Lockheed Martin Refines Hybrid Wing-Body Airlifter Concept
By Graham Warwick
aviationweek.com February 17, 2014
Credit: Lockheed Martin Concept
軍用機では性能を一番に重視し燃料消費は軽視するのが通例だった。ただし燃料価格が作戦運用の制約条件になってきたため、設計の優先事項も再考を余儀なくされている。.
- 米空軍では燃料消費削減の対象は輸送機・給油機部隊に集中している。年間消費の三分の二が両機種によるもののため。すぐ実施できる対策として編隊飛行、ウィングレット装着など抗力削減策がであるが、長期抜本的な節減にはならない。
- 航空機設計を劇的に変えることで燃料消費を大幅に下げようという空軍研究所のプロジェクトは「革命的エネルギー効率機体構成」Revolutionary Configurations for Energy Efficiency (RCEE) という名称がすべてを物語っている。
- RCEEフェイズ1(2009年-11年)の目標は現在の輸送機・給油機より燃料消費が90%少ない次世代機材の定義づけだった。2011年からのフェイズ2では関連企業が詳細な機体構造を検討している。.
- フェイズ1ではボーイングが90%削減目標に対して全電動トラス構造主翼で搭載貨物20トン案、ペイロード40トンの分散推力ハイブリッド電動機案、ペイロード100トンのハイブリッド電動方式ブレンデッドウィングボディ(BWB主翼機体一体型)案を提案した。フェイズ2で同社は推力分散型ハイブリッド推進の設計を詳細検討している。
- 一方、ロッキード・マーティンは各種の仕様と技術をフェイズ1で検討しており、ハイブリッド方式ウィング・ボディ(HWB)が最有力とした。フェイズ2で同社はこの概念をさらに検討し、主翼胴体一体化に加え、機体前部の空力特性と機体構造の高効率化を加え、機体後部は従来型と同様の構造にし空中投下など空輸上の要求にこたえられるようにしている。
- HWBは双発で6,500 ft. 未満で離陸し 3,200 nm を220,000 lb. 搭載して飛行できる。このペイロードはロッキードC-5が輸送する大型貨物の全種類を含む。ロッキードの計算ではボーイングC-17より70%少ない燃料消費になるという。空力特性、新型エンジン、機体の軽量化が組み合わさった効果だとする。「当社は各種成熟技術で経済的で生産可能な機体を想定しています。」(ロッキード・マーティン・エアロノーティクス)
- HWB案の特徴は高度の空力特性最適化を計算流体力学を駆使して実現したことだ。C-17やC-130、C-5の時代にはこのツールは存在していない。CFDの成果として巡航速度をマッハ0.81にしつつ亜音速抗力を45%も減らすことができたとロッキードは言う。
- 同社の試算ではHWBの空力特性効率はC-17より65%優れている。C-5より30%高く、ボーイング787と比べても5%高いという。
- 高効率の理由としてまず一体型機体前部で揚力の25%を稼ぎ、主翼重量を増やさずに抗力をさげている。主翼の縦横比は12まで増えており、一般的な機体は9が通例だ。
- 機体後部は現行の貨物搬入や空中投下と同じになっており、完全な全翼機設計ではこれは困難だという。T字型尾翼のため全翼機設計より抗力ガ5%増えるが、機体制御は堅実で新規制御系統を設計・製作する必要がないうえ、全翼機のアルゴリズムを応用するので空中投下をした場合の急な重心移動も制御可能だ。
- 機体後部は滑らかな空流を作りパラシュート降下あるいは貨物投下を助けるのはC-5と同様だ。巡航飛行中のトリム操作は不要となっており、抗力の増加を防ぐ
- HWBの設計で特異なのは一体型機体前部の中に円形与圧胴体が入っていることだ。貨物の一部は非与圧の胴体に搭載される。パレットは後部扉から入れ、床面ローラーで前方へ移動すれたあと、胴体扉から側面で取り出すことが可能だ。その結果、与圧部分の胴体はC-5より小型化軽量化できたが容積はほぼ同じ。ロッキードの試算ではHWBの機体重量は従来設計より18%軽量化できたという。
- もう一つ特異なのはエンジン取付位置が主翼後縁の上になっていること。主翼上にナセルを付けることは長年嫌がられてきたが、ホンダジェットでこの方式を採用したことであらためて注目を集めていた。
- ロッキードは巡航飛行中の抗力発生による干渉効果がエンジン取付位置を変えることでどう変化するかを検討し、CFDの解を15,000通りも求めた。その結果、後縁上方にナセルをとりつけると揚力抗力比が良好でエンジン種類を問わず従来型の主翼下取り付け方式よりも5%の効率効果が得られることが分かった。.
- エンジン候補は三種類で、ジェネラルエレクトリックのGEnxは現時点で利用可能で燃料消費率specific fuel consumption (sfc) でC-17やC-5Mより25%の改善となる。ロールスロイスが提唱するアルトラファンUltra Fan は30%低いsfcとなるが登場は2030年となる。三番目がGEのオープンローターで2025年以降に実用化されるが効率改善と軽量化を両立している。sfcはC-17比較でGEnxが70%減、アルトラファンが75%、オープンローターが80%減となるという試算結果がある。
- エンジン直径でGEnxの11.8 ft. からオープンローターの 21 ft.まで開きがあるが、主翼はどのエンジンにも対応可能だという。各エンジンともモジュラー方式で取り付けられる。
- 主翼上取り付け方式ではそのほかの効果もある。ナセル前方から前縁までの距離が長くとれるので気流を整え、空気取り入れ時の乱れを減らすとともにファン騒音の発生場所は地面から離すことができる。後縁から張り出しているのでエンジンの保守点検や取り外しは容易になる。また主翼上取り付けエンジンにより尾翼を小さくできる。
- また揚力でもメリットが生まれる。「取り入れ口の気流により主翼上に吸い込み揚力が発生するという。その結果揚力の効果は15%増える。
- STOL性能を実現するのがフラップへのエンジン気流吹付でこれ以外にフラップを使って推力を下に向ける、F-35Bのようにノズルを回転させる、エンジン自体を回転させる案が浮上している。
- RCEEはまだ研究段階だが、米空軍は近い将来次世代の戦略輸送機開発作業を開始する必要が生まれるとすれば、C-17の退役が予定通りなら2033年に始まるためだ。C-17の配備には計21年かかっているので注意が必要で、そのため今にでも工程を開始する必要がある。■
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