ご注意 以下の内容には一部こちらも理解できないものが含まれています。また、このまま実施した場合は既存企業にとって不利益な結果が出る可能性があります。
Darpa Works To Speed Design, Simplify Manufacture
aviationweek.com November 05, 2012
米
国防高等研究プロジェクト庁Defense Advanced Research Projects Agency, Darpa
に想像力が不足していると揶揄する向きはいないと思うが、航空宇宙産業の開発製造工程で長年使われている方法を丸ごと考え直すことは、GPS、インター
ネット、ステルスを実現させてきた同庁でもさすがに簡単なことではない。
- 適 応性機体製造計画Adaptive Vehicle Make (AVM) programの呼称でDarpaはモデルに基づく設計、仮想共同エンジニアリング、一環生産方式を組み合わせて全体を俯瞰する工程ととらえ開発所要期 間、設計・製造テスト・再設計の時間サイクルで短縮化を追及している。
- 「軍 装備品の調達方法は持続可能な形になっていないといっても過言ではないでしょう」と語るのはネイサン・ウィデンマン中佐(Darpa AVM計画主査)Lt. Col. Nathan Wiedenman, Darpa AVM program managerだ。「これまでのようにたくさん出費してそれに似合わない結果しか手に入らないやり方では継続できません」
- 中 佐が指摘しているのは2010年報告で米陸軍が合計220億ドルを15年間に渡り出費したあげく対象プログラムが取り消しになった事例だ。また、「オーガ スティンの法則」にも触れている。1984年にロッキードのノーマン・オーガスティン前会長が費用支出の傾向から50年たつと米国防予算で購入できるのは 戦術航空機がわずか一機になってしまうと結論づけた事例だ。
- Darpa は原因を設計手法に求めている。全体システムを技術要素で分解し、個別部品やサブシステムを最適化してから各部を組み合わせるという考え方だ。「作ってか らテストし、期待通り作動するかを見ています。ただし常にそうはいきません。なぜなら各部品・サブシステムが予期できない形で相互作用しているからで す。」(同中佐)
- 動 力や熱源だけに問題があるわけではない。「それぞれに特性があり、部品・サブシステムに影響が出ます。過熱や振動で緩みが出るものがありますが、予測する には相当の計算が必要で、相互作用を評価する必要があります。つまり、もう一度戻って再設計、再製作、再テストが必要になります。」
- 問 題は複雑系だとDarpaは見ている。「製作するシステムがもっと複雑化しても、システムを技術的に把握する今のやり方は根本的に50年間変わっていませ ん」(同中佐) 業界ではモデルに基づく設計作業を採用しているが、AVMは別の方法をとる。コンポーネントのモデルで設計し、コンテキスト・モデルで仮 想テストをし、生産モデルで自動フィードバックをコストと日程管理に送るのだ。
- 「複 雑なシステムでは完成するまでうまく動くかはわからない。そこで新しいアプローチが必要で設計とモデル化で相互作用を予測可能にするのです」(同中佐) AVMのねらいは相互作用を把握し、システム作動を製作前に把握することだ。「設計者は『作りながら修正』できるツールを作成しています。つまり、一回で 設計の狙い通りに作動するように製作するわけです」
- Darpa は半導体産業の事例を参考にしている。半導体では何十年も前に複雑系の壁を打ち破っている。「集積回路産業は30年も前に同様の形で変身を実行していま す。電子設計自動化と言うツールを手に入れたのです。」 このツールで修正しながら作成する設計 correct-by-construction designs が可能となり、24から36ヶ月の製品サイクルで莫大な成長を維持できた、と同中佐は言う。
- AVM はメタ自動化ツールMeta automated toolsから始まる。これにより設計工程での抽象化水準があがり、これはコンピュータの高次元プログラミング言語とおなじ作用だ。ソフトウェア技術者が アプリケーションに取り組んでも電気回路には触らないのと同じで、航空宇宙設計者はシステムを相手にするのであり、個々の部品は対象としない。
- メ タとは「サイバーと現実の各システムの設計の流れであり、ハードウェアとソフトウェア構成部品を相互連関させること」と言うのはヤノス・スズチパノヴィッ ツ Janos Sztipanovits ヴァンダービルト大教授だ。「物理的・コンピュータ上の各システムは同時に設計し co-design 、ハードウェア・ソフトウェアのバランス trade-offs をとることが可能だ」
- メ タツールを使う設計者はコンポネントの各種モデルをライブラリーから取り出し、システムに纏め上げることが可能だ。「モデルとはそのコンポネントが周囲の 環境にどう対応するかをすべてあらわしたもの。環境とはその他のコンポネント、インプット・アウトプット、熱、振動、作動特徴その他のこと。これはメタモ デルであり、たんなる製図ではない」
