2011年7月30日土曜日

空中給油機需要が高まる中、勝者はエアバスミリタリーか

Asians, Europeans Seek Aerial Refuelers

aviatonweek.com Jul 29, 2011

ボーイングKC-46A空中給油機を米空軍が採用したことは同社にとっては同機を海外販売することを逆に阻害し、各国の空中給油機需要はエアバスミリタリーが大きく獲得する可能性が出てきた。
  1. 米空軍からの受注獲得は通常なら朗報なのだが、2017年までに設計、開発、生産を完了しKC-46A18機を納入することはボーイングのエヴァレット工場(ワシントン州)のラインを大幅に使用する事になり海外向け生産の余裕がなくなるのだ。
  2. 米空軍はKC-46Aの発注179機に加え追加発注の検討もしている。KC-46AはボーイングKC-135ストラトタンカーが1950年代から就役していたものを代替する。
  3. ボー イングはKC-46Aの海外向けスロットがいつ利用可能となるかの予定を公式には明らかにしていない。「当社は顧客側と協力してKC-46を国際市場に近 い将来に納入開始できる日程をまもなく決定します」と同社スポークスマンは発表。ただし、別のKC-46計画に関与する同社関係者によると海外向けの納入 は2018年以降だという。
  4. そ れでは遅すぎるかもしれない。欧州防衛局(EDA)のローラン・ドネLaurent Donnetは情報開示請求(RFI)を5月に通達しており、EU加盟国の深刻な空中旧能力不足解消策としてこの回答に基づきEDAが方策を立案するとい う。締切りは8月だ。目標は本年11月に加盟各国に対策を発表し、2012年から空中給油能力の取得努力を開始することだ。
  5. ドネによると欧州の以前の空中給油能力拡充努力は2003年、2005年ともに失敗しており、資金不足と新型機のみを検討対象としたためだという。今回の情報開示請求は新型機にこだわらない点でこれまでとは切り口が違うという。
  6. 給油機を多数取得する以外に既存の給油機の活用に加えて輸送機に給油装置を装着する、民間機(例 Omega Tanker)をリースすることがあるという。各国は資金がないのだからこそ協調するべき、とドネは語る。
  7. 欧州各国は米空軍の給油機部隊に大きく頼り切っているとドネは見ており、米国は欧州により独立性を求めてきている、とする。fリビア作戦の空中給油の8割は米空軍が実施している。これは米空軍の好意からでなく、単に欧州各国に給油能力が不足しているからに過ぎない。
  8. アジアではシンガポールが現在運用する4機のKC-135Rの後継機種を積極的に検討している。業界関係者によると入札は来年になり、2013年初頭に機種決定となる。
  9. その際の重要な性能要求はシンガポール空軍のボーイングF-15SG隊のマウンテンホーム空軍基地(アイダホ州)への海外展開を支援することだ。同空軍はロッキード・マーテインF-16C/Dもルーク空軍基地(アリゾナ州)へ展開している。
  10. シ ンガポール空軍が米空軍と密接な関係を維持していることから通常はボーイングが有利となるとみるのが通例だが、今回はエアバスミリタリーA330MRTT が優位であると見られる。エアバスミリタリー以外にはイスラエル航空宇宙工業(IAI)があり、シンガポールはイスラエルとも強い防衛面での関係があり、 IAIはボーイング767を給油機に改装する案がある。
  11. これ以外にインドには給油機6機の導入案があり、A330MRTTとイリューシンIl-78がまず候補に上がっている。ボーイングは早々とインドの競合には加わらないことを決定している。

