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英空軍の給油ミッションを実施する民間会社エアタンカーは欧州の給油機不足解消の切り札になるのか

AirTanker Aims To Solve European Tanker Shortage

By Tony Osborne
aviationweek.com May 06, 2013
Credit: Crown Copyright


英空軍(RAF)の空中給油・輸送機部隊の運用を実施している民間企業エアタンカーAirTankerが英国以外での売り上げ確保の模索を始めた。
  1. 同社が期待をかけるのはヨーロッパで恒常的に給油機が不足しているためで、同社保有のA330-200ヴォイジャー給油輸送機の余剰機材を軍用仕様のまま他国にリースすることを考えている。
  2. 「これまでは委託運用中心だったが、今後は自社で営業をかけていく」と同社CEOフィル・ブルンデルPhil Blundellは語る。「当社機材を最大限活用する方法を検討しています」
  3. 同社はヴォイジャー14機を購入し、RAFの旧式VC-10およびロッキードトライスター給油輸送機と交代させる。平時にはヴォイジャー全機は必要ではない。9機あれば十分である。残りの5機は有事の追加投入機材用として想定される。
  4. そこで予備機材の軍用装備を取り外し、チャーター航空会社にリースすることが可能だが、軍用仕様のまま他国にウェットリースしたほうが営業上は有利と見ている。
  5. 「英国防省には予備機の経費負担がなくなるのが利点です。必要となればいつでも予備機を追加投入できますので、固定費負担を減らしたまま給油能力を確保できます」(ブルンデル)
  6. そのほかの売り上げ策として他国のA330の安全点検補修チェックの実施があり、同社は2014年上半期中にC点検資格を取得する予定。
  7. 英 国防省はヴォイジャー中核機材9機の飛行時間を欧州諸国、NATO加盟国に提供できないか検討中という。この案は欧州防衛庁European Defense Agency (EDA)も賛同しており、RAFヴォイジャーをNATOを通じ提供し、機材利用にはC-130の飛行時間を利用したとみなして支払いが発生する。つま り、A国が給油機をB国に1時間貸し出したとすると、B国はC-130 換算で3飛行時間分の借りができることになる。このように機材を共同利用することで英国には固定費負担が軽減できる効果が生まれると同社は説明する。
  8. 「英 国およびRAFはヴォイジャーで欧州各国の空中給油・輸送のニーズを解決することができるとともに、英国製国防装備の優秀性を示すことができます。EDA が基礎作業をしてくれました。政策上も政治上もこの実施方針は明確になりました。同時にマリではからずも露呈したように空中給油能力の不足がある一方で、 米国がアジアに戦略重点を移す中で当社の事業にははずみがつきます」(ブルンデル)
  9. た だし課題も残る。エアタンカーのヴォイジャー各機はRAFの第一線戦闘機へ空中給油をまだ実施していない。給油作業に必要な英国軍事航空公団 Military Aviation Authority (MAA)の認可を得ていないため、作戦機材の乗員の空中給油訓練が実施できないので、それまではRAFはVC-10・トライスターを引き続き給油任務に 投入することになる。ヴォイジャーからの給油を最初に受ける機材はパナヴィア・トーネードGR4となり、タイフーンがその後に続くものと見られる。ただ し、給油機共有が実現するとしてもNATOのどの機種を給油対象とするのか、どの国が実際に支払いをするのかは未定だ。
  10. RAF のユーロファイター・タイフーンを今年三月にマレーシアの国際航空展示会に派遣した際は、イタリア空軍のKC-767 が二機で支援をしている。イタリア空軍のユーロファイター機がKC-767より給油を受けた実績があるため、この際の給油許可が出ている。VC-10やト ライスターでは機材が予想外の故障を起こしかねないため、派遣部隊の司令官は旧式給油機の使用を好まなかった。
  11. 給油機不足は実際にフランス空軍がマリ介入作戦で経験しており、フランス、イタリア両政府はラファエル、ミラージュ2000両機のKC-767からの給油許可を急いで取得したが、実際は数回のソーティ実施後に下りている。
  12. 他 方エアタンカー社はヴォイジャー各機の防衛装備の拡充に乗り出した。各機には赤外線対抗装置二基が装備されており、アフガン戦域では十分とされてきたが、 脅威内容が変わってきたため三基装着が必要と判断されている。予算31百万ドルでこの改装が行われており、完成すれば英国からアフガニスタンへ直行し、機 材の空輸を支援することができるようになる。
  13. 同社が保有中のヴォイジャーは4機で、うち3機が多用途給油輸送機として製造され、残る一機は旅客機仕様から給油機に改造される。5号機、6号機が今年中に納入される。■

コメント: RAFは空中給油・輸送ミッションそのものを民間委託しようとしているのですね。英国以上に財政が厳しい日本でもこれから防衛業務の民間委託というコンセプトが本当に実現するかもしれませんね。でも、周辺国へ余剰機材を利用させることはできないでしょうね。


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