2016年12月11日日曜日

ヘッドラインニュース 12月11日(日)


12月11日のヘッドライン

筆者が注目する記事の要約を掲載しています。時差・掲載時間の関係でその後進展した内容と食い違うことがあります。


KC-46Aの15機調達へ道開く
2017年度早期の国防支出内容を定めた法案で米空軍が求めてきたKC-46Aの量産機調達が可能となる。現行の支出権限は12月9日に期限切れとなるためのつなぎ措置で議会通過は確実と見られる。その他AH-64アパッチ、UH-60ブラックホークの調達継続も可能となる。

ウェルシュ前参謀総長がノースロップ・グラマン取締役へ
空軍参謀総長を務めたマーク・ウェルシュはテキサスA&M大で行政学部長だが、ノースロップは役員に任命すると8日発表した。同社にはマイヤース前統合参謀本部議長、ラフヘッド前海軍作戦部長が役員となっている。ボーイング、ロッキード両社にも同じ傾向がある。

サウジ、UAEへ大型装備売却案件が実現へ
次期米議会が承認すればチヌークのサウジアラビア向け、UAEヘアパッチ、モロッコへTOWミサイルの売却が可能となる。総額79億ドル。その他すでにカタール、UAE向けの戦闘機売却が先に承認されており、国貿安全保障協力庁が所管する武器輸出は2016年に336億ドルに上る見込み。

中国の新型爆撃機H-20
馬空軍司令官は中国が新型長距離爆撃機H-20を開発中だと述べている。完成まで時間がかかるようだが、B-2に匹敵するステルス性能を目指しているという。現行のH-6は性能に厳戒があり、真の戦略爆撃機とは言えない。


2016年12月10日土曜日

★機体喪失連続で露呈したロシア海軍の航空運用面の弱点



ロシア海軍のレベルが相当低いということですね。一隻しかない空母で象徴的な意味があるのですが、事故が立て続けに発生しロシアのプライドはガタガタですね。米海軍に張り合うのは無理ということですね。中国もこの事例を観察しているはず。沿海部限定で運用するのなら米国流の運用は必要ないのですが、遠洋航海させれば建造中の新型空母も同じ問題に直面するのではないでしょうか。


We go to war so you don’t have to
The Russian carrier ‘Admiral Kuznetsov’ escorted by the British Type 45 destroyer HMS ‘Dragon’ in 2014. Royal Navy photo

