何 かと日本への対抗心が強いおとなりの韓国ですがいよいよF-X第三段階の選定が大詰めになって来ました。F-35Aが最右翼なのでしょう。しかし、日本に この地域で唯一設置されることになっている同機の保守点検施設の利用は最初から排除するだけでなく、選定にあたっての潜在敵国の一番が日本と想定している ようで、日本の国防観との温度差は想像以上のようですね。どうして同じ価値観を共有すべき隣国が仮想的国になってしまうのか理解に苦しむところです。
South Korea Nears F-X Phase 3 Decision
By Bradley Perrett
Source: Aviation Week & Space Technology
aviationweek.com June 03, 2013
Credit: Lockheed Martin
Bradley Perrett Seoul
韓国F-Xフェイズ3の選定決定をいよいよ今月に控える中、要求水準が北朝鮮対応だけを想定していると考えたら間違いと韓国政府関係者は語り、60機もの高
性能戦闘機導入の決め手は戦略的な優位性の日本、中国、ロシアに対する確保だとする。同国は脅威をこの順番で意識しているらしい。
- 「近 隣国が戦闘機性能を向上させる中、わが国も追随する必要があります」と政府関係者その1は語る。二番目の関係者はさらに詳しく説明する。10年前にF-X フェイズ1および2で導入したボーイングF-15K合計60 機で北朝鮮への攻撃能力は十分な水準だという。フェイズ3の真の狙いは日本がロッキード・マーティンF-35Aを導入し、中国がJ-20を開発、ロシアも スホイT-50(PAK-FA)を開発中への対抗とする。フェイズ1および2でさえ北朝鮮は問題の一部と想定されていたにすぎないという。
- これこそ韓国の国防調達計画庁Defense Acquisition Program Agencyが空中戦と攻撃ミッションに等しい重要性をF-Xフェイズ3に与える理由だが、北朝鮮戦闘機部隊の撃滅は難題ではない。
- 今 年に入り北朝鮮が繰り返す挑発姿勢がフェイズ3の優先順位を変えたか不明だが、北朝鮮が米国製候補F-35AおよびF-15SEに優位に働いたのは明らか でユーロファイター・タイフーンは劣勢が隠せない。そのポイントは韓国防衛での米国の寄与度への見返りに米国製装備導入を大規模に行うことであり、米国製 二機種に選択が絞られる。
- 北朝鮮が好戦的態度に出る前は米国が韓国の大きな支えであることは意識しつつ、一度は例外的に米国製以外の戦闘機を導入してもいいのではとの機運もあった。とくにユーロファイターからは広範囲の技術支援の申し出があった。
- た だしKF-Xの国内生産は絶対条件ではなく、F-Xフェイズ3で技術移転条件を提示した会社が落札しても実際に移転できなかったらどうなるか。これが韓国 関係者が考える機材輸入の落とし穴だ。各社とも技術提供を提示しており、とくにユーロファイターは米国政府による規制対象ではない。さらにユーロファイ ターの株主EADSからはタイフーン導入の場合は20億ドルを投資するとの申し出がある。もしEADSが落札しKF-X計画が頓挫した場合は投資義務も消 滅する。このためKF-X開発支援との約束には疑問符がつく。戦闘機国産化には価格に加え実現不可能として国内の反対も根強い。
- EADS は整備施設と航空宇宙ソフトウェアセンターの設置も提案している。タイフーン国内生産も可能だ。米国側からも航空産業での付随恩恵も提案されている。韓国 航空宇宙産業Korea Aerospace Industries (KAI)はさらに大きな役割を果たす可能性がある。F-35では高度な内容の生産に関与でき、同機の長期間供用を考えるとメリットも大きい。ただし韓国 軍のF-35Aは日本国内の整備施設を使わないと韓国筋が見ていることだ。ロッキード・マーティンの提示内容は日本向けと同等であるべきと韓国は主張す る。「二番目の地位をもはや甘受できない」
- ロッ キードからはこれと別に米空軍のT-X次期練習機提案の一部としてKAIのT-50練習機二機購入のオファーがあった模様。EADSからT-50をスペイ ン向けに20機導入する追加提案が出れば望ましいとの意見もあるがEADSのKF-X向け投資提案にはこの取引の可能性は示されていない。
- タ イフーンは米国製機材より対地攻撃能力で劣るが空対空能力を重視すれば競合性はたかまる。F-15SEやF-35と同様にタイフーンも韓国が重要な要素と 見るLiancourt Rocks上空のパトロール実施が可能だ。韓国と日本が領有権で対立している地点である。このことは北朝鮮以上の潜在脅威を示している。
- 同筋によればタイフーンは英国の第一線機材で完成形であるのに対しF-35Aは開発が未完成の機材であり、F-15SEも相当の技術開発が必要な機材である。F-15Kの技術成熟度がフェイズ1および2の選定の決め手であった。
- F- 15SEとF-35Aでは韓国が想定する打撃ミッション内容で優位性が左右される。北朝鮮との開戦当初では北朝鮮領土奥深くの飛行は可能性が低い。実施す るには全面的なステルス機が必要だ。むしろ優先順位は前線付近の北朝鮮地上軍の攻撃であり、とくにソウルを狙う砲兵隊の殲滅におく。韓国空軍機とくにF- Xで導入する大型戦闘機は前線に繰り返し出撃し誘導爆弾をソウル北方に投下するだろう。
- 推 力と爆弾誘導能力がかぎで、F-15SEが候補機種の中ではもっとも有利だ。F-35Aも対地攻撃能力があるとはいえ、供用開始当初は兵装の外部装着がで きないのが不利だ。敵地奥深く侵攻するのにはF-35Aが適しているが、韓国はドイツ・スウェーデン共同開発のトーラス Taurus空中発射巡航ミサイルを導入しており、国産の地対地巡航ミサイルや弾道ミサイルも配備している。ただしF-35Aでもあえて北朝鮮上空を飛行 させ、攻撃目標を探知させるにはまず防空網を使えなくする必要がある。
- 各 種想定は北朝鮮の脅威度をどこまで認識するかでF-Xフェイズ3は左右される。実は韓国は日本をより憂慮しており、F-35Aが注目される。 Liancourt Rocks付近をパトロール中のF-15SEあるいはタイフーンが航空自衛隊のF-35Aを探知できず逆に撃退されたとの報告が入るのは韓国には受容でき ないだろう。F-15では基本設計の古さもあるが、韓国は同機を2060年まで飛行させる予定。
- F- 35Aの難点は三機種の中で一番高価格だが空軍としては一番ほしい機種であることだ。韓国政府はF-Xフェイズ3に8.3兆ウォン(73億ドル)を予算計 上しているが、実際には10兆ウォンになりそうと関係者は見る。事実、ロッキード・マーティンは108億ドルと見積もっている。F-15SEは価格が一番 下になるのはF-15Kの支援施設を利用できるためだ。そのため同機を稼動期間20年限定で導入するのが合理性を持ってくるが、政府関係者によるとこの案 は検討もされていないという。■
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