2011年7月23日土曜日

米財政危機で国防予算も削減は免れられない見込み

Vice Chief Nominee Hints At Program Cuts Ahead

aviationweek.com Jul 22, 2011

米財政危機を念頭に国防予算の大幅削減が避けられない方向にあり、これまで以上の数の計画が取り止めになる予想だと、次期就任予定の制服組次席が上院で7月21日に発言した。
  1. 「財 政圧力や上層部による決定次第だがなかには途中で放棄される計画もでるのではないか」とジェームズ・ウィネフェルド海軍大将Adm. James Winnefeld(統合参謀本部副議長就任予定)が上院任命公聴会で発言している。「決定はあくまでも戦略的視点でなされるよう期待します」
  2. 合わせて同大将は予算削減で軍事力の骨抜きがないよう、また国防産業基盤力が回復できない打撃を受けないよう上院議員に伝えた。
  3. 国防予算削減は上院軍事委員会においても大きな議題になっていた。同委員会の公聴会は「六人組」と言われる有力上院議員が債務上限額の引上げの一貫としての赤字削減提言に同意した翌日に開催された。
  4. 提 言内容では安全保障関係で9000億ドルが盛り込まれる見込みで下院軍事委員会の共和党議員は大統領に反対を訴える動きを見せている。「強固な国防基盤を 守り、一方で連邦政府による広範囲な各種計画の財務規律を追求するべき」との内容の書簡をすでに大統領に送りつけている。.
  5. 赤 字削減の話し合いが続く中、国防族の中でも最もタカ派と言われる上院議員連もペンタゴンにメスが入るのは避けられないと認め始めている。ジェフ・セッショ ンズ上院議員Jeff Sessions(共和、アラバマ州)は国防政策の強力な推進者であり上院予算委員会のメンバーであるが、1ドルの支出に対して40セントの借金をしてい るのが今の国の姿だという。そこで国防支出は国の支出の半分近くなので、「削減努力の中で国防総省も当然努力すべき」と語る。
  6. 今 回の予算削減提言には具体論がない、というのが批判の中心だ。そこで「常識を求める納税者連合」はより具体的な対案を提案して今後十年間で6000億ドル を安全保障予算から削減することを提案している。中には奇抜な案もあり、海兵隊、海軍の統合打撃戦闘機はF/A-18E型 F型で代用せよとしている。
  7. 防衛契約企業の側は政府が債務不履行宣言を擦る可能性を危惧しており、大統領と議会が合意形成に失敗すると取り返しの付かない事態になると警告している。
  8. 債 務上限をめぐる議論は超党派で合意形成ができなくてもいいはずだと、航空宇宙産業Aerospace Industries Association会長マリオン・ブレイクリーMarion Blakeyは考えている。政府が債務不履行に陥れば自然に合意ができるのではないかというのだ。ただし「全ては正常に戻らないでしょう」.
  9. 専門サービス協議会Professional Services Councilは多数の国防契約業者を代表することから、会員企業に対して政府のキャッシュ・フロー問題を見越して先に代金の支払を請求することを勧奨している。
  10. 同協議会によると国防関連企業はペンタゴン予算の削減回避に議会工作をすでに開始しているが、先が読めない状況には動揺が隠せないようだ。
コメント 米国が債務不履行に陥るタイムリミットは8月2日です。

