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開幕前 今年のファーンボロ航空ショーの見どころ(軍事)---活気を取り戻すアメリカ、精細を欠くロシア


U.S. Returns To Farnborough Air Show, Russia Retreats

The F-35 is in, but Sukhoi is sitting out appearance at Farnborough gathering
Jun 30, 2014Jen DiMascio, Amy Butler and Maxim Pyadushkin | Aviation Week & Space Technology

ファーンボロ航空ショーに国際政治・安全保障j情勢が影を差している。米国およびその同盟各国はアフガニスタンからの兵力撤退を反映して活気を取り戻しているが、ウクライナ問題による新たな制裁措置を受けているロシアは今回は軍用機の出展を断念する。
  1. 7月4日には空母クィーン・エリザベスがスコットランドで進水し、直後にF-35共用打撃戦闘機が国際デビューするのがロイヤルインターナショナルエアタトゥー(RIAT)(会場イングランドのフェアフォード空軍基地)で、その後ファーンボロで公開される。
  2. ユーロファイター・タイフーンを英国が海外販売目指す中、F-35は目立たない形に追いやられていたのが2012年。ロシアのスホイSu-35が昨年のパリ航空ショーでは注目を集めた。今度はJSFが脚光を集める番で、F-35B短距離陸垂直着陸型がRIAT会場に垂直着陸する予定だ。また会場には各国の空軍トップ31名が集まり同機を見守る。F-35の展示飛行は5回で短距離陸、高速・低速上空通過、ホバリングを実演するが垂直着陸はしない。
  3. 計10か国がF-35導入予定だが、うち数か国はまだ躊躇中。カナダ政府はこの二年間で検討した結果、同機調達を履行する見込み。シンガポールはF-16後継機としてF-35を有望視している。ベルギーはJSF計画室含む5か国に情報開示請求をしている。ただし出展がそのまま商談成立につながるとみる金融投資アナリストは少数派だ。
  4. JSF以外に出展される戦闘機にはサーブ・グリペンNG、ユーロファイター・タイフーン、ダッソー・ラファール、ボーイングF/A-18E/Fスーパーホーネットがある。このうちスーパーホーネットでは米議会が生産ラインを2015年まで温存させようとしているが、投資アナリストには確実な海外受注がないと無理とみている。.
  5. JSF以外に米国からの軍関係者出席が期待される。2年前の前回では国防支出の縮小を受けて米軍関係者は海外出張が許されず、進行中の戦闘に集中するよう求められていた。出席する米側大物関係者には空軍長官デボラ・リー・ジェイムズ、国防総省の調達責任者フランク・ケンドール、海軍の調達責任者ショーン・スタックリーがあり、RIATの世界空軍首脳会議には空軍参謀総長マーク・ウェルシュ大将が出席する。
  6. 予算環境は米国、欧州それぞれ依然として厳しく、メーカー各社は好調な海外営業に力を入れる。エアバスはA400M輸送機の拡販に注力しており、同機は昨年のパリ航空ショーで展示飛行している。
  7. テキストロンは自社開発スコーピオン軽量攻撃・情報収集監視偵察機をRIATとファーンボロ両方で展示する。同機は昨年12月に初飛行しており、テスト41回累計77時間飛行している。
  8. ヨーロッパでは空中給油機が不足しており、現在は合計10機種42機が就役しているが、エアバス、ボーイング両社が商機をうかがう。航空ショーをきっかけに近い将来の受注を狙うが、当面は米空軍向け18機のKC-46A引き渡しを2017年に実現させることがボーイングの狙いだ。
  9. 米空軍向け練習機350機の調達予定にくわえ、世界各国の需要を期待する各社にとってファーンボロは商談の機会になる。アレニアのM-346マスターはファーンボロで飛行を実施するが、韓国航空宇宙工業のT-50など他の機種は未定だ。
  10. 英国のトラニス無人戦闘航空機(UCAV)のテスト飛行が実施中だが、英仏間でUCAV共同開発の進展がショー会期中に覚書調印で実現することが期待される。両国ではBAEシステムズとダッソーで共同事業を検討中だ。
  11. ウクライナ情勢を背景にロシア周辺国で国防支出増の動きがある。チェコ共和国、ラトヴィア、リトアニア、ポーランド、スウェーデン、トルコ、ルーマニアである。
  12. 一方ウクライナ問題を受けロシアが制裁対象となる中で、ロシア製軍用機は出展されない見込みだ。Su-35戦闘機、カモフKa-52攻撃ヘリが飛行展示で注目を集めた昨年のパリショーとは様変わりだ。
  13. ロシアンヘリコプターズ社Russian Helicopters(各社合併で誕生した回転翼機メーカー)によれば縮尺モデルだけは展示するという。同社はロステック Rostec (国営企業で国防、航空宇宙分野を統制)の傘下にあり、CEOのセルゲイ・チェメツォフSergey Chemezov はウクライナ関連で米国の制裁対象人物のひとり。ただし米財務省は今年4月段階ではロステック自体は制裁の対象に入れておらず、ファーンボロではロステックおよび関連企業がロシアパビリオンの中心に入る。
  14. ロステック傘下のユナイテッドエンジンズコーポレーションUnited Engines Corp. (UEC) はAI-222-25ターボジェットエンジン(ヤコブレフYak-130ジェット練習機に搭載)を展示する。同エンジンはロシアのMMPPサリュートとウクライナのモトール・シーチ Motor Sich の共同開発だが、UECはウクライナ抜きで生産しようとしている。UECからは117Sエンジン(Su-35用)、SaM146(SSJ 100用)、開発中のPD-14(MS-21ナロウボディ旅客機用)の縮尺モデルも展示される。■

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