U.S. Rethinks Nuclear Strategy
aviationweek.com 9月3日
オバマ政権下の国防力見直し(QDR)と平行して進行している核兵器体系の見直しによってこれまで長く結論の出なかった二つの計画にゴーサインが出る可能性が出てきた。次世代のミサイル発射用潜水艦(SSBN)と新設計の核弾頭である。実現すると核抑止力が長年にわたり軽視されてきたと杞憂してきた核兵器関係者には朗報となる。この間にフランス、英国、ロシア、中国は米国を上回るペースで核兵器の近代化を進めてきたからだ。
「この二十年間で一番よい話です。国防総省では戦略抑止力に相当の時間を投入してきましたが、まるまる一世代がこの話題を避けてきました。わが国の理解力は進展がなくなり、気がつくと崖っぷちにおり、あまりに長くこの崖にいたのです」(ケビン・チルトン戦略軍司令官)
オバマ政発足時は核兵器に関しては「数量、任務、重要性」のいずれも縮小する意気込みで、ロシアとの兵力削減交渉を再開し、不拡散を改めて重視し、核実験禁止・核分裂物質の規制で実現しようとした。
ただし政府のアクションでは対応できない新しい核の問題があると危惧の声を上げる核抑止論の研究者がある。ジョン・ハムリ(前国防次官・現戦略国際問題研究所長)がいみじくも「米国では核は使えない兵器と考えている。しかし世界の多くの国が使用可能と考えているのだ。」と言う。
実際そのとおりだ。ロバート・ヘイワード海軍中将(合衆国統合軍副司令官)が昨秋に実施された5日間の模擬戦ゲームの内容を解説している。実現可能性のある事象を取り入れている。新興核保有国が戦術核兵器の使用に踏み切る。核兵器の最初の選択ではないが、最後の手段でもない。その結果「核兵器の存在が戦闘部隊運用を麻痺させる」
フランク・ミラー(ジョージ・W・ブッシュ政権下で兵器管理専門家を務める)が追加する。「イランと北朝鮮は米国の核兵器を抑止する目的では自国の核兵器を使わない。むしろ、米国の通常兵力を抑止する目的で使うだろう」
ならず者国家や新興核保有国だけが核兵器を開発しているのではない。ロシア、中国ならびに両国と国境を接する「新規保有国」の三カ国はそれぞれ核運搬手段と新型弾頭を開発中だ。今年後半にフランスは核実験をせずに核弾頭を配備する最初の国となる。まず、空中発射ミサイルASMPにTNA弾頭を配備する。潜水艦発射のM51ミサイル用のTNO核弾頭が来年に登場する。国内で議論の結論が出ていないが英国の核弾頭開発方針(核実験を伴わない)と新型ミサイル潜水艦開発は同国の政策として既定路線だ。
そこで米国も核兵器体系の見直しをしている。クリントン政権は核実験を1996年以降中止し、エネルギー省の各研究施設に貯蔵済み核兵器の信頼性を評価させ、核実験を必要としない新型核弾頭開発方法を研究課題として与えた。これは実施済みで信頼性の高い新型弾頭(RRW)の開発のめどがついたとしているが、議会がこの開発予算支出を何度も否定している。
RRW開発に反対の論拠は弾頭の老朽化が過大に強調されており、プルトニウムの寿命は事実上無限だとしている。ただし研究施設関係者はこの主張に同意していない。核弾頭ではプルトニウムの「穴」から低水準放射線が時間をかけて全体に影響を与えていく化学構造だという。
ただRRW開発にも利点があるとすれば、それは確実性である。核兵器維持にかかる巨額の費用の中には事故と盗難防止関連が含まれる。だが、もし核爆弾の安全性を向上できたら(例 起爆剤の感度を下げる)または事実上盗難されても使用不可能となれば、取り扱いが容易になる。
