2013年9月30日月曜日

連邦予算がピンチ ペンタゴンも影響を免れることはできません

米国の連邦政府が予算がなくなり機能停止になりそうな状況ですが、国防総省関係はさらに深刻なようです。こんなことで世界の平和は守れるのでしょうか。なお以下の米海軍協会ニュースは現地時間月曜日午前時点での報道です。

Government Shutdown: The Basics

By: John Grady
                        
U.S. Naval Institute USNI News,
Monday, September 30, 2013
                                                 

上院部会がペンタゴンの求めた基地閉鎖追加を却下した。カインでは負担可能な健康診療法案をさらに一年先送りする決議をしようとしており、同法案関連の医療機器への課税を認めなかったことで今週中にも連邦政府の部分的な機能停止が現実のものになる可能性が高まってきた。本日午後にも上院も同法案を否決する見込み。
  1. そうなるとおよそ40万人の連邦政府公務員が議会で何らかの合意形成ができオバマ大統領による署名による支出法案の成立に目処がつくまで無給状態で自宅待機扱いとなる。今週末は政府幹部が休日返上で誰を自宅待機扱いにするか、どの機能が継続可能かを見極めようとしていた。
  2. 政府機能が停止になりそうとなり、ペンタゴンの監督官ロバート・ヘイルRobert Haleから悪いニュースが発表された。州軍を維持支援する民間作業員と予備部隊には火曜日にも職場に来なくても良いとの知らせを受けそうだという。
  3. ただし同日に制服を着て出勤する各位も身なりをきちんとしておいたほうが良さそうだ。仮に議会が支出法案合意を10月7日期限までに形成できないと、現役軍人および民間作業員は給与支払いがあてにできなくなる。予備役兵員の支払い条件はさらに悪く、支払日はばらばらになりそうだとヘイルは言う。
  4. 機能停止になる前に国防総省には影響が出るとヘイルは続ける。「みんな給料の支払いが遅れることを心配して各自の役割に気を使っていない」
  5. 政府機能が停止した場合、戦没者の家族は遺族年金の受取は法案が成立するまで期待できなくなる。陸軍報道官によればアーリントン国立墓地は閉鎖されることなく、戦没者の埋葬等は平常通り行うという。退役軍人墓地も予算が前倒しで確保されていることから政府機能の停止と無関係だという。
  6. ヘイルによれば昇進検討委員会も同様に開催見送りとなるという。
  7. アフガニスタンはじめ各地での軍事作戦は「人命の安全および財産の保護に必要」と判断されるものは継続される。配属命令、移動命令は影響を受けない。その他一時的な出張旅行は承認されない。ただしアフガニスタンへの、あるいはアフガニスタンからの移動は承認受ければ可能。入隊勧誘は継続され、入隊事務所はそのまま業務を継続する。
  8. 先週金曜日の段階でヘイルは民間人作業員の半分を自宅待機の対象にし、基地内売店から艦載機訓練飛行まですべてを中止することを検討中と明かしている。ただし、現時点で地中海付近を航行中の艦船は対象ではない。
  9. 前回は2011年12月に同様な状況があり、その際の経験から国防総省ウェブサイトはポーツマスや真珠湾の海軍工廠と並んで支出法案の承認が遅れ政府予算が底をつきそうで業務停止が間近いと伝えている。
  10. 同様にアフガニスタンから機材を搬送することは一時的に中止になるとヘイルは示している。ただどこまで閉鎖が広がるかは「先が見えない」とし、南西アジアから米本土までの軍事輸送についてもヘイルはくりかえし、「現地司令官などがこの問題を検討中」と表現している。
  11. 閉鎖に関連し、基本的な業務である食事提供、フィットネスセンター、託児施設その他は閉鎖の対象外と国防総省は発表している。ただし、どこが開いていてどこが閉まっているのかを個別に見ていく必要があり、全国軍人家族連合会 National Military Families Association はウェブサイトで閉鎖情報を提供しているので参照されたい。先に電話で確認して閉鎖していなくてもサービス提供に通常より時間がかかることは覚悟すべきだ。
  12. ヘイルは今回の閉鎖の恐れで国防総省勤務の民間人従業員の士気が相当下がっていることを気にかけ、今年の夏も延べ60万人が6日間の自宅待機を経験しており、二年間に渡り昇給が止められ、人員整理が進んでいることを憂慮する。今回も自宅待機になれば「民間人従業員がさらに士気を低下することなる」と見る。
  13. ただし今からの自宅待機措置が今夏の待機と違う理由について、ヘイルは今回は予算削減や予算流用のための自宅待機ではなく、勤務を継続できる、できない人員の判別により決定されることを強調。
  14. さらに自宅待機を命じられた職員が待機期間中の給与を受け取る保証はない。1990年代に議会は自宅待機職員への給与支払いを遡及で認める決議をしたが。
  15. 議会が打開策を見つけても、赤字幅の上限を緩和する合意ができ、予算執行がふたたび柔軟にできるようになっても、あるいは予算ではなく支出決議が成立しても、ヘイルは国防総省に勤務する民間人・軍人に明るい未来は保証されていないと見ており、「人員削減や強制的な除隊がこれから数ヶ月のうちに起こるだろう」という。
  16. 国防契約企業は予算が底をつく前に締結済みの契約で作業を継続でき、実際業務を続けるだろう。ヘイルによれば今後は新規契約あるいは契約延長は執行を認められないことになるという。■