Two Big Reasons Why Russia’s Aircraft Carrier Is Having So Many Problems

Inadequate training and poor procedures

by DAVE MAJUMDAR
ロシア海軍はアドミラル・クズネツォフ艦上で艦載機二機を数週間のうちに連続喪失している。同艦はロシア唯一の空母だ。
  1. 両案件ともクズネツォフの機体回収拘束装置の不良が原因で、MiG-29KUBRフルクラムDとスホイSu-33フランカーDの喪失という高い代償になった。
  2. 確かに同艦の各種装置は旧式化しているがもっと大きな問題はロシア海軍の航空運用経験が浅く、洋上での航空機運用の技術が不十分なことだ。
  3. 先に発生したMiG-29KUBRの事故は11月14日のことで燃料切れで地中海に墜落した。同機は甲板要員が拘束ケーブルが切断したのを治そうとする間、上空で待機していた。
  4. ケーブルは別のMiG-29KRが先に着艦した際に切れた。
  5. 二回目の事故は12月5日に発生し、今度はSu-33だったがやはりケーブル切断が原因だった。
An Su-33 on ‘Admiral Kuznetsov’s’ deck in 1996. U.S. Navy photo
  1. 海軍航空部隊の運用では危険がつきものだが、ロシアの場合は経験不足に加え、運用技術が未成熟な点が問題だ。クズネツォフの構造にも原因があるが、安全運行の手順を整備してこなかったことが責められよう。
  2. クズネツォフは1990年12月就役の古い艦だが艦齢は問題ではない。米海軍の空母にはもっと長く供用されながら完璧に機能している艦が多数ある。ニミッツ、アイゼンハワー、カール・ビンソン、セオドア・ロウズヴェルト、リンカンはクズネツォフより前に就役している。
  3. さらにUSSエンタープライズは50年間も供用されたが、1962年の運用開始初日から航空機運用が可能だった。
  4. 米海軍が半世紀も空母運用できるのは各艦の状況を維持管理できるだけでなく乗員を効率的に訓練しているからだ。
  5. これに対しロシア海軍はソ連崩壊後の25年間もクズネツォフの維持管理ができていない。また乗組員も安全な洋上運用の技術習得ができていない。
  6. 米海軍の超大型空母でもケーブル切断は発生する。
  7. 記者の知己もUSSキティ・ホークで2005年にケーブル切断で危うく一命を落とすところだった。乗機F/A-18Fスーパーホーネットは海上に落下している。一方、艦上では切断ケーブルがのたうち回り大混乱となり、機体損傷と人員負傷が発生した。ケーブル切断で実被害が発生することは米海軍空母艦上ではまれなことだ。
  8. クズネツォフで三週間未満に事故二件が発生したのは重大な問題があることを示唆している。
  9. 「ケーブルの分離切断が発生すると負傷、死亡事故に至ることがある。ケーブルはどうしても切れるものでその場合は切断したケーブルを取り外し本数を減らしたまま運用する。きわめてまれな事故だが予防可能であり、一旦発生してしまえば重大な事態になる」と経験豊かな海軍パイロットが教えてくれた。
‘Admiral Kuznetsov’ with the British destroyer HMS ‘York’ in the background in 2011. U.K. Ministry of Defense photo
  1. 先に発生したMiG-29KUBRの喪失事故ではロシア指揮官の判断がまずかった。本来なら機体をシリア陸上基地に誘導すべきだった。
  2. 米海軍が沿岸近くで空母を運行する場合は緊急時の代替飛行場を先に指定し艦上回収ができない場合に備える。
  3. また給油用スーパーホーネットを滞空させて僚機の着艦用の燃料を確保している。クズネツォフには給油機がなく、給油用改装を施した機体もない。ロシアは代替飛行場を緊急用に確保しておくべきだった。
  4. 「空母が航空部隊の初回運用時は戦闘作戦能力(COE)評価に合格するまで代替戦力扱いのままだ。また空母でトラブルが発生すると代替戦力に分類される。たとえば原子炉が一基しか作動しない場合」と別の米海軍パイロットが教えてくれた。
  5. 「艦に問題があると固定翼機の着艦は危険になるので、代替運用に切り替え、200カイリぐらい以内なら別の飛行場に着陸させる」
  6. 米軍事力を世界各地に投射する有効な手段として米海軍は空母運用を安全に行える各種手順を準備して、陸上基地から遠くはなれた大洋の真っ只中で可能にした。
  7. そうなると米海軍を世界規模で作戦可能にしているのはハードウェアとしての艦の状態や艦齢だけではなさそうだ。乗組員への訓練の効果であり標準作業の中身が重要だ。ロシアが米海軍の水準に肩を並べるまでにはまだ相当の時間がかかるだろう。■


12月10日のヘッドラインニュース


12月10日のヘッドライン

筆者が注目する記事の要約を掲載しています。時差・掲載時間の関係でその後進展した内容と食い違うことがあります。

F/A-18ホーネットの事故喪失は6ヶ月で9機に
12月7日に高地県沖で消息を立ったホーネットは岩国基地所属の海兵隊F/A-18C/Dの可能性が高い。「レガシーホーネット」の事故はこの半年で9機目というのはいかにも高い。

次期エアフォースワン価格切り下げは可能
ボーイングはトランプの政権移行チームに政府による要求水準を下げれば機体価格も下げられると伝えてきた。トランプ次期大統領は空軍の事業費が高すぎると異議を唱えていた。空軍が想定する研究開発費用は32億ドルで二機の747-800改造型を2021年度までに調達するもの。総額はこれ以上に増大する見込みだが、747-800標準型単価は2.25億ドル。これに対し空中給油能力等、必要な装備性能が違うのだから単価が高くなるのはやむを得ないとの専門家指摘もある。

英海軍最後のインビンシブル級空母が退役
HMSイラストリアス(22,000トン)がトルコに向けて出港し、スクラップ処分される。冷戦時に建造されたインビンシブル級はこれで全艦が消えた。これで英海軍の戦闘艦は26隻にまで減少する。2020年代には新型空母クイーンエリザベス、プリンス・オブ・ウェールズの二隻が加わる。

イスラエル向けF-35初号機引き渡し式典にカーター長官出席
二機がイスラエルに来週到着するのに合わせ、カーター国防長官が現地に出張する。


MQ-4C UAVに空中衝突回避装置を装備
ノースロップ・グラマンはMQ-4Cトライトンに空中衝突回避装置を搭載する契約を交付され、民間空域での安全な飛行が実現する。


