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日本の防衛力整備の方向性を考える



New Missions for Japan

aviationweek.com 7月26日

日本政府の危惧材料は北朝鮮の弾道ミサイル、中国の高性能戦闘機・巡航ミサイル、領土問題と国土防衛用の基地と新型機の確保だ。予算の増額は考えにくいため、防衛力の大幅増強は不可能となっていることがこれに加わる。このプレッシャーにより政府は相反する政策上の優先順位を検討している。

l 防衛対象は何か

l 装備近代化の選択肢はなにか

l 海外派遣部隊の展開が軍事脅威と周辺国に写らないためにはどうすべきか

【未整備の防衛装備は多い】 また、国内防衛産業が非常に高価な装備(例 F-2やAH-64アパッチ攻撃ヘリ)を生産してきたが、国内生産抜きに装備を調達しようとしている。整備導入で実施済みの案件にはイージス護衛艦、ペイトリオットPAC-3、KC-767空中給油機、E-767AWACSがある。しかし、自衛隊には超音速巡航が可能な戦闘機がなく、巡航ミサイルの追尾ができないし、長距離の航続飛行が可能な無人機がないため本土防衛とシーレーン監視ができない。また高精度の誘導兵器があれば、遠隔地の領土を侵攻する他国の野望を防ぐことが出来るはずだし、長距離輸送機があれば国際活動としてインド洋の海賊対策とか災害救援活動も広く展開できる。

【F-22は断念するのか】 一方で、米国の政治上・予算上の問題と日本の政権基盤が不安定になっていることから、F-22調達は先が見えない状態となっている。米空軍向け生産が終了すると同機の日本向け価格は非常に高価になるので、日本の防衛省は他の選択肢としてユーロファイター・タイフーン他を検討している。さらに、F-22購入が国会で承認されるかは不確実だ。麻生首相は8月30日の総選挙を決断したが、麻生政権ならびに自民党への国民の信望が低い状態では防衛装備調達にも影響が出よう。
【本当はF-22がほしい日本】 「日本がほしいのはF-22です。しかし、日本が求めるのは実は性能であり、機体そのものではありません。日本が求める性能を発揮できるのはF-22だけということなのです。他国の脅威が解消となる見込みはありません。他国の軍事能力が増強されれば、日本は対抗して長距離で捕捉撃墜する能力がほしくなるでしょう。」(チップ・アターバック中将 第13空軍司令官 在ハワイ・ヒッカム空軍基地)「Su-30MKI(中国のSu-30MKKのインド版)を操縦する機会があり、何度も制御限界を超える操作をしましたが、全部失敗しました。非常に安定度が高く、反応性もよい機体です。MiG-29よりもはるかに信頼度が高く高性能です」(同中将)

総論的には日本がほしいのはラプターの超音速巡航飛行性能(マッハ1.6)と運用高度(6万5千フィート)ならびに大型レーダーと電子監視能力だ。その他にアクティブ電子スキャンアレイレーダーで130マイルを探知できることがあり、この距離はたまたま航空自衛隊南西航空群の責任範囲から中国東沿岸までの距離と一致する。ラプターはレーダー探知サイズが極小で探知されることなく目標機に接近できるのだ。「F-22によって米国は敵の防空網の中に侵入することができ、これまでは実施できなかった攻撃他の任務が実施できます。日本は別の見方をしています。日本は本土防空能力の向上をめざしています。F-22ならスタンドオフで防空能力が実現できますが、F-35では無理です。第五世代戦闘機の少数配備は本土防空にはきわめて道理にかなった選択となります。」(アターバック中将)

【防衛論議に予算制約の壁】 日本国内では遠距離作戦運用能力を獲得すべきか専守防衛に徹すべきかの議論が常にある。問題は両方を実現する予算があるかどうかだ。「予算使途の目標を正しく設定できれば簡単です。長距離空輸、作戦持続、ISRなのか、C4のシステムなのか、同時に違う目標を実現することも出来ます。日本政府は双方の目標を追求しているようだ。それは困難でしょう。まず、空中給油(KC-767)と長距離空輸(C-X)、ひゅうが級ヘリ護衛艦を着手しました。全部の完成を目指すと予算問題に触れざるを得なくなります。」(東京在住の合衆国政府関係者)