2011年7月19日火曜日

震災復興需要で機体調達に動く日本



Japan To See Flurry Of Aircraft Orders

aviationweek.com Jul 19, 2011

東日本大震災で被害を受けた仙台空港、松島基地の航空機の代替需要で日本が各メーカーとの商談を始めた模様だ。

  1. 津波被害で塩水をかぶった軍用機、民間機が存在する。航空自衛隊、海上保安庁、海上自衛隊、航空大学校が特に大きな被害を出している。
  2. 松島基地には大震災当日に合計18機の三菱F-2B練習機があったが、全機が海水を浴びている。防衛省の見積もりはこのうち6機から9機だけしか復帰可能とみているが、業界筋では海水によるエンジン、電気系統への腐食被害から修復は全機不可能と見る向きもある。
  3. 同省は機体修復には予算支出の承認を必要とし、今日の厳しい財政状況ならびにF-Xを合計42機調達する予定を考えるとこれはかなり難易度が高いと言わざるをえない。
  4. ただし、同省は補正予算で航空自衛隊向けにヘリコプター3機分の予算を獲得しており、UH-60Jとなる見込み。政府は三次補正予算の準備も始めている。海上自衛隊も補正予算によりキングエア喪失分の補完を期待しているという。
  5. 松島基地ではF-2以外にUH-60Jが5機、川崎T-4ジェット練習機5機、ホーカー800XPが2機、それぞれ海水の被害をうけていると航空調査会社アセンドAscendがまとめている。
  6. 今回の津波で松島基地のような沿岸部に立地する基地の脆弱性が浮き彫りになったが、航空自衛隊は同基地を放棄する考えはなく、むしろ同基地に津波被害を最小限に抑える扉付きの格納庫の設置を検討しているという。
  7. 一方航空大学校はビーチクラフト・キングエアおよびボナンザ数機を仙台空港で喪失している。
  8. 海上保安庁もキングエア数機とヘリコプターを失っているが、各機はジェムコで保全中だった。.
  9. 同 社によると震災の津波が襲った時点で同社仙台施設内に12機が預けられていたが、全機破損したという。仙台市消防局も三機のヘリと固定翼機一機が被害を受 けている。海上保安庁はメーカーとの接触を開始しており、接触を受けたメーカー幹部によると保安庁は予算の面で自衛隊よりも恵まれていないが、日本各地の 航空機配備数を一定程度に保つ政策の恩恵で航空機調達には積極的なのだという。

2011年7月16日土曜日

磨きがかかるF/A-18ホーネット


Hornet Buffs Up

aviatonweek.com Jul 13, 2011


ボー イングF/A-18E/Fが当初これほど長寿の機体になるとは予想されていなかった。だが、ロッキード・マーティンの統合打撃戦闘機JSF開発が遅延して いることから、また世界規模で戦闘機部隊の経年化が進む中で、ボーイングは同機の生産規模を1,000機まで拡大し、生産ラインを2010年代一杯稼働さ せる検討をしている。現在までの累積生産機数は700機近くになっており、最近ではJSFの遅れの影響を緩和すべく米海軍が追加41機の発注をしている。
  1. 進 行中の商談にはブラジル、デンマークがあり、名前を伏せている中東国、おそらくクウェートも関心を表明している。スーパーホーネットは日本の次期戦闘機候 補でもある。その他オーストラリアもJSF遅延で第一線戦闘機の不足が生じるためスーパーホーネットを検討しており、ボーイングによるとJSF共同開発国 複数からも同機の情報開示請求があったという。
  2. ボー イングの戦略はJSFとの比較を避けることだが、一方同社は「納期と明確な価格」をまず指摘してからスーパーホーネットとグラウラー両機種が予定価格内か つ納期前倒しで納入されている実績をあげる。さらに同社はJSFはその高価格ゆえに国際市場では「すき間需要の戦闘機になるかも」とまで発言している。
  3. 同 機の「国際市場ロードマップ」の詳細が明らかになりつつある。そのなかで目を引くのが一体型燃料タンク(CFT)を機体上部に搭載することとレーダー断面 積(RCS)の縮小をめざす兵装ポッドで、今年中に風洞実験を行い、その結果で飛行実証を実施する。CFTは3,200ポンドの燃料を格納する。ボーイン グによると巡航速度では抗力は発生しないという。その理由としてトリム抗力が減り、機体前面面積の増加を打ち消すためだ。その結果、CFT搭載し、中央線 にもタンクを付けると現在の増槽三基搭載と同じ飛行距離を実現できるという。兵装ポッドにはAIM-120ミサイル4発、2,000ポンド爆弾一基、ある いは500ポンド級兵装なら二発を搭載できる。
  4. スー パーホーネットは就役当初から亜音速加速性能、出力余裕が難点と批判されてきた。そこでロードマップでは性能向上型エンジン(EPE)としてジェネラルエ レクトリックF414の派生型をオプション設定し、20%までの推力アップができるとしている。EPEでは26,500ポンドとなり、推力重量比では他に 追随のない11:1を実現する。ただし、インドはこの内容で採択しなかった。
  5. ロー ドマップではミサイル接近警告システム、赤外線探索追跡(IRST)システムを機首ポッドに搭載することも入っている。ボーイングとロッキード・マーティ ンは1980年代にグラマンF-14D用に開発されたAAS-42IRSTの性能向上改修を開発中で、海軍のホーネット各機への搭載をめざしている。ボー イングは海外向けに同システムの改修のオプションもありとしている。例えば日本には独自開発のIRST技術があり、F-15改で使われている。
  6. 操縦席周りでは新しいオプションは11インチx19インチの大画面ディスプレイで来年実戦検証される。デジタルLCD投影を利用したヘッドアップディスプレイによりこれまでの制約がなくなる視野を実現する。
  7. ボー イングからは以前の展示会でも大画面付きの操縦席モデルを公開しており、パイロットからの反応を見る一方、ディスプレイ内容のコンセプトを宣伝している。 これはブロック2機体にも後付け装備が可能で、この全機が米海軍所属だ。改修型ホーネットはF-35Cの水準には至らないが、RCSと航続距離でギャップ を埋めて、一方軽量化がすすみ、より協力な動力性能かつ現時点の見積では購入・運用ともに費用を節約できるとしている。

