Duels In The Sky
aviationweek.com Jun 3, 2011
欧州の戦闘機メーカー各社は共用打撃戦闘機JSFの先行きをさらに否定的に見ている。
- サー ブ、ユーロファイター、ダッソーの各社はJSFが公約通りの納期で公約通りの価格で引渡し可能となるとは見ていない。また、JSFのステルス性は予想より も低く、欧州製の戦闘機よりも性能は低いと見ている。そのなかでオランダ、ノルウェー、カナダがJSFを採用した背景には三つの理由が ある。ひとつは米国による政治的圧力(ウイキリークスがこの裏付けになった)、米国装備が中心の空軍力整備、また各国の政治的な動揺があった。
- 【イ ンドの選択の影響】インドは独自の中型多用途戦闘機MMRCAの選定でボーイングとサーブを選外とし、これは両社にとっておもわぬ敗北となった。残るユー ロファイター(タイフーン)とダッソー(ラファール)が受注をめぐり火花を散らすことになる。インド側関係者によると一次選考は技術面を重視したためタイ フーンおよびラファール両機ともにサーブのグリペンよりも優秀と判定されたのは当然という。また欧州製の各機は空力特性でもボーイングのスーパーホーネッ トよりも先進性がある。ラファールまたはタイフーンが採択されても、まだ課題は残る。たとえばAESAアクティブ電子スキャンアレイレーダーの共同開発、 メテオ空対空ミサイルの搭載、開発サイクルの長期化で避けられない技術陳腐化への対応、技術移転・国産化生産、完全デジタル機材の導入などインド空軍には すべてを限られた時間の中で実現する必要があるのだ。
- 仮 にラファールが選定に残る場合、またブラジルでも採用されれば、ダッソーおよび提携各社サフラン及びタレスも自国から9,000マイル離れたインドで上記 の課題に直面する。インドはリスクは全部契約先に押し付ける考えで、問題が表面化し国内で非難されることは極力避けるはずだ。
- ボー イング、サーブ両社にとってはインドで選択結果が出ても自社設計製品を各国市場に売り込む方法がそれ自体誤っているとは言えないことが救いか。ボーイング にとってインドの決定は米国製装備に依存したくないという選択結果と理解し、サーブは二次選考の対象はいずれも欧州の主要国との関係を強めることに救いを 見る。
- 欧 州の三機種はいずれもカナード翼を特徴とし、それぞれ各国の経済、運用、技術、これまでの歴史の蓄積の結果を反映している。歴史要因は1980年代の中頃 までさかのぼり、フランスとユーロファイター分担国がたもとを分けたことが大きい。ドイツと英国は一カ国による戦闘機開発では米国製戦闘機と競争力をたも つだけの規模が足りないと主張。フランスは多国間開発には主導的な立場を取る国がなければ不可能と主張を曲げなかった。その両方とも正しかった。
- ス ウェーデンが一線を画してこれたのは、戦闘機を独自開発してきたため。設計、開発、主要部分の生産は同国内で行っているが、サブシステムのエンジ ン、レーダー、兵装類は海外調達や共同開発である。
- 【タ イフーン】 外観こそ似ているが、タイフーンとラファールは技術、運用面で相当の相違がある。タイフーンはトーネードが運用可能年数の半分になった段階で 導入する構想であった。当時のMiG-29やスホイSu-27の脅威により空戦能力を重視する方向に変わり、レーダーは大型化し、ミサイル搭載 数は6発標準となり、空力特性と推力は機動性とマッチする設定になった。
- 英空軍はタイフーンはロッキード・マーティンF-22の性能にはかなわないと見てラムジェット推力で高性能赤外線追尾システムを搭載したメテオAAMを装備してより強力になると考えていたが、問題は強力な敵勢力に対抗する必要のある空軍は限られていることだった。
- ま たタイフーン共同開発の四カ国で対応が異なっている。英国はタイフーンでトーネードの任務を実施することとし、精密対地攻撃能力 を重視した。一方でその他各国は空対地攻撃能力を最重要課題とは見ずに、(これにはイラクやアフガニスタンで作戦展開していないという事実もある) 資金 投入を渋り、性能実現には時間がかかることになった。それでもタイフーン共同開発各国は将来の発展形の売り込みもしている。その中には推力ベクトル制御 TVCの提案もあり、外部に重量級兵装を搭載しても機体取扱特性が向上し、この艦載型にインドが関心を寄せている。JSFが失敗の場合は英国も導入 を検討するだろう。タイフーンの生産・性能向上計画は繰り返し遅延し、共同開発国が費用負担、開発日程でしばしば紛糾したことで体制の立て直しが発生して いる
- 【ラ ファール】 これに対してラファールはフランスの空軍編成を意識して開発され、海軍でも運用を想定し、近接航空支援から核攻撃までの各ミッションを想定し ている。その結果、機体の割に大量の外部搭載兵装が実現したが、タイフーンよりも性能限界は低い。また、レーダー有効範囲を犠牲に軽量としている。ラ ファールで目を見張るのはステルス性だ。ラファール開発チームは2000年代中頃から同機の成熟化に成果を上げており、GBU-12レーザー誘導爆弾と SagemAASM長距離精密誘導兵器を搭載できるようになった。敵防空網の破壊ミッションではレーダー目標捕捉を敵射程外から行う構想と超低空で地形を カバーとしてAASMを発射剃る方法が提案されている。さらに地形画像追尾型の赤外線装備の試験が予定されている。ラファールはタレスのエアロマルチバン ド長距離偵察ポッドを運用することが可能だ。ラファールはゆっくりと生産されて機体価格は高い。生産数を伸ばすと自国内の他の防衛装備調達が犠牲になる。
- 【グリペン】 グリペンの開発ではステルスが大きな特徴となるが、スウェーデンは小規模ながら高性能の空軍部隊を維持するとの戦略的な政策決定をしており、グリペンを2040年まで運用する予定だ。そのためJAS39E/F グリペンNGの開発が急がれる。グリペンNGの初飛行は2012年の予定で、各種報道によるとステルス性向上のため空気取入口で分流器が廃止されるという。高性能エンジンにより、アフターバーニングなしでも出力は現行C/D型のRM12エンジンの最大推力の90%相当になるという。ただしエンジン寿命をのばすために も推力を下げる可能性もある。
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