世界最大の通常型潜水艦「清」級で中国は何を狙うのか
032型と呼称され、2010年に運用開始した潜水時排水量6,628トンの同艦は巡航ミサイル、SLBMの双方を運用可能。ただし中国近海を離れることなく、公式説明通りミサイル試験用なのか、次期艦へのつなぎなのか、パキスタン向けなのか、評価は別れる。武装は目を引くが、その他性能は月並だ。中国がAIP推進による新世代潜水艦運用を想定している可能性はあるだろう。



2016年12月9日金曜日

歴史のIf ③ 真珠湾攻撃を実施しなかったら日本はどうなっていたか



米海軍大学校教授が真珠湾攻撃の背景、日本の対米戦に備えた戦略体制、そして今日の世界に通じる教訓をまとめていますのでお送りします。切羽詰まるととんでもない決断が出てくる日本人の心理は今でも同じでしょうか。戦争に勝つことはそもそも何の目的なのか、手段と目標、目的がうまく整理できないと単なる狂乱の世界になってしまいます。75年後の我々は果たして思考を確立しているでしょうか。

The National Interest

Why Japan Failed at Pearl Harbor

USS Arizona burning after the Japanese attack on Pearl Harbor. Wikimedia Commons/Public domain
Tokyo knew it was awakening a “sleeping giant.” So why did it attack?
December 6, 2016

真珠湾で75年前に起こった史実からアジア太平洋の海軍国としてのアメリカの未来に何が言えるだろうか。敵国の視点で見てみよう。

  1. なぜ日本は攻撃に踏み切ったのか。何もしない選択肢も効果を上げることがある。日本帝国が真珠湾攻撃を実施せず西太平洋だけに専念していたらより有利な状況になっていたはずだ。当時の日本政府が自制心を示していれば「寝た子を覚ます」と山本五十六が一番恐れていた事態を回避できたのではないか。またアメリカの眠りをさましてしまっても日本撃滅への「恐るべき決意」は回避できたのではないか。次の論点を見てみよう。

  • オアフ島を攻撃した日本は中国大陸で大規模地上戦を展開しながら太平洋で戦線を拡大してしまった。ハワイ攻撃の時点で日本は10年も戦争をしており、満州侵攻を1931年に、中国本土で1937年に戦火を拡大している。1945年の戦争集結時でも中国・満州・朝鮮に180万の日本軍が残っていた。地上戦の規模の大きさが判り、海上戦と比較できる。
  • 日本は遥かに大きな経済力産業力を有する相手に戦いを挑んだのみでなく、敵国の戦意に火をつけ日本が相手にならない規模の軍事力が向けられた。1940年の米海軍建艦予算だけで日本海軍の10年分の建艦予算より大きい。そんな相手に日本は立ち向かった。
  • 眠れる巨人が目を覚ますと日本指導層は戦略方針を見誤り、確保した広大な占領地を守ることに目を奪われ、新しく生まれた事態へ順応できなかった。