2013年9月29日日曜日

日曜日はちょっとのんびりと すごい現代戦シミュレーターゲームのレビューをどうぞ

このブログではじめてゲームを紹介します。中に出てくるHarpoonは絶版のようですが、海軍ゲームのシミュレーターとしてすごいソフトでした。今回の新ソフトはどうでしょうか。

Game Review: ‘Command’ is A Worthy Successor to Harpoon

By: Kyle Mizokami                    
US Naval Institute, Tuesday, September 24, 2013                                                 
Command: Modern Air/Naval Operations


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PCゲームソフトで知的な訓練に使えそうなものは本当に少ない。ゲームではともすれば現実を大幅に誇張するか完全なファンタジーの世界にこもりがちだ。ここにその例外となるソフトが現れた。“Command: Modern Air/Naval Operations” (「コマンド」)であり、「硬派」なシミュレーションソフトとして近代の海空戦のすべての局面を忠実に再現するものだ。かつてのHarpoon(「ハープーン」)シリーズの後継者になる可能性が十分あり、コマンドはゲーム愛好家のみならず軍、政府、研究者にも現代戦のシミュレータとして十分通用する内容だ。


「コマンド」は海空戦の様相を1950年から2016年の範囲で再現するもので、登場する艦船、潜水艦、航空機、兵装は実際のものをモデルとしている。再現しているのは対潜作戦、タイ水上艦作戦、対空戦、機雷戦(空中投下含む)、電子戦、海賊取り締まり作戦、警戒行動、強襲作戦、核兵器、衛星、無人機と近代戦の全容をカバーしている。


また、艦対艦交戦から戦略核兵器による応酬まで範囲が広い。艦船航空機は個別でも集団でも操作可能で、部隊数も数千まで広がる。(ただしゲームに使うコンピュータの性能に依存) シナリオでは24時間から36時間の範囲でリアルタイムで操作可能だ。一時中断や時間を早くすることも可能。各部隊が配置につくまでは加速させておいてから、索敵してからリアルタイムに切り替えることができる。


ゲーム内の地図はグーグルマップのような三次元表示で、地図データはスペースシャトルがレーダー観測した立体地形データShuttle Radar Topography Missionを利用している。最大ズームでは地球全体が俯瞰でき、最小レベルでは数百メートル単位で表示する。この切替で地域紛争や長距離ご創作戦、核戦争のように同時に複数の地点で発生する想定のシナリオが有効に使える。また、港湾、空軍基地、戦略目標をk別に表示して、実存する地下司令部、精製工場などを目標に設定することができる。


「コマンド」のすごいところは艦船、航空機、ミサイルその他兵装のデータベースが充実しているところで、これが全部再現されている。データベースがどこまで充実しているかというと、ファイヤスカウト、ズムワルト級駆逐艦、中国の空母「遼寧」までが入っていることでわかる。このデータベースはプレイ中にいつでも参照でき、電子支援手段により接触した敵の正体をデータベースが教えてくれる。
 


ゲームではシナリオ数本が入っており、朝鮮半島での軍事衝突、NATO対ワルシャワ条約軍の北海での衝突、1982年のフォークランド紛争からもっと現代的な南シナ海での軍事緊張まで様々だ。各シナリオはプレイ時間も複雑度も異なり、プレイヤー自身がシナリオを自由に作ることも可能。そのためシナリオビルダーが付属しており、データベース参照しマップ上で確認できる。この機能を使ってすでにシナリオを公開する動きがゲーム愛好家の中で始まっている。


その中でエアシーバトルの再現が可能だろう。アメリカ軍と同盟国側の防衛網を韓国、日本、グアムで再現し、さらに太平、の小島や空軍基地、海軍基地、ペイトリオットミサイル迎撃部隊に至るまで再現できる。同様に中国沿海部の防衛体制も再現できる。これで中国との戦闘状態を想定し、実際にそれが発生した場合をシミュレートできる。