この点で英国が先行している。2005年の時点でリヴァモア武器開発部長ブルース・グッドウィンが英国の核開発は「活発」で核実験禁止条約に準拠した弾頭の作成をめざしていると語っている。同部長は英国が力を入れているのは「こざっぱりとした」爆弾正式名称は高確実弾頭というもの。英米協力がそれ以前より密接になっているとも話している。2008年後半よりAWEマネジメント(英国内の研究施設を運営)はロッキード・マーティンおよびジェイコブスエンジニアリングが各3分の一株式を保有し、米国系の企業となっている。
抑止兵力装備の新体系には通常兵器装備の弾道ミサイル(CBM)もある。「短時間で目標に到達する兵器システムはこれまで核兵器しかなかった」とカートライト海兵隊大将(統合参謀本部副議長)は語る。「敵は当方がそれを使用するだろうと考える点で意味がある」とユージン・ハビジャー空軍大将(退役)は言うが、CBMに1,000ポンドの通常弾頭をつけて数メートルのCEP(誤差半径)があれば50キロトン核弾頭と同じ効果があるという。
CBMについてハビジャーは「すごい発想だ。海軍は試算して5億ドルあればCBM100基を調達できるとしている。しかし、戦略軍司令部は各地域司令官を巻き込んで国務省長官、国防総省長官にこれが必要だと説得してきれていない。これでこの構想が消えるのは残念だ」
それでもカートライト大将が注意を引いているのはCBM(トライデントミサイルに通常弾頭を装備)は実戦配備までに18ヶ月あれば十分としている。さらに「四ヶ月あるいは五ヶ月」のテストを実施すれば発射ミサイルが核弾頭つきなのかどうかの問題は解決できるという。
CBMは別の重要問題の答えにもなる。その問いとは核兵器が生物化学兵器の脅威に対する抑止力として機能するか、というもの。ハムリは化学攻撃で死者1、000名が発生したとして核弾頭の使用は確実な選択といえるかと問い、「自国内で意見が混乱している状況がベースで政策を立てても役に立たない」と言う。
aviationweek.com 9月3日
オバマ政権下の国防力見直し(QDR)と平行して進行している核兵器体系の見直しによってこれまで長く結論の出なかった二つの計画にゴーサインが出る可能性が出てきた。次世代のミサイル発射用潜水艦(SSBN)と新設計の核弾頭である。実現すると核抑止力が長年にわたり軽視されてきたと杞憂してきた核兵器関係者には朗報となる。この間にフランス、英国、ロシア、中国は米国を上回るペースで核兵器の近代化を進めてきたからだ。
「この二十年間で一番よい話です。国防総省では戦略抑止力に相当の時間を投入してきましたが、まるまる一世代がこの話題を避けてきました。わが国の理解力は進展がなくなり、気がつくと崖っぷちにおり、あまりに長くこの崖にいたのです」(ケビン・チルトン戦略軍司令官)
オバマ政発足時は核兵器に関しては「数量、任務、重要性」のいずれも縮小する意気込みで、ロシアとの兵力削減交渉を再開し、不拡散を改めて重視し、核実験禁止・核分裂物質の規制で実現しようとした。
ただし政府のアクションでは対応できない新しい核の問題があると危惧の声を上げる核抑止論の研究者がある。ジョン・ハムリ(前国防次官・現戦略国際問題研究所長)がいみじくも「米国では核は使えない兵器と考えている。しかし世界の多くの国が使用可能と考えているのだ。」と言う。
実際そのとおりだ。ロバート・ヘイワード海軍中将(合衆国統合軍副司令官)が昨秋に実施された5日間の模擬戦ゲームの内容を解説している。実現可能性のある事象を取り入れている。新興核保有国が戦術核兵器の使用に踏み切る。核兵器の最初の選択ではないが、最後の手段でもない。その結果「核兵器の存在が戦闘部隊運用を麻痺させる」
フランク・ミラー(ジョージ・W・ブッシュ政権下で兵器管理専門家を務める)が追加する。「イランと北朝鮮は米国の核兵器を抑止する目的では自国の核兵器を使わない。むしろ、米国の通常兵力を抑止する目的で使うだろう」