  1. 強い相手と戦う道を選択した場合、相手を怒らせて敗北を認めないと「自滅行動」の可能性が高まるが、まさしくこれが日本軍で発生している。またその反動は予想できるものだった。日本軍にも強い洞察力を有する軍人がおり、結果はわかっていた。
  2. 山本五十六提督はその一人で戦争をどう終わらせるかを先に考えていた。対米戦は「世界全体と戦うこと」と同じと考え、米国が産業力を一旦全開にすれば物資面で対抗できなくなるとわかっていた。事実、山本は「どうしてもと言うなら海軍は開戦直後の半年や一年なら暴れてみせるが、二年三年となれば自信がない」と政府上層部に語っている。
  3. 山本は正しかった。戦争が四年続き、1943年後半になると米海軍は1940年に議会が承認した両洋艦隊整備の成果で新造艦艇が戦闘に投入されてきた。山本の予想どおりの事態になり、日本帝国海軍は圧倒されてしまう。
  4. 山本は正しかった。日本は緒戦で勝利するしかなかったのだ。だが山本にも誤りはあった。真珠湾攻撃で同時に帝国海軍は短期勝利の可能性を失った。では結果が予想できたのになぜ実施したのか。どうすべきだったのか。
  5. 75年前に「あの時こうしていたら」と考えることになる。海軍大学校の戦略論教授としてはドイツ戦略論の神聖なるカール・フォン・クラウゼヴィッツを言及せざるを得ない。カールならこう言うだろう。「事後にならなんでも言える」
  6. 過去の失敗から学ぶことは戦闘指揮官や政治家がどこを誤ったのかを後になってから批判することではない。真の意味で学ぶためには実際の結果より優れた結果になっていたはずの別の可能性を思いうかべる必要があるのだ。
  7. 口ばかりの評論家を好む人は皆無だろう。クラウゼヴィッツ流にはどうしていたらよかったのか、と尋ねることだ。敬愛するテディ・ローズヴェルト流に言えば主役は血と汗を流して結果を得る選手だ。そこで別の可能性も検証が必要だ。米海軍大学校は「批判的分析」と呼ぶ手法を用いる。
  8. 日本海軍の戦略上の誤りがどこにあったのかを知り、南雲忠一提督の空母機動部隊をハワイまで派遣して暴れさせた戦術上の失敗の本質を考察してみたい。日本が真珠湾攻撃に踏み切ったのは誤りであり、航空部隊による真珠湾攻撃でも誤りを犯した。
  9. まず日本側の戦略が戦略的に誤りだった。日本は太平洋で何がしたかったのか。単純に言えば、日本と米国で太平洋を分割したかったのだ。アジアの「第二列島線」として日本、グアム、ニューギニアに至る線から西の海洋、空域、陸地を支配しておきたかったのだ。
  10. この野望を実現すべく、資源に乏しい日本には原材料輸入が死活を握り、主に東南アジアを供給源と見ていたことで侵攻案にはずみをつけてしまった。
  11. 当時の日本は領土・資源を確保し、長大な防衛線で列島線を外部から遮断しようとした。20世紀初頭には次の対戦相手は米国だと認識した戦略家はすでに1865年に清国の海上戦闘力を打破し、1905年にロシア海軍も破ったことから極東ではロシア海軍力は再興してこないと見ていた。
  12. 米海軍が日本海軍の次の相手になった。当時は米海軍大学校も軍事力を遠距離投射で日本本国まで進出する方法を検討していた。
  13. 日本が地政学で何を狙っていたかを考えてみよう。日本が防衛線を東や南に伸ばすのは円をひろげるようなものだ。日本本国から遠く離れた地点を艦隊の活動範囲にすることになり、日本は一層広い海域を求めることになる。そうなると防衛最前線が移動し、実際に1942年にはガダルカナルまで広がった。円が広がると日本海軍の力は薄まる。1942年中頃に山本提督の予想を超えるまでに広がっていた。
  14. 広大な海域を支配することほど厄介なことはない。防御線が長いと陸上海上問わず困難になる。防衛側は攻撃側より各地点で強い体制の維持を迫られる。だが突破不可能な防御網を数千マイルにわたり維持することは不可能だ。
  15. 端的に言えば日本は自ら不可能な状況にしていたのであり、米軍の攻勢が本格的になればひとたまりもなかった。実施にそうなった。クラウゼヴィッツによれば戦争の行方を決めるのは物資面と意思の両面の力の総和だ。米国は経済産業で世界最大とは言うものの軍事面では力を投入する意思が不足しており弱さを露呈していた。
  16. 日本は米国を弱体化できたはずだ。挑発的な態度を押さえていれば。アメリカを一気に戦争に走らせなければ、広大な軍事区域を確保できていたはずだ。その途中で米領土の攻撃は避けられなかったかもしれないが、米国民にとってはさほど重要ではない地点がフィリピンだった。米国でフィリピンの場所を地図で示せない者が大部分だったくらいだ。フィリピン以外に戦火が広がらなければオアフ島攻撃後に生まれた怒りにはつながらなかったはずだ。