2011年7月13日水曜日

F-35 機体引渡し目標を達成できず

JSF Misses June Goal For Eglin Deliveries

aviatonweek.com Jul 8, 2011


F-35共用打撃戦闘機の引渡しでまたもや予定が遅延している。
  1. C.D.ムーア少将(JSF計画副責任者)は先月パリ航空ショー会場にてF-35の初の納入はエグリン基地に6月中に実施されると発言していた。
  2. だが書類作業の遅れで機体はまだフェリーされていないとペンタゴンのJSF報道官が明らかにした。
  3. AF8および9の二機は最初の生産型F-35だが計器を一部取り付けない形で来週中にもエグリンにフェリーするのが目標だと同報道官は言う。
  4. ロッ キード・マーティンは声明文で「AF8およびAF9はともに最初の低率初期生産ロット2からの納入となりますが、地上モニター用のテスト機材が取り付けら れておりません。両機ともに納入前検査に合格しており、契約どおりのミッション能力、訓練、保守点検を実現できることが確認されております」
  5. ロッキード・マーティンは同機は引渡しまで「数日前」の状態だと表現しているがAF8と9用の書類作成は若干複雑だと認めている。
  6. 両機はエグリンで初期保守点検訓練用に地上で使用される間に今年秋後半の飛行許可を待つ。
  7. 一方、ペンタゴンとロッキード・マーティンはAF6および7の「完熟飛行」をエドワーズ基地で実施する件で協議を続けており、その後のエグリンでのパイロット訓練につながる準備の一端と理解されている。
  8. エグリン基地には合計6機のF-35通常型が納入されて飛行訓練が開始される予定だ。AF10と11の初飛行は6月29日、7月1日それぞれ完了している。AF12と13は初飛行前最終段階で数日間のうちに初飛行を敢行する予定だと同社は明らかにしている。

2011年7月11日月曜日

UCAS-Dの自動着艦モードをF/A-18で実施に成功

F/A-18 Shows UCAS-D Can Land On Carrier

aviationweek.com Jul 8, 2011

.
ノースロップ・グラマンX-47B無人戦闘航空機実証機 (UCAS-D) のソフトウェアおよびシステムがF/A-18により代理テストされ、同機は「手放し」で米海軍空母に着艦した。
  1. X-47Bで使うのと同じエイビオニクスとソフトウェアを使いF/A-18テスト機は7月2日空母エンタープライズに58回の離着艦アプローチを実施し、うち16回はタッチアンドゴー、6回は着艦フックを使っている。
  2. この成功でX-47Bの空母運用試験は予定通り2013年に実施の可能性が高まった。一号機はすでにエドワーズ空軍基地で初飛行に成功しており、2012年にパタクセントリバー海軍航空基地で陸上基地からの運用テストを開始する。
  3. 代理テスト機F/A-18は艦からの操作のもとで自律的な着艦が可能なことを証明した。母艦から8マイル地点で無人機が自律的に制御する計器飛行アプローチ(Case 1)が28回実施された。r.
  4. それとは別に30回の有視界アプローチ(Case 3)だったという。
  5. 飛 行には高精度GPSおよび戦術目標ネットワーク技術の高速データリンクにより母艦への航法ならびに実験機への指令を送信している。海軍は分散制御コンセプ トを提唱しており、空母内のミッションオペレータはどの時点でも無人機の制御ができる一方、母艦の航空管制官、艦橋内のエアボス、着艦信号士官も指令を有 人機の時と同じように送る事ができるのが特徴だ。
  6. 一方エドワーズでは同機の性能限界を広げるテストが完了すればパタクセントリバーへ移され、陸上からカタパルト発進テスト、着艦フックテスト、空母運用を想定した飛行テストを2012年一杯続ける予定だ。
  7. 代理機のテスト予定はさらに来年にもあり、空母トルーマンを使用し、X-47Bをクレーンで搭載し、飛行甲板上での同機の取り回しを評価する。
  8. その後空母への着艦実験を2013年に行い、2014年に自動空中給油を含む飛行テストに入る。この実験の前準備で今年後半からリアジェットを同機に見立てて試行を開始する。

