があるかと言えば、たぶんある、と言えるが、米政府が新型エンジンに投資をすれば当社も支援したい。
ではデルタIV以降についてロッキードは検討を始めているのか。スペースXが市場をかき回す要因にならないか。価格体系も変化しはじみており、顧客の要望も同様に変化しているのではないか。
スペースXが認可を受ければ、当社としても当然対抗する準備に入る。当社の実績はULA通じ打ち上げ成功83回、当社単体でのアトラスで115回ほどある。将来の競争がどうなるかは絶えず検討している。当社の提示価格は十分に競争力があると思うが、相手方の価格帯がどうなるか見てみたい。その一方で当社の仕事はお値打ちな価格で打ち上げを提供することで、これがULAの仕事にもなる。
前任者のボブ・スティーブンスはサイバーを「開拓分野」“Wild West”だと言っていた。そこで現在のロッキード・マーティンはサイバーで十分な収入を得る目標はどこまでできているのか。
現時点でサイバーは年商10億ドル規模の事業で、今後もサイバー安全保障関連は延ばしていく。これは国内と国外の双方で。各国政府多数をこの分野で支援しているし、民間大企業についても同様。総売り上げ450億ドルの当社としては小規模になるが、サイバー安全保障は多くの事業に関連するものであることが要注意だ。
プーチン大統領のウクライナ対応で東ヨーロッパはロッキード・マーティンにとって魅力あふれる市場になってきたか。
ミサイル防衛他で関心が高まっている。ポーランドでは50億ドルで防空システム構築をしようとしており、当社は期待している。当社の提案はMEADS(中規模防空システムズ)でドイツ、イタリア、ポーランドの関係者と意見交換して、それぞれMEADSへの関心が高く、高性能かつ全方位対応能力で各国ニーズにこたえられることが分かった。またNATOとの共同運用能力があり、NATO標準と指定採用される可能性もある。その他当社製品への引き合いもある。世界いたるとところで当社製品への需要があり、ぜひ当社製品を採用していただきたい。■
マリリン・ヒューソン (60)略歴
アラバマ大で経営管理学修士号
ロッキード・マーティンに1983年上級生産技術職として入社。以後19回の昇進を経て、2013年1月1日より同社トップへ。
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