- パー ツすべてをねじ一本まで把握し相互作用のモデル化をするのでは何十年もかかってしまう。「抽象化レベルをどこまでインテリジェントに追及できるかを見てい るのであり、ボルト一本単位を対象にしていない。エンジンがどう伝達装置につながっているのか、動力が最後はどこにつながっているのか、サスペンションは どのようにつながっているのかを見るのだ」
- メ タにより設計者は何十万と言うコンセプト一つ一つが要求水準に合致しているかを評価できる。「従来はこうあるべきだという機体の形からはじめて、ひとつの 設計案を繰り返し使っていましたので、設計全体の領域のごくわずかしか解明していませんでした。今回提供するしツールで設計全体を探査できるようになり、 長時間の計算も必要ありません。」(ウィデンマン中佐)
- 各 モデルはパラメーターになるので、「いろいろ変形させて設計を決めることができ」、各種の絞込みレイヤー refinement layers を使い、設計案はより精密度を高める。「高次元で各種要素が相互作用する様相を定義づけましたので、今あるコンポーネントの選択肢の中から設計を変更する 自由度を追加できます。そこで低密度の計算で実施可能な分析ツールで本当に高度の分析が必要な設計案数種に絞り込むわけです」
- 文脈モデルにより作動環境をシミュレートする。コンセプト各種はすべて要求内容との比較をされる。「これにより設計内容が改良され、非凡な設計が要求をもっと満足させる可能性を求めることができます」
- 製 造のしやすさ manufacturability を設計中にフィードバックすることが即時製造適合かを断片的に行う技術 Instant Foundry Adaptive Through Bits (iFAB)のねらいであり、意味するところは「設計内容を受け取り、実行可能かを決め、所用期間・費用を算出すること」と説明するのはマイク・ユーキッ シュMike Yukish(iFAB主任研究官、ペンシルバニア州立大)だ。「単純なウイジェットでさえ作成方法は何通りあり、それぞれコスト・必要工数が異なりま す」
- FAB とは情報の設計information architectureだといえる。「何かを作る目的がある工場とはちがって、分散型で再プログラム可能な生産能力です」(ウィデンマン中佐) iFABはメタで設計を示し、製造工程や設備を選択し、製造の流れを決め、コンピュータの数値コードを各製造機械に形成し、作業員に指示書を作ります。」
- iFAB が設計案を受け取ると、サプライチェーンに流して現実的なコスト・日程案を設計部門へ返す。「アナログなのはグーグル・ドキュメント(現グーグルドライ ブ)で、スペルチェックはできますが、スペルチェッカーはあなたのコンピューター上にはありません。生産面でみるとiFABは設計中は絶えず反応してお り、ボタンを押せばコストと所要時間の見積もりがわかります」(ユーキッシュ)
- こ こでAVM構想が現実の壁にぶつかる。「設計データを任意に選んで、そのパーツコストがいくらになるかは断言できません。わかるのは該当工程がいつできる かということだけです。」(ユーキッシュ)「そこでパラメーター化し、設計部門と製造部門が先に交渉をします。実はこれはすでにICチップ産業では実施中 で材料や形状で事前に合意ができています。設計空間を制約することで逆に設計の進捗は早まり、反復なしに製造できるようになります」
- 設 計者に自動生産化を可能とするパラメーターは制約することで、「生産する機種が決まる」とユーキッシュは語り、「今ある手段の範囲で選択することになりま す。技術を追求するあまりコストが拡大することは避けます。」 これでは設計の最適化に支障が出そうだが、Darpaは設計技術者の持つ創造力を活用し、 ポータルサイトも利用して共同開発を進めるとしている。
- 「半 導体やソフェアの事例からこれを行うとイノベーションの可能性が増えることがわかっています」(ウィデンマン中佐) 航空宇宙産業では現在使用中のツール による制約から「設計で貢献できる組織は何百万ドルもする試作機の製造が可能な大企業だけです。これができる企業が少ないこと、さらに企業内に数百名しか 必要な能力を有していないことが制約条件になります。」
- 「ただし大企業に勤めていないが必要な能力を持っているものは多いので、ツールをつくり、エンジニアがシステムの作動方法を理解してから製造をはじめるようにすれば、もっと多くの頭脳を集めて、複雑系のシステム構築が可能となるはずです」(ウィデンマン)
- 「生 産の可否が自動的に判定できる仕組みを利用できれば、制約条件の克服を多数の技術陣が評価しやすいコンポネントを作ることで可能にしてくれます。製造上の 制約により、構造をにもっと簡単にすることが必要ですが、設計段階からこれを実施できる能力をもつ人材は豊富なので活用できます」(ユーキッシュ)
- 「こ れから実現しようとしているのは最適設計をこれまでより早く完成させること、後になって出てくる要求事項で修正が必要となる前に完成させることです。」 (ウィデンマン) 「仕事の成果の問題ではなく、どれだけ早く成果を出せるかです。Darpaは現状の能力の範囲内で管理を強めようとしており、日程管理 を絶対とする点でユニークです」(ユーキッシュ)■
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