2011年7月9日土曜日

イスラエル向けF-35は海外販売の突破口になる技術公開となるかとなるか

Israel, U.S. Strike F-35 Technology Deal

aviationweek.com Jul 6, 2011

イスラエルによるF-35統合打撃戦闘機購入の前にふさがる最大の障壁が解消しつつある。米国がこれまでJSF技術輸出でとってきた強硬な姿勢を緩和していることがうかがわれ、さらに海外販売へのはずみがつくかもしれない。
  1. 米 国はF-35先端技術の提供に慎重だったが、共同開発国から、また日本はじめとする海外での商戦で公開の圧力が高まっている。そこで共同開発各国が正式に 同機購入の決断をする今がその突破口になる。ただし、新規受注となっても同機の生産コストにさほど影響はでないみこみで、各国の調達数全部合わせてもペン タゴンの導入規模より小さいことがその理由だ。
  2. そ の中でも熱い論争相手がイスラエルで、同国は国産電子戦(EW)装備を搭載することを望んでいるためだ。一次は強く拒絶した米国もイスラエル向きF-35 の機内配線を変更し、同国製EW兵装の搭載を合意した。これによりイスラエルは機体を受領後、順次EWセンサー類、電子対抗措置
  3. 装備を充実することができる。
  4. イ スラエル空軍とロッキード・マーティンは総額27億ドルでF-35Aを19機ないし20機導入の契約を来年早々に締結する方向で交渉を進めている。イスラ エル向け一号機の引渡しは2016年の見込み、とロッキード・マーティンF-35計画主任トム・バーベジは本誌に明らかにしている。イスラエル空軍もこの 日程で合意しているという。
  5. イ スラエル空軍はJSF装備で特殊かつ高価な搭載の希望を数多く提示していたが、結局搭載されるのはイスラエル製指揮統制コンピューター通信情報収集 (C4I)システムだけになりそうだ。イスラエル製EW装備の追加、空対空・空対地兵装、外部燃料タンクの追加も原則で認められたものの、予算管理と納期 日程を優先するため先送りになっている。
  6. これまでイスラエルはシリアに配備されているSA-17やSA-22対空防衛装備のような同国を取り巻く防空脅威を配慮してイスラエル製EWの搭載を強く主張していた。ただし、F-35の受領した仕様で対応は可能とイスラエル空軍は見ている。
  7. 全体生産日程から見てイスラエル向けF-35は低率初期生産(LRIP)の第7ロットと第8ロットの中間で生産される見込みだ。イスラエルは初の国際顧客としてJSFを受領することになる。
  8. イスラエル空軍要員の訓練は2016年開始見込みだが、訓練用の機材の選択はペンタゴンが決める事項とされている。
  9. 地 域内の状況変化に応じてイスラエル国防軍は対応計画を変更しようとしており、状況分析ではこれまでイスラエルに比較的友好的だったエジプト、ヨルダンと いった周辺国が敵性国家に変化することを想定している。その結果、国防軍は装備の拡充、対応の柔軟性を増やすことで全方位に対応する能力の確保をめざす。 その中でイスラエル空軍は2030年までにF-35部隊を75機まで拡充することで柔軟対応を実施する能力の獲得が必要と主張している。
  10. 今後数年のうちに同空軍はF-16A/B、F-15A/Bといった旧型機を退役させるが、新型F-35が20機だけとなると戦闘機部隊の規模はかつてないほど縮小してしまう。
  11. ただし国防軍内部では強力なエジプト陸軍が敵となる可能性から機甲師団の拡充が必要とする陸軍の主張も強く、メルカバ戦車から派生のネイマー装甲兵員輸送車の生産は米本土のジェネラルダイナミクスが米軍事援助予算を使って行う。F-35取得にもこの予算が使われる。
  12. ただし、今回の米・イスラエル合意をもって米国がJSF技術の公開を各国に行う決定をしたとは言い切れない状態だ。関係者は海外向けには米国仕様より低いステルス性能の機体を提供するとしている。
  13. で はどこまでの技術移転度まで許容される様になったのかを図る試金石が日本だ。日本は高度の技術移転および国内生産の実現に高い意欲を示している。米政府は ロッキード・マーティン、プラットアンドホイットニーと協議しどこまで日本にとって魅力的な提案ができるのかを見極めようとしているところだ、とC.D. ムーア米空軍少将は語る。日本の技術力は同機関連技術の提供元として高い可能性があると同少将は付け加える。
  14. オーストラリアとイタリアがその次にJSF購入に踏み切る国と見られている。おそらく来年のLRIP6の内数として発注になるのではないか。トルコがその後に続くものと見られる。ノルウェーはとりあえず4機の購入を承認したが、契約締結には三年かかるかもしれない。
  15. デンマークも次期主力戦闘機選定をまもなく開始する予定で、総選挙の結果いかんで作業日程が加速する。ここでもF-35にはボーイングF/A-18E/F、サーブ・グリペン、ユーロファイター・タイフーンとの競り合いとなるだろう。