これ以外に非正規戦や特殊作戦を再現できる。海賊や地上ではテロリストから地上の建物、車両までシミュレートできるのだ。また、地上部隊の動きや空中降下による部隊移動、ボートやSEAL用の車両・ヘリコプターを利用できる。ただし地上戦のシミュレーションは限定付きで中心はあくまでも海空戦の再現だ。また核兵器は戦術級、戦略級双方が利用できる。たとえば核爆雷、核対潜ロケット、またオハイオ級原潜によるトライデントD-5発射をシミュレートできる。


兵站活動や物資補給も再現しており、弾薬では個別の砲、ミサイル発射まで見る事ができる。空中給油機も利用でき、艦船には海上補給もできる他、空軍基地や空母は航空機作戦を支援するのは現実どおりで、発進から回収、再補給、燃料補給以外に機体掩体壕まで再現する。


ゲームをプレイすると急速に学習することが可能だが、一度内容がわかればプレイヤーは大部隊をうまく利用することができるようになる。チュートリアルシナリオが三本付属しており、それぞれ水上戦、潜水艦作戦、空中作戦で基本を学ぶことんができる。例えば水上戦ではアーレー・バーク級駆逐艦が対艦ミサイル防衛手段を展開し、 Mk-45 127mm 砲を発射し、トマホーク巡航ミサイルを敵の弾薬庫に向けて発射し、ロメオ級潜水艦をSH-60シーホーク・ヘリで攻撃し、ナヌチカ級ミサイル海防艦にハープーンミサイルで対抗する、という具合だ。




「コマンド」はウィンドウズの他のゲームよりも玄人向けの内容だ。ゲーム操作画面では目を引き付ける新奇性はなく、インターフェイスも洗練されているとはいいがたい。しかし、その反面、現代戦を詳細に再現している点では他に例がない。ゲームをプレイすれば画面が格好よくないなど気にならなくなるはずだ。


「コマンド」は娯楽用途以外に訓練用に、さらに新しい作戦構想の有益性を検証することにも使えるソフトだ。充実したデータベースとマップを利用してどんなシナリオでも再現できる。


「コマンド」はゲーマーから政府関係者まで広い範囲で受け入れられ、政府では今後の非公開作戦内容も検証することに使うかもしれない。近代戦シミュレーションでは決定版になる可能性がある。「コマンド」はウィンドウズ向けに9月24日発売開始予定。


コメント どうですか。プレイしたくなりましたか。まだアマゾンでは販売していないようですが、発行元からダウンロードできるようです。注記 Harpoonはお試し版を US Naval Instituteからダウンロードできるようです。



2013年9月27日金曜日

F-35第六、第七ロット生産契約まもなく妥結か 日本向け機体生産日程含む

F-35の次回生産ロット別契約についてエイビエーションウィークが以下速報で伝えています。

Pentagon Aims To Finalize Lockheed F-35 Contract Within Days

By Reuters
aviationweek.com September 26, 2013
Credit: SSgt Nicholas Egebrecht/U.S. Air Force
ペンタゴンはF-35生産の第六、第七バッチの契約を数日以内にロッキードと締結する見込み、と総額3,920億ドルの同機計画を扱う副主任が明らかにした。
  1. ランディ・マー海軍少将 Rear Admiral Randy Mahr はF-35でナンバー2の高官で二つだけ問題が未解決だが解決は近日中とした。ただし未解決問題が何かは明らかにしていない。
  2. 同少将は今回は計71機生産合意形成は前回より短期間で形成できたとしつつ、ペンタゴンの希望よりは時間がかかったという。
  3. ロッキードとペンタゴンは7月30日に基本合意ができたと発表しているが、詳細は一ヶ月以内に詰めるとしていた。
  4. 合意内容では第六バッチで36機を生産し、各機の価格は前回のロットより4%下がるとし、第七バッチでは35機とし、ここでも4%の価格低下となるとしている。
  5. 両方で総額70億ドルになると業界筋は見ている。
  6. ロッキードとペンタゴンは第八バッチの基本合意に来年早々までに到達したいと希望している。
  7. ロッキードのスポークスマンは第八バッチは45機生産となる見込みと発言。うち16機は英国、イタリア、ノルウェー、日本、イスラエル向けだという。■

防衛装備の海外販売に熱を入れるペンタゴンの狙いは国内産業基盤維持および調達費用高騰の防止にある

Pentagon Pushes More Foreign Sales Of U.S. Goods

By Michael Bruno
Source: Aviation Week & Space Technology
aviationweek.com September 16, 2013
Credit: NIDS/NATO Media Library