【国内生産の呪縛から解かれる日本】 「国内生産は引き続き防衛装備調達の決定に大きな要因ですが、かつてのような最重要項目ではなくなっています。20年前に航空自衛隊には米軍と共同で脅威に対抗する重要な作戦上の役割は持っていませんでしたので、国内生産を最優先に考える余裕がありましたが、いまや作戦効果や運用能力が一番の関心事になっています。」(米国政府関係者)
この新しい方程式の例が弾道ミサイル防衛への日本の努力増強だ。また、同国政府は輸出管理を緩和し、日米民間産業が共同してスタンダードミサイルのブロック2を開発できるようにした。その目的は日本側に米国パートナーとの共同開発を通じ、新技術へのアクセスを可能とし、市場も拡大することにあった。「日本には健全な防衛産業の基盤を整備してもらいたい。事実、われわれも利用をしたいのは日本が多くの分野で優秀だからであり、実際に依存している分野も多い。米国のミサイル防衛予算は削減されたが、ゲイツ国防長官はSM-3開発の継続のための予算確保を明確に言明している。これには日本側のノウハウと投資が組みこまれている。また、日本はペイトリオットミサイル用の部品を製造する唯一の外国である。いまや日本は製造面と研究開発の両面でより多くの達成が可能。それは両国の産業基盤にとって望ましいことであり、性能要求の観点から最適の決断が可能となっている」(上記米国関係者)

この変化の象徴が日本政府がAH-64アパッチ開発計画を大幅に制限することを決定したことだ。完成品を輸入するよりも国内生産をした場合が大幅に高価となるため。

「この新しい方針を巡ってはかなりの軋轢があったはず。これをきっかけに直接購入に勢いがつくのかが関心のまとですね。」(上記関係者)

その調達型式のリトマス試験紙となるのがF-XおよびF-XXだ。F-Xの構想は高性能超音速巡航可能戦闘機40から50機を購入するもので、F-22あるいはタイフーン類似機となろう。その後のF-XXの要求水準はF-35JSFの内容と類似している。

F-22輸出が最終的に承認されれば、日本側で同機を製造する余地はごくわずかとなる。防衛関係者は日本には高速、高高度対応可能戦闘機で広範囲の島嶼国家として中国国内150マイルまでの範囲で作戦可能な機体が必要と主張している。「日本は数ヶ月前に沖縄にF-4の交代としてF-15を移動させている。これは航空自衛隊が運用域を意識していることのあらわれだ。これまで日本はF-22を切望してきたが、ゲイツ長官が2010年度国防予算案を発表した際を境に米空軍がF-35を今後の中心にすることが明らかになった。

【日米相互運用は高まっている】 相互運用、基地共有、訓練・運用の共同化は既成方針だ。日本側の基地施設を米国他の航空機分散配置に利用する計画も進展している。2006年に合意された米軍基地の再配備では航空訓練施設の再配備も含まれている。戦闘機部隊を一時的にこれまで米軍がアクセスしていなかった基地に配備し、航空自衛隊との共同訓練を展開するもの。日米両国はこの構想を拡大したいと希望しているのは、緊急即応性の向上に定期的な機材配備が有益と判断されたため。

【海外での運用体制拡充が今後の方向か】 海賊対策の運用が安全保障に関する政策判断と政治的な判断のもうひとつの局面となる。日本の関与は空中給油機、海上監視機、長距離輸送機の導入の理由付けとなる。日本の防衛予算編成は国際的な関心の対象でもある。例を挙げれば、同国の長距離輸送能力はまだ初期段階だ。これがはるかかなたの場所に駐留する部隊を運用することになれば、通信、補給、運用維持の問題が浮上してくる。さらに、人道援助や災害復旧の目的に海外派遣を実施する能力の必要性はすでに認識されている。

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