2011年7月3日日曜日

KC-46Aでボーイングは自社負担増になるのか

Boeing Liable For KC-46 Overage

aviationweek.com Jun 29, 2011

米空軍はKC-46A空中給油機調達契約でこれまでで最大の金額を支払う見込みの一方、ボーイングも相応の勘定の支払いを迫られそうだ。
  1. ボーイングがEADSに競り勝って契約を獲得して二ヶ月となるが、空軍には5億ドルの追加支出がないと第一期分の18機の納入ができないとの通知が同社から入った。
  2. 2 月時点では固定価格制でさらに順調な開発に成功すれば報奨金が入る仕組みの契約で44億ドル規模の契約という話であったのに、「ボーイングからは契約交付 後の4月に入り、選定過程では同社は実際の費用よりも低いエンジニアリング・生産開発費を提示していたと打ち明けてきました。ボーイングは契約上限額49 億ドルを超過する支出の全額を負担する責務を有します」とジャック・ミラー中佐(空軍スポークスマン)は声明文を発表。
  3. ブルームバーグからはボーイングは追加3億ドルを支出しないとKC-46A開発を実現できなとの報道も先週でたところだ。結局ボーイングは低価格で入札する戦術を選択して、開発期間中の赤字リスクを覚悟の上で販売売上で赤字を埋めるつもりであったことが明らかになった。
  4. 米 空軍の調達予定数は179機で海外販売の機会もある。「KC-46Aでは収益を見込んでいます。KC-46調達契約では追加的な機会の可能性も閉ざされて おりません。その一部として米国により海外向け調達が想定され、関連サービス売上も今後数十年にわたり期待しているところです」(ビル・バークスデール、 ボーイングのスポークスマン)
  5. た だ空軍、ボーイングともにKC-46A開発の実現に必要な総額を明示していない。ボーイングは損益分岐点となる機数の明示も拒んでいる。ボーイングは入札 が積極的かつ責任をもって行われたと認めるが、開発総費用が契約上限額を超過する見込みがいつ認識されたのかについては言及を避けている。
  6. ボーイングは7月27日に次回株主向け収益計画説明会を控えており、その席上で開発費用の超過分の対応方法を説明するものと見られる。現時点ではボーイング株価にはこの問題での懸念は反映されていない。
  7. 空 軍関係者にはボーイングの持ち出しは3億ドルと見る向きがある。バークスデールはKC-46A開発日程は予定通り進んでいると強調するが、日程計画そのも のの詳細はほとんど外部に伝わっていないが、第一期分18機の納入は2017年度第4四半期までに実現すると定められていることだ。ボーイングの低価格見 積り戦術そのものは違法ではないと同社は主張する。
  8. ボーイング入札価格はEADS提示価格より10%低かったとEADSは発表している。仮に3億ドル追加支出の見込みが正しいと、ボーイング入札価格は実質で4%安かった計算だ。