アメリカ経営学の第一人者ピーター・ドラッカーは「ビジネスの本質は顧客を獲得し、維持すること」と表現した。国防総省はその言葉を真剣に受け止めているようだ。
  1. 強制予算執行削減はこのまま続きそうな観測で、国防関係者は輸出を前例のない水準まで引き上げようとしている。時間がかかる海外軍事販売 (FMS)では我慢できなくなり、海外バイヤーを米国製武器装備の販売に直接巻き込む傾向が強くなってきた。.
  2. 「近代装備は一層高価格になっており、長期間にわたる開発の負担が大変だ。これは米国以外でも同じ」と国防安全保障協力庁 Defense Security Cooperation Agency (DSCA)副長官リチャード・ジェネイルRichard Genaille, Jrが発言。いわんとしているのは開発調達コストを多くの海外諸国に負担させることだ。
  3. その好例が9カ国が参加する共用打撃戦闘機(JSF)でハイエンド装備は概して調達数が小規模になる、とジェネイルは発言。一方で、世界各地の開発途上国・新興国ではローエンド技術が訴求力を有している。
  4. そこでDSCAの対策のひとつに複数国向けにLOA要望承諾書を一括発行することで、従来は各国別にLOAを提示してきた。「多国向けLOAがあれば、同時に複数国が署名し、特定の製品を共同購入が可能となり、従来の二国間ベースより安価かつ容易に導入する道が開ける」(ジェネイル)
  5. JSFより成功している事例にNATOの戦略空輸能力手段調達計画でボーイングC-17グローブマスターIIIが計3機導入された件がある。各機はハンガリーのパパ空軍基地Papa AB に駐留し、10カ国が共同運航している。加盟国のアフガニスタン撤退時はこの制度を有効に活用した。.
  6. ハイディ・グラント空軍副次官(国際担当) Heidi Grant, deputy undersecretary of the Air Force によると空軍は空中給油分野で国際コンソーシアム体制の構築を目指し、NATOC-17の例を参考にしたいという。一方で空軍はFMSの対象となる可能性がある各国で導入希望が高い共通した15種類の兵器・システムを抽出しており、今後はその販売実現を重点的に進めることにし、従来のFMSを最初から案件成立していくプロセスを取りやめる。
  7. DSCAはFMS総額4,000億ドル相当の各種案件の成約を期待し、年間平均410億ドルの取引規模になる。「毎年410億ドルの新規案件で生まれる資金流入は国内の産業基盤を維持し、わが国自身の国防調達コストを下げることにつながる」(ジェネイル)
  8. オバマ政権が打ち出した輸出拡大策は国防総省による海外販売が頼りで、FMSでの販売が成立しないと国内の技術職技能職の数百万人分が雇用不安になるとジェネイルは試算し、逆に米国向けの調達価格が2割から3割値上がりするという。
  9. 一方で米国はすでに通常型戦争を行う能力を喪失したと危惧する向きもある。「武器調達・支援費用に軍の人件費も加えるとインフレーション率を上回る上昇をしており、当面この傾向がおさまりそうもない」と見るアナリストもいる。
  10. F-35、V-22やオハイオミサイル原潜の後継艦のような新型兵器は高性能だがインフレ率を加算してみると前の世代の兵器より高価になる。敵側の攻撃手段は防衛対象装備の数分の一の価格だと同アナリストは指摘し、「米国の国防産業企業の売り上げよりも少ないGDPの国が発射した」無誘導の初歩的なミサイルや中国のDF-21D対艦弾道ミサイルから防衛するために巨額の費用がかかる。■

2013年9月26日木曜日

韓国F-X選定をひっくり返したのは韓国空軍なのか、それとも?

South Korean AF Derails F-X Phase 3 Choice Of F-15

By Bradley Perrett perrett@aviationweek.com, Amy Butler abutler@aviationweek.com
Source: AWIN First
aviatinweek.com September 24, 2013
Credit: Boeing