  17. いかなる民主国家も国民の支持が得られなければ開戦できない。真珠湾攻撃で一般国民が示した怒りがなければ、米軍は限定的な反撃を太平洋各地で行うのが精々だっただろう。中途半端な姿勢は日本にとって益になったはずだ。
  18. 真珠湾攻撃は米国民に報復感情をかきたてた。これがチェスター・ニミッツ海軍大将とダグラス・マッカーサー陸軍大将による二方面反攻作戦を後押しし、日本は眠れる巨人を起こしてしまったのだが、そこまで怒りの感情を引き起こさせず、米国による暴虐な反撃を招かなくてもすんだかもしれない。
  19. 日本は米反攻は限定的だと長年想定してきた。日本軍がフィリピンから米軍を駆逐する想定は実現した。米太平洋艦隊がフィリピン奪回のため遠征してくる想定だった。太平洋艦隊が聯合艦隊を戦力で上回っているは理解していた。したがって米海軍を分断化して日本海軍と同等にしておく必要があった。
  20. そこで日本海軍は「要撃作戦」構想を掲げ、航空機、潜水艦を太平洋外縁部の島嶼地帯へ配備し、米艦隊を小規模攻撃の連続で弱体化させてから主戦場に移動させようとした。決戦は清国やロシアとの決戦の再来で米艦隊残余勢力を西太平洋で一気に全滅させる構想だった。
  21. 日本海軍は中途で勢力を減衰させれば米海軍本隊の撃滅は可能と信じていたが、自国近辺で強力な敵勢力を相手に優位に立つのは困難だ。そこで米海軍の戦力を漸次奪う作戦が想定され、西太平洋に進出する米海軍に相当の代償を払わせようとした。
  22. フィリピン喪失の場合でも米国は合理的に行動していたはずだ。喪失はそのまま受け入れ、西太平洋から撤退し、日本の独壇場にする。日本は艦隊決戦せずに目的を達していたはずだ。
  23. そうなると真珠湾攻撃は戦略としては絶望的な誤りだったとわかる。真珠湾攻撃を避けていても欲しいものは全部あるいは一部手に入れていたはずだ。日本は長期的な戦略上の勝利と一時にすぎない戦果を交換してしまった。真珠湾内の米戦艦群への攻撃は「自滅行為」の開始にすぎなかった。
  24. それでも日本は真珠湾攻撃を実施してきた。理由はなんだろうか。
  25. その一部に日本指導層が以前の歴史に影響されていたことがある。歴史の記憶が海軍を支配していた。日露戦争は日本が先制攻撃して開戦となった。旅順港での魚雷攻撃は決定的な被害をロシア艦に与えられなかった。ロシア艦は要塞砲に隠れる臆病さを晒した。港外では東郷平八郎率いる連合艦隊の砲火が待ち受けていた。旅順港の戦史が真珠湾の前例として重要視された。先制攻撃は1904年同様に臆病な米司令官を怖じけつかせるはずだ。.
  26. そして対馬海峡海戦が日露戦争のクライマックスで鮮明に記憶に残っていた。ロシア皇帝はバルチック艦隊を極東へ派遣する命令を出す。英国がスエズ運河通過を拒否したため、艦隊はアフリカ経由でインド洋・シナ海を移動する。これで18千マイル遠回りとなり、その間に艦の点検修理はできなかった。東郷長官は対馬でロシア艦隊の到着を待ち受けていた。
  27. 日本は旅順港と対馬海戦の戦例から対米戦を構想した。とくに対馬の戦訓から迎撃戦術が練られ山本自身も同海戦を経験し、1941年の世界にそのまま持っていったのだ。結果として12月にハワイが空爆を受けたが、旅順港奇襲とは異なる威力を発揮したのは承知のとおりだ。
  28. 攻撃が誤った判断だったとしても日本は成果をむりやり生んでいる。日本帝国海軍が12月7日に取った戦術を見てみよう。旅順港奇襲時と明らかな相違がある。旅順は日本から黄海をへて中国沿海部にあるが、真珠湾は数千マイル彼方の地点だ。東郷時代の連合艦隊はロシア艦を攻撃して旅順港を封鎖できたのは近隣地に港湾を確保していたからだ。南雲機動部隊は燃料も乏しくハワイ近辺で長期作戦を維持する物資もなく、補給能力の限界を超えた作戦だった。
  29. 真珠湾攻撃はこの意味で旅順港襲撃とは違い一回きりの攻撃の性格が強い。両事例とも先制攻撃でありながら中途半端な攻撃に留まっている。1904年の日本艦隊はその後も攻撃を加えたが、1941年はできなかった。
  30. そのため、南雲部隊の航空兵力は太平洋艦隊の攻撃に集中した。ニミッツ提督がオアフに着任し太平洋艦隊の指揮を継承し、日本海軍が戦艦ばかり執拗に狙い、他の標的は手付かずという失態を犯したと気づく。米空母は当時海上にあった。空母が損傷を受けていれば大打撃だっただろう。だがニミッツは補給施設が無傷だったことを日本の失態とした。航空部隊が乾ドックを使用不能にしていれば損傷艦修理もままならかった。燃料廠も攻撃できたはずだ。
