MDA Budget Request To Boost GMD, Add Radar
By Amy Butler abutler@aviationweek.com
Source: AWIN First
aviationweek.com February 12, 2014
昨年のテストが失敗して日が浅い中、チャック・ヘイゲル国防長官は地上配備中間コースミサイル迎撃システム Ground-Based Midcourse Defense (GMD) の開発予算を増額しミサイル防衛庁(MDA)に2015年度から19年度にかけ45億ドルを追加する。
- これまでペンタゴンは1,570億ドルを各種ミサイル防衛手段に投入しており、GMDもその一部。
- ペンタゴンの予算要求案は来月に議会に提出予定で、ヘイゲル長官はGMDの予算確保を重視している模様だ。その狙いはテスト自体が目的化している現状を打破し技術の進歩を促進し、今春の迎撃テストで結果を出すことらしい。
- さらに最低でも15億ドルで新型レーダーを開発し、北朝鮮が発射したミサイルの探知をめざす。また大型浮遊式宇宙配備Xバンドシステムを東海岸に移動させ、イランからの攻撃を監視させる可能性もある。
- MDA予算はそもそも70億ドル台へ減額されるはずが、かつての90億ドル台近くまで回復される。その背景にはGMDが不当な扱いを受けているとのヘイゲル長官の懸念がある。
- 北朝鮮あるいはイランのICBM攻撃に対する唯一の国土防衛手段として、GMD開発が失敗すれば国家の一大事だ。GMDの契約企業はボーイングで 2013年7月5日のテストでは難易度が低いはずの内容が実施できなかった。しかも5年前には成功していたのと同じ内容だった。ヘイゲル長官は北朝鮮の挑発的発言を意識し昨年3月にテスト実施を命じ合衆国領土を防御する有効策を示す狙いだった。
- それが反対にシステム有効性に疑念を持たせることになった。GMD迎撃部隊はアラスカ州フォート・グリーリー基地とカリフォーニア州ヴァンデンバーグ空軍基地に合計30基が配置されている。
- 失敗に終わったテストでは実弾ミサイルを警戒態勢に置き、常時発射できるようにし、世界各国に対しその有効性を示そうとしていた。実際にはレイセオン製大気圏外攻撃飛翔体 Exoatmospheric Kill Vehicle (EKV) がオービタルサイセンシズ製ブースターから切り離しに失敗している。「こんなことは60年代にいつもやっていたことだ」と業界筋は切り離しの難易度が高いはずがないという。この結果200百万ドルが無駄になったが、その原因はクランプあるいはほかの製造精度が低いハードウェアとの仮説を立てる向きもある。原因調査はまだ完了していない。
- その結果ヘイゲル長官はGMD予算を増額し、モニタリングを強化するとともに改修作業を進め、システム性能を引き上げることにしたと国防筋は言う。ペンタゴンにとって同システムの失敗は耐えられない。「今回の失敗は5年間の努力が失敗したことになり、国防総省と議会の間で決まったGMDの設計変更、仕様改善の凍結が失敗に終わったことを意味する」のだという。
- ペンタゴンは現行仕様から外れないようにしており、EKVのCE(性能向上策)Iベイスライン仕様では14回のうち8回で迎撃に成功している。2008年以降の失敗例3回のうち2回がCE-II仕様で、その内容は秘密のままだが妨害手段を回避する操縦性の改良とみられる。ペンタゴンの主任試験官からEKVの設計改良で提言が出ているが、国防総省高官は唯一の解決方法はEKVを超越した存在いわゆる共通破壊飛翔体Common Kill Vehicle (CKV)だとみているようだ。2014年度予算でその開発予算が含まれており、共通というのは GMDとSM-3イージス迎撃体で相互利用できるからだ。ただこれがどうなるかは見えてこない。ヘイゲル長官の指導でEKVに代わる手段へ進むことになる。迎撃手段の開発で全体戦略が欠如しているとの声もある。
- ただ迎撃手段の統一が実現するか不明で、たとえばEKVは単弾頭を目標とする設計だが、不複数弾頭を相手にできる迎撃手段が開発できるのか不明のままである。国防関係者と議会は次期迎撃手段を2020年めどで配備したいとしている。
- GMDの信頼性がぱっとしないのは同システムがまだ未完成だからだ。GMDは開発と配備を同時並行する構想で、ジョージ・W・ブッシュ大統領時代に「限定防衛作戦手段」との通称でいかにも作戦能力があるかのように命名されている。THAAD(最終段階高高度地域防衛システム)では10年近く設計変更で稼働できなかったのとは異なり、ホワイトハウスはGMDを「オフライン」にすることを拒否している。
- CKVを全面的に推進してもEKVの放棄にならず、今後も改良を続け信頼性を向上させていくだろう。
- 一方でペンタゴンは新型レーダーを開発し太平洋地域に配備する案を検討中だ。長距離識別レーダー Long Range Discrimination Radar (LRDR) の呼称であるが、正式には未決定だ。実現すれば飛来する弾頭とレーダーを混乱させる対抗手段を区別することができる。ビール空軍基地(カリフォーニア州)にある早期警戒レーダー、前進配備中のAN/TPY-2Xバンドレーダー、浮遊式海上配備Xバンド(SBX)レーダーならびにコブラデインLバンドレーダーの機能を強化できる。太平洋地域ではイージス艦もSPY-1レーダーを搭載している。
- LRDRはレーダー技術開発と生産方法の改良内容を反映して高信頼度で感受性高いシステムになっており、送受信部分、搭載する半導体、アクティブ電子スキャンアレイはSBXが生まれた1990年代から成熟化している。ただしSBXの問題点は信頼性が突如低下することがある点だ。もともとはGMDの性能を測定する技術陣の支援用に創案されたものであり、24時間の監視用途は想定外だ。ただし、GMDが実用化されるとともに北朝鮮の脅威が現実になったので、関係者は警戒用に信頼度がもっと高いシステムを希望している。
- このためMDAはSBXを東海岸に移送し、イランを想定した国内の対ICBM防衛体制が不十分と懸念する国会議員を安心させることとした。
- 一方で5年以上のブランクを経て初のGMD迎撃テストを行う検討が続いている。前回テストはFTG-06飛行追跡テストとして難易度が最も高いもので失敗に終わっているが、もう少し基本的なシナリオで実施してはどうかと考える関係者もいる。「とにかく成功例がほしい」というのが国防筋の偽らざる心境だ。
- FTG-06では敵目標に見立てた高性能なロッキード・マーティンLV-2にEKVのCE-Iを真正面から迎撃させている。接近速度が高いため精度と性能が問われた。
- MDAは同テストを再実施する必要があるが、関係者もCE-I仕様の威力を展示するのであればリスクを低くした方がいいとみており、結果的にシステムへの信頼度が回復するという。
- GMDテストは毎回200百万ドルほどの経費となる。MDA長官ジェイムズ・シリング海軍中将 Vice Adm. James Syring はGMD発射を再開しテストを定期的に実施することを希望している。■
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