韓国空軍が同国F-Xフェイズ3 戦闘機選定でボーイングF-15SEにいったん決まった選定結果を覆すことに成功した。
  1. この結果ボーイングはF-15生産を2018年を過ぎても維持するという目論見の実現がなくなるだろう。韓国からの発注で同機の戦闘有効性は高まるはずで、その後の海外販売に弾みをつけるというのが同社の希望だった。
  2. 韓国国防調達計画執行委員会がF-Xフェイズ3の仕切り直しを決定したもので、8月にはF-15が総額8.3兆ウォン(77億ドル)で60機調達されることに決まっており、その時点での敗者はF-35とユーロファイター・タイフーンで後者は入札過程での違反が理由だった。今後一年以内に機種選定競合を再開する。
  3. 韓国空軍は一貫してF-35選定を希望しており、特に日本が同機を選んでからその勢いをまし、F-15に決まってからも同機の弱点をあげつらっていた。空軍将校がF-15選定で次期戦闘機計画が「間違った方向へ進んでおり、当初の狙いから外れている」と発言したと同国メディアが報じている。おそらく正しい方向とはF-35を指しているのだろう。
  4. もし韓国がF-35を結局選ぶのであれば、共同開発国以外の導入は三番目となり、日本に続いて同機のコスト、開発難航など問題あることを棚上げしての導入になるだろう。
  5. ただ韓国で困るのはこれが過去11年で二回目の選定の取り消しである点で、戦闘機に求める性能水準はあらかじめ決まっていたようだ、つまり入札側は営業費用を無駄に使って実は競争ではない競争に付き合っていたことになる。ボーイングがF-15Kでフェイズ1の受注に成功したのが2002年のことで、当時ダッソーは今後の韓国戦闘機選定には参加しないと表明。同社は提案内容に自信があったが、最初から採択の可能性がなかったのだ。
  6. フェイズの調達規模は20機で韓国国防調達計画庁の求めるF-15代替機調達をまともに受け止める競合メーカーは皆無で、ボーイングが単独で入札している。
  7. これに対し韓国国防省はF-15選定取り消しの理由は一部は北朝鮮核兵器の胸囲であり「非対称兵器」であるとする。ただ韓国政府関係者からは朝鮮半島の脅威状況は要求内容で大きな要素ではないと発言。さらに北朝鮮の脅威は昨日今日はじまったものではない。
  8. 同省は航空工学の進展が早くなっていることも理由に上げる。中国のJ-20ステルス機が試作機として出現したことが韓国の近隣では大きな技術的な進展だ。ただこれも二年前のことであり、その時点で国防省はF-Xフェイズ3の中止を求めていなかった。
  9. .国防省スポークスマンは「韓国が第五世代機を必要とし、北朝鮮の増大する脅威に対処する必要性は国民の総意」と発表。これに当てはまる機種はF-35しかない。
  10. .もうひとつ韓国にとって頭が痛いのはフェイズ3機種で更新しようとしているF-4ファントムとF-5タイガーがともに戦闘用航空機としての価値が残っていないことだが、新機種の導入は2017年から2021年の間になる予想だ。
  11. ボーイングからは「今回の韓国国防調達計画管理委員会の決定に深く失望」との声明が出ており、「当社は国防調達計画当局の指示内容を厳格に順守してきた。当局からの詳細通知を待つ」
  12. .これに対しロッキード・マーティンから選定過程でj引き続き米政府をを支持する、と声明を発表。F-35は海外軍事販売制度を通じて販売される予定だ。
  13. 今回の競合を通じEADSおよび子会社ユーロファイターは結局米国製戦闘機の当て馬に使われたのかと不審に思っている。だが駐留米軍により同国の安全が守られていることもあり、韓国は米国調達を選ぶ外交的な圧力を受けているのも事実だ。
  14. そこでユーロファイターおよびボーイングは次回入札に参加するのかが大きな疑問だ。とくに国防省が第五世代機が必要と宣言してしまっている。ボーイングは「考えられるすべての選択肢を」試すだろうと業界筋は見ていて、F-15SEの開発をさらに進めることも検討するだろう。同機はステルス性は限定的だが、高性能エイビオニクス機能があり、F-35に対して価格競争力がある。
  15. ボーイングは現在サウジアラビア向けF15SA84機の生産中で生産完了するのが2018年、最終機の引き渡しは2019年になるという。