  31. 補給支援能力がなければ艦隊機能は喪失する。日本の作戦立案部門が賢く選択をしていれば主力艦ではなく艦隊施設を標的にしていたはずだ。乾ドック、燃料集積地、他給油艦、弾薬運搬船、駆逐艦、潜水艦、水上機母艦等だ。その場合は米反攻は相当遅れる結果となり、日本帝国は占領地強化に時間が稼げたはずだ。
  32. 戦時中の東條英樹首相は米海軍の洋上補給能力により戦闘艦艇が常時海上にあったことが太平洋での戦いの決定的要因だったとまとめている。同首相は処刑されたので、正しく天上からの証言だ。
  33. 真珠湾攻撃がなくても米国は太平洋で開戦していたはずと主張する向きがある。同盟国が攻撃を受けており、米国は名誉にかけて戦火を開いていたはずというのだ。たしかに日本軍はフィリピンを攻略していただろう。フィリピンは「南方資源地帯」から日本本国への航路の途中にあり、当時は米国領だった。米国の軍事拠点が経済生命線の途中に残ることは日本には許容できず、米国も自国領が攻撃を受けるのは甘受できなかった。
  34. これは否定しようがない。米大統領フランクリン・ローズベルトは英国との同盟関係を重視し、オランダトも同様だった。だが2つ考えるべきポイントがある。まず、フィリピンが攻撃されても太平洋での攻勢には米国内で支持が集まらない可能性があった。真珠湾攻撃の後に生まれた感情とは同等にはならなかったはずだ。
  35. つまるところ太平洋の戦いだけではなかったのだ。米国は英国の兄弟国として大西洋に目を向けざるを得なかった。ヒトラー率いるドイツとの戦いが第一だった。真珠湾攻撃や太平洋の戦いは二の次の問題だった。であれば日本には時間面で有利になっていただろう。
  36. 二番目に米海軍、海兵隊、陸軍が太平洋を西へ進軍開始しても日本は戦前構想で守備体制を整えていたはずだ。米軍はヨーロッパの戦闘に疲れて攻撃姿勢が中途半端だったかもしれない。
  37. 日本は各島の要塞化を強め、米軍は耐えがたい損害を受けていた可能性もある。米政府は和平交渉に応じ、日本は東アジアで不動の地位を固めていただろう。日本は戦前の戦争計画通りに自制心を示し慎重になっていたはずだ。要撃作戦はのるかそるかの先制攻撃より大きな戦果を上げていたはずだ。
  38. ではこの史実は今日の世界にどんな教訓を与えてくれるだろうか。まず、米国は西太平洋で75年にわたり残っているが、米海軍の補給線は怖くなるほど薄い。日本海軍が実施すべきだった補給能力への攻撃は今日も有効だ。敵の立場ならためらわず実施するだろう。中国やロシアが日本と同じ失態をするとは期待できない。
  39. 二番目に中国やロシアから大損害を受けても今日では短時間に戦力を再整備するのは困難だ。次期政権は350隻海軍体制を目指すとし、現時点の272隻を増強するとしている。だがまだ議会の承認した新造艦船は一隻もない。また建造可能数も多くない。1940年の両洋艦隊法案に匹敵する法案はまだない。強力な海軍力や合同部隊の必要性は強調すべきで、損傷を受けても戦い続ければ勝利が得られる。
  40. 三番目に次回の敵が日本帝国同様に無分別とは期待しないほうがいい。1956年にドワイト・アイゼンハワー大統領からジョン・フォスター・ダレス国務長官に「何もせずにそこで突っ立ってろ」と命じたと言われる。無行動が賢い戦略になる。昔ながらの方法が一番のこともある。行動しなくても良いのなら機会を無駄にすべきではない。
  41. 中国は日本と違い海軍力空軍力を自国周辺部に整備してアジアの秩序地図を書き換えようとしているようだが、米国主導のこの秩序が自由な海上交易を保障してきたのだ。狡猾かつ自己主張に長けた中国は戦争は避けようとしている。
  42. 中国は山本の事例を学んだ強敵だ。眠れる巨人を起こさず、起こしても決起させるべからず。時遅しとなるまで眠られせておく。さすれば勝利できる。真珠湾攻撃からの教訓を真剣に学んだのは中国だ。これに対して当方は今回もぬかりなく備えておくべきだ。これができれば75年前に命を捧げた先達は再び国に仕えることになる。
James Holmes is Professor of Strategy at the Naval War College and a recent recipient of the Navy Meritorious Civilian Service Medal. The views voiced here are his alone.
Image: USS Arizona burning after the Japanese attack on Pearl Harbor. Wikimedia Commons/Public domain



