South Korean Fighter Order: AF Backs F-35
By Bradley Perrett, Bill Sweetman, Amy Butler
Source: Aviation Week & Space Technology
aviationweek,com August 26, 2013
Credit: Boeing
ボーイングF-15SEサイレントイーグルが韓国F-Xフェーズ3で唯一の選択肢に残っており、60機導入が想定される中、韓国空軍はこの選択を快く思わず、ロッキード・マーティンF-35共用打撃戦闘機導入を実現しようとロビー活動をくりひろげている。.
- 韓国が採用すればF-15生産ラインは2020年代も維持可能となり、競争力のある機体を立ち上げることができる。ただし、これは韓国の国防調達プログラム庁 Defense Acquisition Program Agency (DAPA) の決定待ちであり、同庁はF-35は高価すぎる、ユーロファイタータイフーンは入札参加で想定外の事態ありとしていた。EADSは同庁に異議が申し立中。
- 政府横断型の特別委員会を国防相が主催し、DAPAの決定内容を来月裁定する。同委員会には軍代表に加え、国会の国防部会委員、財務省、DAPAに加え、国防開発庁からも参加。同庁はKF-Xとしてステルス戦闘機の国産開発を求めているところ。
- 財務省は政的に無理がないのでDAPA決定支持に回ると見られるが、空軍はF-35支持を鮮明にしている。
- 「空軍の一部にF-Xフェイズ3が本来の目標から誤った方向に向かいつつあると批判する向きがある」と聯合通信社Yonhapが8月20日、DAPA決定を報道する際に伝えている。「本来の目標」とは明らかにF-35発注のことで、それを支持する空軍関係者の姿勢は他の二機種も一応参加させるがあくまでも競争入札のためだとするものだという。
- これはデリケートな問題で、F-Xフェイズ1ではF-15が2002年に採用となったが、ダッソーは最初から採用の可能性がないと見て参加は時間の無駄と早々と結論付けている。同社は韓国では事業が展開できないと判断し、将来の競合にも参加の意思なしとした。そのとおりにF-Xフェイズ2でもF-15が採択となり、同社は参加せず、今回のフェイズ3でも同様だった。
- DAPAによるとF-Xフェイズ3ではEADSが資格外とされた模様。その理由は同社が価格を下げるべく同意済みの条件を一方的に変更してきたためだという。単座型45機・複座型15機を単座型54機と複座型6機に変更してしまったとするもの。EADSによればそもそもそんな合意はなかったという。”
- ロッキード・マーティンも選にもれているが、提示額が予算の8.3兆ウォン(74億ドル)を超過したため。ただ同社はまだ断念していない。
- 仮に韓国政府がDAPA決定をひっくりかえすと、再入札となる可能性がある。ただし、F-Xフェイズ3で代替しようとする機種はF-4ファントムとF-5タイガーでありそれぞれ部品供給が厳しくなり、機体寿命も終わりに近づいている。
- F-15SEは韓国発注が実現しないと生産に入らない。サウジアラビア向けF-15SAとの違いはレーダー断面積の削減にとどまらず一体型兵装庫の実現が一番大きい。これはF-15のこれまでの一体型燃料タンク(CFT)に代わるものでAIM-120空対空ミサイル4発あるいはAIM-1202発と1,000ポンド爆弾2発を格納するもの。
- そもそもボーイング案は有利だった。韓国で供用中の機体であり、価格では一番有利で、これがかぎとなる。DAPAは韓国国会から予算水準を越えた提案の採択は禁じられている。
- ロッキード・マーティンはF-35が高価格であるだけでなく米政府の海外軍事装備品販売foreign military sales (FMS) を経由しないと同機を提示できないというハンデもある。FMSでは米軍向け価格を下回る販売は禁じている。ボーイングはF-15SEを直接販売の対象とし、武装および一部装備品をFMS経由とした。
- もうひとつの利点は韓国航空宇宙工業がすでにF-15の主要部品メーカーになっている点で、ボーイングにすればDAPAのローカルコンテント要求水準を楽に満たすことができる。
- 三機種の中ではF-15が兵装搭載量、飛行距離性能で一番であり、タイフーンには米国による安全保障を受ける韓国では政治的ハンディが強かった。
- あるいは韓国政府がDAPA決定をそのまま尊重した場合、荒唐無稽と見られていたボーイングの戦略が有効だったことになる。サイレントイーグル構想が発表になったのは2009年3月のことで、その時点でF-35Aは米空軍で2013年までに作戦運用可能になっているはずで機体単価70から75百万ドルの想定だった。そのとおりならF-35は手ごわい競争相手になっていたはずだった。
- 現時点でF-35Aの米空軍での実戦化予定は2016年末以降で、2020年引渡し機体価格は96百万ドル。これに対しボーイングでは2012年のサウジアラビア向けF-15SA受注で生産ラインが再稼動し、F-15SEにも採用の新機軸実現の資金も入ってきたので相対的競争力は増えた。すなわち全デジタル方式の飛行制御システム、BAEシステムのデジタル戦システムDigital Electronic Warfare System (DEWS)、および再設計のコックピットに薄型ディスプレイを搭載したが、これらすべてを実現し開発リスクも下げられたのだ。
- サウジ事例ではF-15Sを現地でSAに改装するのも商談の一部であったので、韓国の場合もF-15Kで同じようなアップグレードも想定される。ただし、これは韓国の評価基準には含まれていない。
- ボーイングの戦闘機販売戦略は2009年から進化をとげ、特にF-15とF/A-18E/Fの調整がきめ細かくなった。F-15SAおよびSEのコックピットディスプレイはほぼ同じガラス素材、処理装置、、ソフトウェアを共用している。またボーイングはF/A-18向けに開発した技術を利用できるようにしており、パッシブ式目標捕捉システムがその例だ。F-15Kでは米海軍のスーパーホーネット用に開発中の赤外線探知追跡システムを搭載済みだ。
- サウジ向けF-15SAでは新型フライバイワイヤシステム、DEWSを飛行テスト中。新型一体型兵倉庫の開発は予定通り進行中だ。その他サブシステムでも性能要求水準の検討が完了ずみで設計変更の作業中。レーダー断面積の削減策もテスト継続中だ。
- サウジアラビア向けの新造機の引渡しは2015年にならないと実現しないが、F-15SのSA仕様への改修70機分の作業ははじまっている。サウジ向けの需要を満足するためには月産1機ペースで十分であるが、韓国向けには4年で60機という規模のため、月産数を倍増する必要が生じよう。韓国向けF-15Kおよびシンガポール向けF-15SGの引渡しは2012年で完了している。
- F-15Kでは機械式スキャンレーダーだったが、F-15SGではレイセオン製のアクティブ電子スキャン式アレイ (AESA) のAPG-63(v)3レーダーになっている。基本同じタイプがF-15SEに搭載される。ボーイングによればDAPAに対してもうひとつの選択肢としてレイセオンAPG-82があることは連絡済だという。これは米空軍がF-15Eに採用済みで2014年から第一線配備になる。APG-63(v)3ではF/A-18E/FのAPG-79と同様のアレイを採用しているが、APG-79と同じ処理装置他を使っており、このようにボーイングがF-15とF/A-18で共通化を提言している。.
- F-15SE採用が正式決定となった場合もF-35への影響は多分に心理的なものになるだろう。すでにF-35は日本での受注に成功しており、シンガポールでも競合相手がない状態で商談が成立しそうだ。オーストラリア、カナダ、ヨーロッパでの受注が確定すれば同機の戦略的な重要性がさらに増すことになろう。■
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