オリジナルコメントのご紹介


  • 少し訂正したい。韓国空軍はF-15SE案に賛成している。反対したのは委員会の半分の席を占める民間委員だ。民間委員は当初は監視役として過去の汚職発生事例の再発が目的だったが、情報が限られる民間委員がロッキード・マーティンの宣伝攻勢に踊らされ、決定を取り消したのだ。
  • 今度は驚いた韓国空軍がジェット機編成をどうやって維持するかを真剣に考える番だ。F-X IIIが中止となれば次のF-X IVは別の予算で別の技術諸元での選択となり、早くてもこれから5年後のことになるからだ。
  • ボーイングは今回の結果を生んだのは同社の広告宣伝が実際には存在しないも同様だったためで委員会には情報を提供できなかったためだともする。そこで次回は「大衆教育」を大々的に行い、自社モデルと輸出版F-35の対比で訴えるとしており、明らかにボーイングは次回も競合に参加する意向だ。ボーイングはロッキード・マーティンのネガティブキャンペーンにより同社の提案内容を大衆が理解しなくなったと非難している。
  • 韓国国防調達庁スポークスマンの説明が腑に落ちない。なぜなら同庁と韓国空軍はサイレントイーグルを擁護し、民間委員による執拗な非難から2.5時間も非公開審議に持ち込んだものの、結局素人の民間委員の決心を変えられず、このひどい体たらくを国民に発表しているからだ。.
  • このためボーイングは今回は訴訟でなく大衆教育を次回の最優先事項に選んでいる。これは同社が国防調達計画庁と韓国空軍には今回の結果の責任がないとわかってるからであり、ロッキードの汚い手法に対し、あまりにも紳士として振舞っていたことをボーイングは反省し、次回波高は行かないぞと見ている。

2013年9月25日水曜日

米空軍でこれから一括削減される機種、これから開発が期待される機種はどれか

USAF Eyes T-X, New JStars Projects

By Amy Butler
Source: Aviation Week & Space Technology
aviationweek.com September 23, 2013

米空軍の三大次期機種調達F-35、KC-46給油機そして長距離爆撃機以外の機体に将来はあるのだろうか。
  1. ここ数ヶ月にわたり米空軍から発信されるメッセージが厳しく統制されている。上記三機種は推進し、残りは削減対象にするか、あるいは新開発機種であれば無期限の延期にするか。だが、空軍参謀総長マーク・ウェルシュ大将が自ら優先順位案を示している。強制予算削減で実際に支出策が大幅に削減されるが、案はその先を見越したもの。
  2. トップ3以外にウェルシュ参謀総長は老朽化してきたE-8C地上監視任務機およびT-38高速ジェット練習機の後継機種開発を希望。業界側はすでに両機種更新を見越して準備態勢を整えようとしている。しかし、まず議会が予算計上の可否を握っていることを参謀総長も承知の上だ。
  3. そこで空軍は「ハイ」と「ロー」の予算案二種類を準備していく。後者が最悪シナリオ想定で強制削減の影響を最大限に予想し、2015年まで続くとするもの。前者は新機種開発が数件認められる前提だ。
  4. E-8Cジョイントスターズは旧式ボーイング707旅客機の機体を活用しており、中古機を90年代00年代に改装したもの。そのため機体寿命は限定され、維持費用が高い。地上部隊からは監視能力の向上を求める声が強く、移動車両に加え徒歩で移動する兵員までの監視能力が必要だとし、同機の性能が追いついていないとの批判がある。そこで空軍は代替手段検討でビジネスジェット機に新型装備を搭載して速度と運用コストを両方満足させる案が浮上。アクティブ電子スキャンアレイ方式レーダーで技術が進んできたことから多機能探知追跡機能を同時に複数目標を対象に実施できるめどがついてきた。