2011年7月2日土曜日

リビア航空戦で英仏空軍が得つつある教訓

U.K., France Fine-tune Libyan Air Ops

aviationweek.com Jul 1, 2011

英仏両国の空軍にとってリビア航空作戦で得つつある教訓には明暗分かれるものがある。英空軍にとっては自国政府がキャンセルしようとしている装備能力が不可欠であることが改めて認識されたこと、フランス空軍にとっては兵装の整備で選択を誤っていたことがそうだ。
  1. 実 際にはリビア作戦は進行中なので英空軍は教訓と言うには時期尚早と考えるが、4月にサー・スティーブン・ダルトン空軍司令官他が演説中で明らかにしたよう に退役が予定されている機体が極めて重要な装備であるが判明した。NATO設定の飛行禁止地帯でび英国の支援活動は英国ではエラミー作戦と呼称され、戦闘 イスター(情報収集、監視、目標捕捉、偵察)Istar (intelligence, surveillance, target acquisition and reconnaissance)コンセプトの実証がさらにすすみ、シナジー効果を証明している。
  2. こ のシナジーを生んでいるのは三つの機材だ。E-3Dセントリー、センティネルR1、ニムロッドR1で、このうち英空軍の装備として今後も残るのはE-3D だけ。電子情報収集用のニムロッドR1は3月末で退役予定だった。その穴埋めにRC-135Wリヴェットジョイントの導入がされることになり、英空軍では 同機をエアシーカーAir Seekersと呼称する。一号機はまだ米国内で改装作業中で実戦化は2014年移行になる。ニムロッドは退役予定を先送りにしてリビアに投入されている ものだが、6月28日に現地から退く予定だ。その代替として米空軍のリヴェットジョイント機に英米混成乗員が乗り込み運用をする。英空軍乗員はネブラスカ 州オファット空軍基地で必要な訓練を今年初めから開始していた。この共同運用は今夏から始まる。
  3. 見 えてこないのは英空軍のAstor(空中スタンドオフレーダー)機材であるセンティネルR1(レイセオン装備で強化したボンバルディアグローバルエキスプ レスビジネスジェット機、英空軍は5機を運用)の去就だ。同機は合成開口レーダー能力を持ち、地上走行目標表示(GMTI)モードも持つ。ダルトンは「標 準的な」エラミー作戦ではセンティネルは他の機材に先駆けて特定区域で一次評価を行う他、GMTIモードで標的抽出しているという。
  4. 英 政権による戦略防衛安全保証報告2010年阪ではセンティネル全機はアフガニスタン作戦終了を持って退役としていた。同機の後継は不明だ。国防省はスキャ ベンジャーUAVの取得を要求しているが、センティネルと同等かそれ以外の能力を持たせるかの決定は未定で、運用上第一線化はまだ先になる。
  5. SAR 能力の提供はリーパーおよび英陸軍で今後配備されるワッチキーパーWatchkeeperの両UAVで可能とされるものの、またリーパーとシーキング7ヘリに GMTI能力があるとはいうが、リーパーもシーキングも高脅威度空域での運用は危険で実際に両機ともにリビアには投入されていない。
  6. 想 定外だったリビア作戦で英空軍のジェット機部隊の乗員管理にも問題が生じている。地上目標攻撃用のユーロファイター・タイフーン機ではもともとトーネード F3からタイフーンへ防衛装備の主力を移行しつつある中で当初計画の変更を余儀なくされている。トーネードF3は3月末で退役している。その結果、リビア 作戦がはじまったとき、英空軍パイロットで地上攻撃任務の訓練を受けていたのはわずか8名であった。その後、その8名から教官を選び、訓練を開始した結 果、現在は20名がタイフーンで対地攻撃を実施できる様になった。
