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国防支出削減出の米議会の動向を注視しましょう


U.S. Defense Budget Faces Decimation Decade

aviationweek.com Aug 19, 2011

辞書では“decimate” とは1割減にする意味だが、これがまさしく今からの10年間の米国防支出で発生する可能性があり、今のところ米政府は総額で最高24億ドルを削減し、財政赤字の削減に繋げたい動きだ。
  1. ぎ りぎりで妥結した今回の赤字削減策は正式には2011年予算管理法案と呼ばれており、オバマ大統領の署名で法成立となるが、国防関係の巨大プロ ジェクト、かねてから議論を読んでいたプロジェクトが狙い撃ちになり一層多くの予算が削減となる、または厳しい予算管理の対象となろう。その中でもまっさきにア ナリストたちがあげるのがロッキード・マーティンの共用打撃戦闘機であり、ロッキード・マーティンとオースタルAustalによる沿海域戦闘艦であり、ベ ル/ボーイングのV-22ティルトローター機だ。
  2. そ の他の計画も無傷ではすまないだろうが、予算規模が小さかったり、まだ開発段階でしかない案件はすぐには影響をうけない。また、同じ国防関係でも逆に予算 計上が増額になる特殊分野もあり、例としてはサイバー安全保障、無人機、ミサイル防衛、長距離攻撃能力や指揮命令通信・情報収集監視偵察(C4ISR)が あるが、かつてのような潜在的だが確認ができていない相手方脅威に対して優越性を確保する名目で巨額の国防調達支出が認められ国防戦略が形成される時代は 終わった。アナリスト陣は米軍の任務役割はこれから変化していくと見ており、その理由に財政赤字削減が好むと好まざると出てくるのであり、そのために 調達内容も変わらざるをえない。
  3. 法案では最低3,300億ドルの削減をめざしているが、ペンタゴンは次年度からの10年間でおそらくその二倍の金額の削減幅を提供することになろう。加えて数百億ドルの削減がその他国防関連部門として情報関連、国土保安、退役軍人関係からひねり出されるだろう。
  4. 民 間アナリストは最悪のシナリオとしてペンタゴン予算は8,500億ドル減となるとする。新法案でも実際の削減策はこれから協議して決めることになってお り、これ以上の削減もありうる。中立系のシンクタンクによると新法が完全に施行されると、あるいは議会が連邦予算を1.5兆ドル追加削減する合意ができ ないと、ペンタゴンの2013年の予算水準は2007年度と同規模になり、これが3から8ヶ年継続するという。
  5. こ れにより国防産業大手企業、中小メーカーともに今後の10年間の業績にも悪影響がでるとのムーディのレポートがある。実際にはペンタゴン予算支出の大部分は運用、メンテナンス関連および人件費であり、「不釣合いな規模の」削減が投資的な支出に発生する「可能性が高い」とムーディは見ている。その 対象は調達、研究開発、試験評価だという。
  6. 国防関連の各案件の先行きを一層暗くするのが議会内のいわゆるスーパー委員会の存在だ。予算管理法の第二段階で個別具体的な削減策を模索する役割を果たす。委員人事が先週末に発 表されているが、業界の声を代弁してくれそうな議員が見当たらない。航空宇宙産業連盟や下院軍事委員会ノ共和党議員のロビー活動は無駄に終わった観ががあ る。共和党下院院内総務ミッチ・マッコネル議員Mitch McCon­nell(ケンタッキー州)はオハイオの共和党一年生議員ロブ・ポートマンRob Portmanを指名しているが、ブッシュ前政権の予算局長としての経験を重視してのためだ。
  7. マッ コネルはもうひとりジョン・キルJon Kyl(共和 アリゾナ州)も指名している。同議員は昨年に新Start核軍縮条約でロシアとの交渉でオバマ政権への反対の陣頭に立った人物で戦略ミサイ ル防衛及び核兵器整備を提唱している。ただキルは任期終了で再選はめざさないという。パット・トゥーメイPat Toomey(共和 ペンシルベニア州)が三番目の選択だ。
  8. この人選についてマッコネルは削減対象で重要なのは社会保障と税だとしているが、国防はそこから外している。
  9. 興味深いのは下院議長ジョン・ベイナー議員John Boehner(共和 オハイオ州)が自党内のタカ派軍事委員会からの人選の訴えを重視していないことだ。
  10. こ うなると国防関係の最強の支援者は民主党からとなる。ハリー・レイドHarry Reid上院院内総務(民主  ネヴァダ州)はパティ・マレイ議員Patty Murray(ワシントン州)を上院歳出委員会国防小委員会所属から指名した。同議員は選挙区のボーイングの強力な支援者として知られる。この他に 2004年に大統領選に敗れて以来国防関連では慎重な姿勢のジョン・ケリー議員 John Kerry(マサチューセッツ州)と上院財政委員会委員長マックス・ボーカス議員Max Baucus(モンタナ州)を指名している。
  11. 新 しく発足する委員会はまず法案を議会審議に乗せることを11月23日までに完了の上、上下両院で同法案の通過を12月23日までにすませるのが役目だ。議 会あるいは同委員会がこの予定表通りに動かないと、両党にとって受け入れがたい内容の予算削減が自動的に成立してしまう。その反面、議会、大統領双方に受 け入れられない内容になれば同委員会は別の内容で予算管理法の求める内容とは異なるものを議会通過させるかもしれない。または一層多くの赤字削減内容を盛 り込む可能性もある。ただし、大統領選挙の日程と昨今の世論調査結果を見ると国民は直近の予算論争に嫌気を見せており、実際には今言った2つの可能性も実 際にはワシントンでは議論の対象になっていない。
コ メント:後半は議会内の話題ですが、国防予算がこれから10年間厳しい状況になると、日本の安全保障にも当然影響が出てきますね。今後の10年間に予測さ れるアジア太平洋の変化はエネルギー供給と中国の影響力拡大ですが、この中で米軍はプレゼンスをどこまで維持できるのか、日本は同盟国としてどれだけ補完 するのか。いろいろ緊張要因が高まっている韓国との関係をどうするのか、インド、シンガポールとの共同シーレーン確保は検討しないのか、さらに一層グロー バル化をすすめる日本の経済をどう守っていくのか、安全保障でいきなり大きな課題を突きつけられる可能性があると思わざるを得ません。冷静な議論のために ますます国外の動向を注視剃る必要がありましょう。

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