  5. E-8Cと同様にE-3空中早期警戒管制機およびRC-135リヴェットジョイント情報収集専用機の機能を同じビジネスジェットに盛り込むことを最終目標とするプロジェクトに空軍が着手している。
  6. 業界ではT-Xで現行350機のT-38 後継機の採択に備える動きがあるが、米空軍は次期練習機の配備を2023年に先送りしている。BAEシステムズ/ノースロップ・グラマンはホークT2を、ジェネラルダイナミクス/アレニア・アエルマッキはM346で、ロッキード・マーティン/韓国宇宙航空工業はT-50で一般競争に臨む。ボーイングはサーブと完全な新設計機体の実現を交渉中といわれる。空軍訓練教育センター長エドワード・ライス将軍Gen. Edward Rice, head of the Air Education and Training Centerは現在の予算環境ではT-Xをすぐに実現化できないとし、T-38 そのものがまだ安全に飛行できることを理由に挙げる。
  7. その他米空軍の計画の多くが削減対象になる。空軍は可能な限り「垂直」削減、つまり機種毎の一括共用停止を求めており、この方が節約効果が高いのが理由だという。この垂直削減により特定機種のコスト以外に訓練、部品供給全体の削減効果も見込める。
  8. その垂直削減の有力な候補がA-10全機とMC-12Wプロジェクトリバティー各機だ。両機種はすきま任務に従事している。「予算問題さえなければ維持しておきたい性能なのだが、維持しておきたい機種が他にあるのでMC-12を犠牲にする」と空軍戦闘軍団司令官マイク・ホステージ将軍Gen. Mike Hostageは語る。L-3コミュニケーションズ製のMC-12Wは2009年に配備されたばかりで、イラク、アフガニスタンでの情報収集機需要に迅速にこたえたものだ。
  9. これとは対照的にA-10はその精密な近接航空支援(CAS)能力を陸軍から賞賛されている。空軍は以前も同機を退役させようとしたが、陸軍から議会への働きかけで存続が先送りされてきた経緯がある。ホステージ将軍は目標補足機能ポッドと精密誘導弾薬があればCAS任務は他の機種でも実施できるという。「陸軍は不満だろうが、財政危機であることを理解してくれるだろう」と同将軍は言う。「地上支援ミッションをやめるわけではない、単にその方法を調整しているだけだ」.
  10. これ以外の機種でも部分的な削減対象となっている。ロッキード・マーティンC-130やジェネラルアトミックスMQ-9リーパー無人機がその例で、「プレデター・リーパーは制空権が確保されない環境では無用の存在」とホステージ将軍派言うが、リーパー部隊の適正規模について言及していない。
  11. C-130では余剰機を処分することになりそうだ。一方でJ型の多年度購入契約も提案されている。空軍は現時点で340機のC-130を保有しているが、航空機動軍団司令官ポール・セルヴァ大将Gen. Paul Selva, head of Air Mobility Commandは300機あれば十分だという。
  12. 同大将からはKC-10給油機の早期退役も提案されている。ボーイングKC-46が就役することで退役すべきという。KC-10はKC-135より給油能力が大で、海軍、海兵隊機材にも給油ができる点で唯一の存在だ。一方でKC-135が大部分R型に改装されており、同様のミッションを実施できるようになるのも事実だ。
  13. 給油機の必要機数は479なので、KC-46の第一期分18機の編入が2017年に実現する時点でKC-10全機を退役させることが可能だろう。
  14. さらに削減対象にはC-5A部隊があり、同型は信頼性でC-5Mより相当低くなっている。M型はエンジンを換装し、信頼性が高くなった。議会は国内空軍基地の閉鎖を恐れ同機の退役を差し止めた経緯がある。
  15. 予算検討会の最終答申案は来年早々に議会に提出される。