ならず者国家や新興核保有国だけが核兵器を開発しているのではない。ロシア、中国ならびに両国と国境を接する「新規保有国」の三カ国はそれぞれ核運搬手段と新型弾頭を開発中だ。今年後半にフランスは核実験をせずに核弾頭を配備する最初の国となる。まず、空中発射ミサイルASMPにTNA弾頭を配備する。潜水艦発射のM51ミサイル用のTNO核弾頭が来年に登場する。国内で議論の結論が出ていないが英国の核弾頭開発方針(核実験を伴わない)と新型ミサイル潜水艦開発は同国の政策として既定路線だ。
そこで米国も核兵器体系の見直しをしている。クリントン政権は核実験を1996年以降中止し、エネルギー省の各研究施設に貯蔵済み核兵器の信頼性を評価させ、核実験を必要としない新型核弾頭開発方法を研究課題として与えた。これは実施済みで信頼性の高い新型弾頭(RRW)の開発のめどがついたとしているが、議会がこの開発予算支出を何度も否定している。
RRW開発に反対の論拠は弾頭の老朽化が過大に強調されており、プルトニウムの寿命は事実上無限だとしている。ただし研究施設関係者はこの主張に同意していない。核弾頭ではプルトニウムの「穴」から低水準放射線が時間をかけて全体に影響を与えていく化学構造だという。
ただRRW開発にも利点があるとすれば、それは確実性である。核兵器維持にかかる巨額の費用の中には事故と盗難防止関連が含まれる。だが、もし核爆弾の安全性を向上できたら(例 起爆剤の感度を下げる)または事実上盗難されても使用不可能となれば、取り扱いが容易になる。
この点で英国が先行している。2005年の時点でリヴァモア武器開発部長ブルース・グッドウィンが英国の核開発は「活発」で核実験禁止条約に準拠した弾頭の作成をめざしていると語っている。同部長は英国が力を入れているのは「こざっぱりとした」爆弾正式名称は高確実弾頭というもの。英米協力がそれ以前より密接になっているとも話している。2008年後半よりAWEマネジメント(英国内の研究施設を運営)はロッキード・マーティンおよびジェイコブスエンジニアリングが各3分の一株式を保有し、米国系の企業となっている。
抑止兵力装備の新体系には通常兵器装備の弾道ミサイル(CBM)もある。「短時間で目標に到達する兵器システムはこれまで核兵器しかなかった」とカートライト海兵隊大将(統合参謀本部副議長)は語る。「敵は当方がそれを使用するだろうと考える点で意味がある」とユージン・ハビジャー空軍大将(退役)は言うが、CBMに1,000ポンドの通常弾頭をつけて数メートルのCEP(誤差半径)があれば50キロトン核弾頭と同じ効果があるという。
CBMについてハビジャーは「すごい発想だ。海軍は試算して5億ドルあればCBM100基を調達できるとしている。しかし、戦略軍司令部は各地域司令官を巻き込んで国務省長官、国防総省長官にこれが必要だと説得してきれていない。これでこの構想が消えるのは残念だ」
それでもカートライト大将が注意を引いているのはCBM(トライデントミサイルに通常弾頭を装備)は実戦配備までに18ヶ月あれば十分としている。さらに「四ヶ月あるいは五ヶ月」のテストを実施すれば発射ミサイルが核弾頭つきなのかどうかの問題は解決できるという。
CBMは別の重要問題の答えにもなる。その問いとは核兵器が生物化学兵器の脅威に対する抑止力として機能するか、というもの。ハムリは化学攻撃で死者1、000名が発生したとして核弾頭の使用は確実な選択といえるかと問い、「自国内で意見が混乱している状況がベースで政策を立てても役に立たない」と言う。
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