ヘッドラインニュース 12月9日


12月9日のヘッドライン

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韓国議会がF-35価格上昇に疑問を呈す
韓国国防部が提示した機体価格2割上昇を拒絶した。一方でF-16関連では提出案より予算増を認可している。韓国向けF-35の引き渡しは当初より遅れている。次年度国防予算は40.3兆ウォン(345億ドル)となる。


トランプ大統領を待ち受ける国防上の難題
米国防予算は10年間5000億ドルの削減を予算管理法で求められているが、トランプは選挙運動中、強制削減の撤廃、軍備の大幅拡張を公約していた。これには共和党内部でも実現は難しいとの声が上がっている。


国防総省は1,250億ドルを無駄遣いしていたのか
ワシントン・ポスト記事でホワイトハウスも対応を迫れているが、もともと2015年1月にDefesen Newsが報じていたもの。業務維持管理予算として省共通(870億ドル)、航空機(588億ドル)、陸上部隊(487億ドル)等が計上されていた。

米国はアフガニスタン軍向けMi-17ヘリをロシアから購入
購入は終わったが、ロシア製ヘリの保守管理予算をどう捻出するかが問題だ。ブラックホーク、カイユース両米製ヘリへの移行までの前提だったがアフガン軍は大型ミルヘリコプターを多用している。ただしロシア製機体の購入には怪しげなクレムリン関連企業が絡んでいる。

中国 新型対潜ミサイルが開発中か 
中国CCTV映像からのキャプチャーは不鮮明だが、空気取り入れ口があり、ターボジェットあるいはターボファンで発射後に飛翔するようだ。米アスロックと同様に潜水艦ソナー探知により目標近くで魚雷を投下する機能があると思われる。中国は軽量魚雷Yu-7を使用しており、40ノットの速度を確保しているとされる。


2016年12月8日木曜日

12月8日のヘッドラインニュース


12月8日のヘッドライン

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トランプ次期大統領が新型大統領専用機調達に異議
ボーイングと価格交渉し、値下げにならなければ調達を取り消すと本人が12月7日述べた。ボーイングCEOムレンバーグと6日に電話会談していた。747-8を原型とする次期専用機の開発費は28.7億ドル、会計検査院の事業費見積もりは32億ドルだが、ボーイングは今のところ1.7億ドル契約しか交付されていない。仮に中止となればボーイングのみならず航空宇宙産業に大きな痛手となる。

国土安全保障省長官にケリー元将軍
トランプ次期大統領はマイク・ケリー退役海兵隊大将を任命する。ケリーは米南方軍司令官を最後に退役しており、マティス将軍同様に軍での活躍が知られている。ケリーはオバマ政権の中東へ地上軍は送らない政策、グアンタナモ基地の閉鎖方針にともに反対の姿勢を示していた。

新型バンカーバスターの要求性能水準を示した米空軍
現行のBLU-109/B、 BLU-109C/Bに代わる装備となるBLU-137/B貫通爆弾の要求性能が12月2日開示された。採用されれば15千発量産される。弾頭部は2千ポンドで従来型と同様だが、残存性、威力で向上するとだけ明らかになっている。


トランプ政権移行チームに反イラン派が集まる
安全保障専門家にイランに対して強硬な意見を有する者が多い。オバマ政権が進めたイラン政策にはかねてから反対意見があった。国防長官候補のマティス大将やCIA長官候補のマイク・ポンペノ下院議員(共カンザス)に加え安全保障担当補佐官に名前が上がるマイケル・フリン退役陸軍中将とつながる。


SM-3IIAの大気圏外迎撃テスト近づく
ミサイル防衛庁とレイセオンは新型迎撃ミサイルの試射に向けて準備中。SM-3をさらに大型化した新型ミサイルはヨーロッパの陸上ミサイル防衛施設への配備が期待されている。開発には日本も参加している。





2016年12月7日水曜日

★主張 真珠湾攻撃から75年で日本は破壊者から世界秩序の守護者に変容した



12月7日我真珠湾攻撃75周年であり、いろいろな考察が米国から出てきていますが、日本への視点も多様なようです。安倍首相の動きはともかく、ヴィエンチャン・ヴィジョンがなぜ日本国内で黙殺されているのか不思議ですね。著者の近刊End of Asian Centuryはどんな要旨なのか、興味を惹かれます。

