2014年最初の投稿は暗い内容です。これまでの軍用機開発生産の慣行は維持できない所まで来ているのでしょうね。コストを重視して管理した挙句がF-35のような西側国防体制を内部から崩壊させかねない機体しか出現していないのは嘆かわしいことですが、一方で記事が提言する産業基盤の維持という観点が出てきたのは歓迎すべきでしょう。日本はこの考え方でこれまでずっと高い価格を負担してきたのですがね。また単一国での本格開発は困難になってきたので、国際協力、共同開発がこれからの方向でしょうか。F-35の唯一の功績はこの体制づくりの基礎を作ったことと後世では記憶されるでしょうね。日本の産業基盤が役に立つ時代がやってきそうです。ご関心の向きはF-3、F-X、F/A-XXで検索して過去の記事を御覧ください。
Opinion: U.S. Military Aircraft Fly Toward A Waterfall
By Richard Aboulafia
Source: Aviation Week & Space Technology
aviationweek.com December 30, 2013
1990年代の防衛産業合併ブームは冷戦終結による生産能力過剰の解決が目的だった。ただ完全に生産が終了したのはグラマンF-14とノースロップB-2だけで、大部分の機種は性能改修や輸出でラインを維持した。
- これからの苦境を予感させる動きが出てきた。9月にはボーイングがC-17ラインを2015年で閉鎖と発表。その一ヶ月後に韓国がボーイングF-15をF-X 3選定で落選としサイレントイーグルの将来がなくなり、同機ラインは2018年で閉鎖に追い込まれる。12月にはボーイングF/A-18E/FがブラジルのFX-2選定に漏れ、同社の国際営業で大きな敗退となった。一度は確実だった海軍によるスーパーホーネット36機追加発注がすぐに取消になっている。これで同機の最終号機納入は2016年となり、ボーイングは今年3月にも同機生産ラインを自社費用で維持すべきか決断する。
- ボーイングだけではない。ロッキード・マーティンも昨年でF-22全機を納入しており、F-16生産も2017年で終了する。ビーチクラフトのT-6最終機の引き渡しは2016年予定で、ベル・ボーイングV-22は追加受注がないと2020年で終わりそうだ。回転翼機の生産ラインは健在だが、2011年から18年の発注機数は半減している。
- これで米国に残るまともな固定翼軍用機生産ラインはわずか2つになる。両方ともロッキード・マーティンでF-35とC-130Jがそれ。ボーイングが生産を続けるのはKC-46とP-8だが後者は2020年ごろで終了する予定。
- 開発中の新型機はわずか。空軍のT-X次期練習機には既存機種を流用して開発をはやめるとはいえ2010年台には姿をあらわさない。長距離打撃爆撃機の開発は始まっ
- たが生産は早くても2025年開始だろう。
- C-130Jは空軍、特殊作戦司令部、海兵隊、輸出需要があり例外的に安定しているとはいえ、削減をかろうじて逃れたに過ぎない。わずか8年前に国防総省は同機の生産ラインを閉鎖しようとした。仮にこの通り実施していたら旧型C-130の機齢が40年を越える中で交替機材がなくなるところだった。.
- 米国はアジア重視の部隊再配備を実施中で、これまでにまして長距離戦略空輸能力が必要なのに唯一の戦略輸送機C-17の生産を止めようとしている。海軍内部にスーパーホーネット生産を継続したい向きがあるのもF-35Cの空母運用能力が実証されていないためだ。
- 国防予算の状況が厳しいことから、今後も1ないし2機種の継続が精一杯だろう。ただし、航空機開発の進め方を米国が変更する可能性が出てきた。現状では開発含む全体計画はいかにしたら早く実現できるかを目的にしている。各軍は予算さえ管理できれば報酬を与える仕組みを作っており、生産量を増やすことで単価を下げることに注力している。各企業にとっても売上を伸ばし利益を確保することが励みとなり、各議員には地元選挙区に雇用を持ってくることが目標となっている。
- たしかに理解できる理由付けではあるものの、各関係者は産業基盤の保存という観点を無視している。むしろ単価はわずかでも上げて各機の事業をより長く維持できるようにすべきである。年48機生産を10年間続ける代わりに36機生産を13年間続ければいいではないか。輸出需要を生産量増加の口実にするのではなく、国内需要の補完に使えばいい。
- 産業基盤を重視する考え方に今からでも切り替えれば、今後に良い結果を生むだろうが、とりあえず現時点では工場閉鎖や数千人単位の解雇が目に入るだけで、国防資産の消失につながる。冷戦後の軍用機生産の真の意味の精算が不気味に迫っている。■
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