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米空軍のこれからの30年戦略案(総論)が発表されました。



総論としてコンパクトなつくりのようですが、議会との関係改善などお題目だけに終わっている感じですね。技術開発については空軍のこれからの動きに要注目です。ISRを抑止力でとらえる、指向性エネルギー兵器の開発などさらに注意が必要な表現もあるようです。なにかと話題が乏しい米空軍ですが、先を見越した戦略で盛り返しを見せるのか、それとも絵に描いた餅でおわってしまうのか、今後が大事ですね



New US Air Force Strategy Emphasizes Closer Ties With Industry, Congress

Jul. 30, 2014 - 01:03PM   |  
By AARON MEHTA   |  
House Armed Services Committee Holds FY2015 Air Fo
空軍参謀総長マーク・ウェルシュ大将と空軍長官デボラ・リー・ジェイムズが下院軍事委員会で3月に証言している。新戦略案では議会との関係改善を重要視している。(Chip Somodevilla/Getty Images)

WASHINGTON —米空軍は今後30年間を展望した新戦略を7月30日に発表し、産業界とは密接に協力し、議会とはよりよい関係を築き、人材と装備では柔軟性を高めたいとする。
報告書は「アメリカの航空戦力:未来に向けた選択」“America’s Air Force: A Call to the Future”の表題で参謀総長マーク・ウェルシュ大将が求めた広範な戦略検討作業の成果物である。ウェルシュ大将は従来より長期間をにらんだ作業を求めていた。
文書は22ページで大目標の設定にあてられている。これとは別に20年の視野で「戦略マスタープラン」 “Strategic Master Plan” を2014年末までに完成させ、より具体的な目標と目的を明らかにする予定。

【ロードマップの要約】
今回の30年文書ではウェルシュ大将とデボラ・リー・ジェイムズ空軍長官Air Force Secretary Deborah Lee James の考える空軍の未来へのロードマップが示されている。その特徴は以下の四点。
■ 「新技術による急速なブレイクスルー」が今後も続き、空軍は技術優位性を確保するため柔軟な対応が必要。
■ 地政学的不安定度は今後も続き、「現時点での地政学的現実だけで脅威へ準備するのは不適当」
■ 空軍が対応を迫られる「広範囲な作戦環境」に敵対的、非敵対的双方の環境で運用できる装備とともに人道救難活動でも苛酷環境に対応した装備が必要。
■ 空、サイバー、宇宙の各空間で「グローバル防衛」の必要性。
この4分野の取り扱いには「戦略的機動性」 “strategic agility” が必要で、空軍は柔軟かつ状況適合的に脅威対象に対応する必要がある。
「戦略的機動性の実現ではじめて20世紀の産業社会のパラダイムの現状から「脱する」ことが可能となる。

【人材活用と組織改編】
この機動力の源泉はいくつか考えられている。空軍人員には空軍を離れ現実世界で経験を積ませてから復帰できる制度を構築することだとし、本人の経歴に汚点とならないようにする。
「勤務中断」として常勤から非常勤に切り替えても本人の経歴上不利にならないようにする。さらに空軍外で得る経験を好意的に評価する」(同報告書より)「同様に各人の職歴開発モデルを真剣に考え、専門分野での経験機会とともに昇給昇進の機会を空軍
同報告書では同時に「個性を重視した広範な価値観」を空軍内部で認めるべきと重視しており、その目標を空軍本体、州軍、予備役の一体化におく。


開発と企画化の迅速化は同時に調達業務を軽減する一方、民間産業界との連携を一層必要とする。
「将来の調達では今以上に価格妥当性が重要要素になるので、民間産業の知見を利用すべきだ。民間では利益が動機とない競争が発生している。この競争と調達方法ならびに開発過程の改革で生き残りを目指したビジネスモデルができている」
ジェイムズ長官もこの競争機動力をファーンボロ医国際航空ショー会場でのスピーチに盛り込んでいる。
「手続き、作業の両面が硬直化したままになっている....仕事の完了にあまりにも時間がかかりすぎている。もっとお互いに自由に話し合って学びあうことが必要だ」(ジェイムズ)
報告書でもう一つ重要な強調点は「協調」で、シンクタンク、業界そして議会との関係強化である。
この数年にわたり議会と空軍の関係はぎくしゃくしてきた。このことを報告書も認め、改善を公言している。A-10などの装備退役と言う空軍の掲げる目標に対し、議会が法令審査面で妨害をとってきたが、一言に改善と言っても簡単には実現しない。.

【技術開発】
技術面では機動性の意味は科学技術分野との仕事の緊密化により新技術の開発育成をすすめることだとする。
「有望な科学技術上のブレイクスルー結果を利用することで将来の作戦能力の拡大の可能性が高まる。これとともに性能要求の定義と調達制度の中に『見直し』の機会を増やすことで内容の変更あるいは中止を途中で行えるようにする。また試作品開発を迅速化し、装備の実用化までの経費を節減する」としている。
モジュラー化で技術の実用化を加速するほか、世界で活動する各部隊に選択肢の幅がひろげられるとする。
報告書の中で特に細かく記載があるのが「根本を一変させる」“game-changing” 技術開発が進行中であり今後の空軍の方向性にも大いに関係があると説明しているくだりだ。
五つの分野を取り上げている。極超音速兵器、ナノテクノロジー、指向性エネルギー、無人機、自律技術だ。
各分野は開発中であり報告書はこれですべてではないと特記しているが、各技術は空軍研究部門だけでなく産業界トップで新規投資を決断する必要のある層にとっても重要なロードマップを示すものだと説明。
マーク・ホステジ空軍大将Gen. Mike Hostag(空中戦闘司令部司令官)は指向性エネルギーの実用化を期待しており、弾倉大の大きさにしてF-22やF-35に搭載するのが目標だとする。「指向性エネルギー兵器を開発中の各種研究施設を訪問してきた。驚くべき成果があらわれつつある」
ホステジはあわせて業界と空軍が今以上に協力して新技術開発にあたることを期待していると発言。航空戦闘軍団は研究部門、運用部門と産業界を一緒にするための「革新会議」“innovation conferences” tを開催していると説明している。「目標は民間企業に対して当方の研究結果への関心を持たせ、この技術で空軍と協力したい、と言わせることだ」
「産業界の提携先各社へはIRAD(空軍自由研究開発)資金を提供しており、各社にとって不可欠なものとなっている」とホステジは発言している。「そこから将来の利益を生む製品が生まれる。IRADから戦闘に必要な技術が生まれる。その意味で科学技術への投資で研究成果が生まれるように維持するのは大切だ。しかし同時に民間企業が同じ技術を取り入れた製品を実際に作ることが重要だ」

【抑止力】
報告書では抑止力の近代化についても触れている。「21世紀においても確実な核抑止力は絶対的に必要な存在だ」とし、
小規模な脅威(例、アルカイダのようなテロリスト)の阻止は核兵器では不可能だが、現実的にはイランのような国が合衆国にサイバー攻撃をしかけたら核による対応策の可能性が出てくる。
そうではなく新抑止政策として経済的かつ即応性の高い技術を基盤とする手段が必要だ。サイバーはここでおおきなやくわりがあるが、高性能ISR機材も忘れてはいけない。
「巨額の予算で敵を一網打尽に圧倒するのではなく、革新的かつ低価格な選択肢が必要だ。それを行使した場合敵に高額の対応が必要となる選択肢だ」と報告書は述べる。「わが方によるミサイル防衛コストが敵のミサイル製造・運用コストを大幅に下回れば、戦略上の方程式が大きく変化することになる」■


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