The National Interest


75 Years after Pearl Harbor, Japan Is a Key Defender of Global Stability

Japan Maritime Self-Defense Force helicopter destroyer JS Kurama performs maneuvers during integrated maritime exercise Koa Kai. Wikimedia Commons/U.S. Navy
How Japan became a key force for order, not disorder.
December 6, 2016

75年前の今日、日本は西側諸国に奇襲攻撃を加え、太平洋での戦いの幕を切り帝国軍による戦争犯罪は四年度の広島、長崎への原爆投下で終焉を迎えた。米国では日曜日早朝の出来事として語り継がれる真珠湾攻撃で日本軍が狙ったのは欧米を東南アジアから一層し石油等資源禁輸を反故にすることで国力衰亡を食い止めることだった。同日中に香港、マラヤ、フィリピン、シンガポールは海空からの攻撃を受け翌1月にその他東南アジアも侵攻し、力の均衡を破り、日本主導の新しい地域内秩序が生まれた。
  1. 安倍晋三首相が12月後半に真珠湾を訪問しバラク・オバマ大統領に合流すると発表され、屈辱の日の歴史が閉じることになる。さらに11月には稲田朋美防衛相が日本-ASEAN間で初の防衛構想を立ち上げた。「ヴィエンチャン・ヴィジョン」として第二回日本ASEAN防衛相会談で発表されている。海洋安全保障と国際法支配をアジアで強化する目的で安倍首相は日本を戦後体制の守り手として位置づけようとしているのは、1941年の同国とはまさしく反対だ。
  2. 敗戦の灰燼と世界から受けた屈辱から始まった日本の戦後史は恩恵を多大に受けつつ貢献も果たしてきた自由な世界体制は米国はじめとする連合国の勝利の結果だ。1945年から1952年までの占領期の日本は部分的にせよ占領国を模範とし、戦時関係者を追放し、独占資本体制を解体していたが、1950年の朝鮮戦争勃発でこの動きが止まった。日本は米国の世界規模での政治軍事上のプレゼンスに不可欠な存在になった。
  3. 米国による占領後10年間は軍事力をほぼ放棄してきた日本は世界に例がない存在で、米国が起草した1946年憲法の有名な第九条がこの象徴として戦争を永遠に放棄するとしている。当時の吉田茂首相以後の総理大臣は日本防衛は米国任せとし、代わりに産業復興と市場確保に全力を費やしてきた。1964年に東京はオリンピック競技を開催し、戦後復興とともに世界最速の経済成長を見せつけた。その後、日本は世界第二位の経済規模となり、家電製品からジャストインタイムの在庫のしくみまで常識を書き換えた。国民の生活水準は世界最高の水準まで向上し、日本の美意識は自動車からインテリアまで影響を与えた。
  4. それでも日本は経済規模に見合った政治的影響力、軍事力をともに整備せず超大国をめざさなかった。憲法上の制約から平和国家となり大きな国際責任で経済発展が阻害されることを防ぐ日本は世界の中で閉じこもった観があった。1990年代に経済成長が止まると日本の対外影響力も同様に衰え、同時に中国が日本の経済規模を上回り、米国に真っ向から挑戦する国として登場した。
  5. 今日の日本は経済でも軍事力でも中国の後塵を拝するが、安倍首相は大胆に自国をアジア政治面で表舞台に立たせようとしている。このため従来は実施できなかった軍事協力活動を対外展開し、防衛予算を増額し、米国との同盟関係を深化させている。さらに防衛装備品を東南アジア諸国へ供与し始めた。インドとの関係を強化し、南シナ海での日本のプレゼンスを強め、今度はASEANとの防衛協力体制を立ち上げたのだ。
  6. 安倍首相の動きは国内外で問題視されている。特に中国はこれを自国による域内覇権への挑戦と受け止めている。だが安倍首相がひるむことなく目指すものは戦後自由国際秩序の強化であり、日本はいかなる国よりもこの恩恵を受けてきたとし、ロシア、ISIS、イラン、北朝鮮、中国が突きつける課題に対応しようとしている。歴代の前任者が過去の戦争の謝罪にとどまっていたのを先に進めることで日本を世界安定の守り手として位置づけようとしているのであり、70有余年前に世界を破壊する方向で動いたのとは真逆の姿勢なのだ。■
Michael Auslin, a resident scholar at the American Enterprise Institute, is the author of The End of the Asian Century, which will be released in January.
Image: Japan Maritime Self-Defense Force helicopter destroyer JS Kuramaperforms maneuvers during integrated maritime exercise Koa Kai. Wikimedia Commons/U.S. Navy