  7. 単座高速ジェットの同機により対地攻撃をする際の最大の課題はレーザー目標捕捉で、タイフーンGR4投入当初は二機ペアで僚機が照射をしていたが、現在は単独で実施が可能となっている。ただし、実際の運用ではタイフーンとトーネードのペアで飛行している。
  8. そ の結果指揮官は状況に応じ最良の弾薬使用が可能となり、高価格の精密兵器の節約になる。乗員派遣は短期サイクルで通常は6ないし8週間で練度が低下するの を避けるのはアフガニスタンにおけるハリアー運用で得られた教訓が元だ。英空軍は今回の作戦では基本訓練技術の一部としての夜間飛行や空中給油は戦域内で は実施しておらず、本国帰還後に再訓練することとしている。
  9. フランス空軍では今回のリビア作戦で感じているのは空対地ミサイルの増備、小型化の必要性。運用しているサゲムSagem製AASM(Armement Air-Sol Modulaire)250Kgだが、実戦では大きすぎると感じている。
  10. 英 空軍が運用するブリムストンミサイルに相当する装備はフランスになく、外寸が大きい割に精密度が低い同AASMでは街区の中の目標だけを攻撃できないので フランス空軍はAASMを不活性化して運用する方策を考え出した。実弾と同じ重量のAASMに、爆薬の代わりにゴムあるいはコンクリートを装填する。実際 に英空軍のトーネードがコンクリート爆弾でイラク戦車を2003年に破壊した事例がある。
  11. 不活性爆弾でもGPS航法システムを装備し、精度は1メートル以内と実弾と同じだ。ラファールから投下されると秒速330メートルで落下し、敵戦車を附随被害を生じさせず半径200メートル以内で破壊できる。
  12. 実 弾阪AASMにはモードがふたつあり、ミッションに先立ちプログラムしておくと建物や弾薬庫といった目標に有効だ。もうひとつは機内でプログラムしておく 時間調整目標対応Time Sensitive Targeting (TST) モードだ。レーザー赤外線誘導モードは開発中でリビアでは使用されない見込み。
  13. フ ランス空軍は作戦初日にAASMでベンガジ近郊の装甲軍用車両隊を攻撃した。またロシア製S-125(SA-3ゴア)地対空ミサイル陣地の攻撃にも同ミサ イルの有効射程範囲外から攻撃を実施している。3月24日には飛行禁止区域に迷いこんだユーゴスラビア製ソコ・ガレブジェット練習機一機を地上で破壊して いる。同機はAWACSにより探知された。同機が着陸した時点で破壊命令が下された。
  14. これらの実戦から明らかになったのは軍事装備の輸出問題だ。両機のメーカーともにリビア実戦で性能は証明済みと訴えるはずだ。
  15. ダッソーはタレスおよびSnecmaの後ろ盾を得て同社製品は実戦証明済みと主張するはずで、実際にラファールはアフガニスタンで2002年から飛行している、とはいえ同機の初期飛行はシュペル・エタンダール機への空中給油任務であった。
  16. NATOの空対地攻撃装備の一部に取り入れられたラファールはアフガニスタンで近接航空支援任務に投入されている。最初のミッションは2007年と報道されているが、実際の効果はごくわずかとされる。
  17. ラ ファールが実戦でどんな活躍をしているのか情報はごくわずかした公表されていない。フランス空軍の同機は開戦初日からサフラン/MBDA AASM複数目 標捕捉誘導爆弾を搭載しているのが目撃されているが、あきらかに開戦当初に限定されていたようだ。ただしフランス国防省発表は低調であり事実はなかなかわ からない。
  18. これに対して英国はタイフーンによる多用途任務の成果を声たかだかに発表しており、4月13日付報道発表では性能向上型ベイブウェーII(1,000ポンド)レーザーGPS誘導爆弾がタイフーンから投下されたとしている。