2013年9月23日月曜日

テキストロンが製作中のスコーピオンは既成概念を破る機体になる予感

Textron Unveils Scorpion Light Attack, Recce Jet

By Amy Butler
Source: Aviation Week & Space Technology
 
aviationweek.com September 16, 2013
Credit: Textron

ペンタゴンに対して民間会社から国防総省が要求していない性能をまったくの新規機体として提案するのは相当の勇気が必要だろう。ましてや国防予算そのものが大幅な削減を受けつつある中では。
  1. だがこれこそ新しく生まれた共同事業体としてテキストロンと新興企業エアランドエンタープライジスAirLand Enterprisesが行おうとしていることなのだ。テキストロンはセスナビジネス機で知られる企業であり、ベルヘリコプター事業も長年にわたる回転翼機の経験がある。そして提携先エアランドは投資家数名によりできた企業で退役国防関係者も巻き込み軽量攻撃機の新しいコンセプトを実現するべく発足した。
  2. 予算状況が厳しい中で同事業体は新しい機材、複座双発のスコーピオン構想の有効性を示す必要がある。自己資金による同機は9月16日の空軍協会年次総会で発表され、このたびAviation Weekは関係者から詳しい内容を独自に知らされた。
  3. スコーピオン実証機は米空軍が求める低価格低運行コスト機材の要望に応えるもので5時間にわたり情報収集監視偵察(ISR)任務や兵装を搭載しつつ飛行して、空軍が想定するローエンド任務(米国からの阻止行動、自然災害への緊急対応、領空パトロール)に対応する。目標は飛行時間あたり運航コストを3,000ドル以下に抑えることだ。ただし同社は機体価格の目標水準は明らかにしていない。ペンタゴンからは類似ミッションの多くをこなすF-16の時間当たり運用コストは24,899ドルと公表している。
  4. アフガニスタンとイラクではF-15、F-16、A-10]が引き続き近接航空支援に投入されており、まったく制空権で心配のない環境で作戦が実施中だ。これでは過剰投入との声が出ている。また各機の高速度飛行性能、高G機動操縦性もこれらの戦場では使い道がなく、単に爆弾を投下するか地上部隊に上空監視を提供するだけだ。
  5. 「軍はハイエンドに関心を集中させています」とF-35調達で既存機種の多くを代替させようとする米空軍の動向を表現するのがテキストロンCEOスコット・ドネリー Scott Donnelly は語り、「だから需要があるのであり、国防総省の予算がこれから削減されることがわかっており、だからこそ今がチャンスなのです」
  6. スコーピオンの運用コストがそのとおりとするとペンタゴンは一年で燃料費だけで10億ドルの節約になる、と元空軍長官のF・ホイッテン・ピータースF. Whitten Petersはじめとする退役軍関係者は試算しており、彼らがエアランドを創設し、スコーピオン構想を数年前に提唱したのだ。テキストロンと提携を2012年に結んで勢いが増してきた。
  7. テキストロンにとって今回の提携は想定外の案件であった。同社は戦闘用の固定翼機を製造した事例がない。傘下のベルヘリコプターはH-1およびV-22ファミリーで軍用機を生産し、テキストロンシステムズは軍用車両や無人機製造でペンタゴンと密接な関係にある。だがテキストロンは米空軍の契約実績トップ企業には入っていない。だがエアランドの退役将官から空軍に本案件の紹介があり、相当の営業活動があったらしい。.
  8. ピーターズの空軍長官在任時にハイローミックスとして双発F-22と単発F-35の組み合わせが構想された。両機種ともロッキード・マーティンが契約会社で両機種ともに技術問題と遅延で価格が大幅に上昇している。その結果、空軍の調達機数はF-22が187機となり、F-35は今のところ1,763機になりそうだ。同時に両機種ともに低視認性性能を持つことで運用コストは高くなる。
  9. クリストファー・ボグデン空軍中将(F-35計画主査) Air Force Lt. Gen. Christopher Bogdan, F-35 program executive officer によればF-35Aの機体単価は生産がピークに入れば80ないし90百万ドルになるというが現時点での単価は124百万ドルで、ここにエンジンおよびテストで判明した必要な供用後改修の費用を含む。
  10. そこでスコーピオンは空軍で大部分を占める上空監視ミッションを担うローエンド機材となる。そしてはるかに経済的にそのミッションを実施できるとピータースは語る。
  11. ただし空軍からはそのような機材が必要との声は出ていない。調達は通常は長い工程を経て、提案競争により決定される。これに対しテキストロンはジェネラルアトミックスの例を期待するだろう。同社のプレデター、リーパーは空軍の要求を待たずに納入することができた。その理由として議会の一枚岩の支援があったからだ。
  12. スコーピオンはタンデム構成の複座機だがパイロット単独でも運用可能だ。設計では 3,000 lb.の兵装あるいは情報収集機材を機内搭載するほか、ハードポイント6箇所を準備する。エンジンはハネウェルTF731双発で十分な推力のほかISR機材の冷却に必要な出力も得る。
  13. コックピットにはコバム Cobham を選定し、フラットパネルディスプレイを多用する。スコーピオンはフライバイワイヤ機構を選択せず、コストを下げ、構造を簡略化している。同機の無人機版が将来実現する可能性があるとドネリーは認めている。
  14. エアランドは複合材料性機体で経験のあるものをビジネスジェット機分野やF-22から集め、機体を設計した。機体製造はテキストロンのウィチタ工場で行われ、今後の国際市場での需要規模を考えると複合材料の採用で機体寿命は相当の長さになると見られ、太平洋諸国や中東市場で苛酷環境に耐えるものとして注目をあびるだろうとドネリーは見ている。
  15. 両社は空軍が購入を決めるまで座って待つつもりはなく、海外向けに営業を開始する構えだ。ただしドネリーは空軍による調達決定は海外販売の可能性を引き上げる可能性があると認めている。
  16. またスコーピオンで両社は当初の目標ミッションである軽攻撃,高速ISRがすきま需要であることで営業に拍車をかけるだろう。現状は双発ターボプロップ機としてMC-12プロジェクトリバティがこなしているミッション、T-38後継機、ハイエンドステルス戦闘機のすき間になるという認識だ。
  17. 同盟各国でターボプロップ武装攻撃機を導入する動きがあり、ペンタゴンはエンブラエルA-29スーパートゥカーノをアフガニスタン作戦用に調達する。また練習機を軽攻撃ミッションに転用する傾向も各国で見られる。
  18. これに対しスコーピオンは双発ターボプロップ各機より速度ですぐれ、練習機より機構が簡略化される。練習機はF-22やF-35パイロット養成用に高G対応の設計となるからだ。またプレデター、リーパーといったUAVを国境監視用に使用しようとする国が今後出てくるが、国内航空交通領域の大部分で無人機は締め出されテイルのが現状だ。
  19. スコーピオンの機体組立は最終段階に入っており、初飛行は今年末までに実施が予定されている。■