X-2公開で事情をよく知らないマスメディアなど大騒ぎしていますが、さすがアナリストの視点は冷徹ですね。いよいよ日本も国産開発にこだわる姿勢を捨てて費用対効果、リスク低減効果を大上段に国際共同開発に進むのか、いくらお金をかけても国内産業基盤整備を貫くのか方向を決めなければいけない時期にきているのでしょう。(これは航空関係だけの話ではありませんが)皆さんはどう思われますか
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Japan Faces Challenging Choices for Cash-Strapped Air Force
By Paul Kallender-Umezu, Defense News11 a.m. EST February 14, 2016
TOKYO — 航空自衛隊へ懸念が高まっている。第五世代機導入を少数にとどめ大部分がF-2とF-15で構成する第四世代機のまま、相互運用性がない機種を開発していいのかという声だ。
- 現状の予算では航空自衛隊はF-35をわずか42機しかも年間数機のペースで調達するが、貴重な財源を旧式機の改修に割り振っている。今年の航空自衛隊の調達はF-35を6機、F-2の近代化改修はデジタル通信装置をつける11機にとどまる。
- 鳴り物入りで公開に踏み切った第五世代機X-2心神ステルス実証機および海上自衛隊のDDHいずも級ヘリコプター空母への短距離離陸垂直着陸F-35Bの導入可能性は航空自衛隊が分かれ道にきていること、より実効性のある戦力整備が課題であることを示す。しかし実施できるのか。
- Tealグループ副社長のリチャード・アブラフィアは予算制約、費用とF-2に将来がないことから、航空自衛隊が想定するシナリオではF-35追加調達とF-15改修の可能性が一番高いとみる。日本が新型のF-15を導入する選択肢もあるが、42機のF-35が優先順位が高く追加F-15の予算はねん出不可能だろうと語る。
- 「F-15が今後も航空自衛隊の最重要機種の地位に留まるのは確かです。航続距離、ペイロードでF-15は大変有能な機種で改修が高い優先事項です。F-15はF-35と相乗効果を上げるが、F-2改修はどちらかといえば三番目の優先事項でしょう」
- 「日本はF-35に相当の投資しているとはいえ、今以上の機数をすぐには調達できない状態です。F-2の重要度は国内防衛産業の温存だけといってよい」と語るのはスティーブン・ガンヤード(アヴァセントインターナショナル社長)だ。ガンヤードは一番すっきりする選択肢はF-15の改修で、航空自衛隊のF-15は耐用年数は残っているものの性能改修は避けて通れないと指摘した。
- 「日本にとっての脅威は中国の戦闘機ではなく、数千発に上る巡航ミサイル・弾道ミサイルで九州から南が分断されてしまうことです。これこそF-35とAESAレーダー搭載の改修F-15が必要な理由で低空飛行する巡航ミサイルの一斉発射に対抗するのです。同時に南西諸島には移動式レイルガンの配備が重要になるのではないでしょうか」(ガンヤード)
- その観点で日米は共同開発で費用負担をし、リスク低減と相互運用性を引き上げる方向に進むはずだ。その成果となるのは米国、イスラエル、オーストラリア、シンガポールも今後保有するのと同じ構成の空軍部隊で、第五世代機と能力向上第四世代機を組み合わせ統合運用を行うのだ。
- だがもっと根深い問題は各アナリストが見るように国際市場で競争力が大してない機体への資金投入を中止できるかという点で、F-2、C-2、P-1がその例だ。浮いた資金を研究開発の重要案件のほか、自国で製造できない装備の調達にあてるのである。.
- そうなると心神は無駄な支出にしか映らないとアナリスト陣は見る。
- 「心神が低価格ステルス戦闘機になってヨーロッパや米国が共同開発に関心を示す機体になるでしょうか、インド、オーストラリア他の各国が真剣に購入を検討するでしょうか。実現すれば機体単価を相当下げますが、心神の今後でよい点が見えてきません」と語るのは明治大学国際総合研究所客員研究員奥村準だ。奥村が以前所属していた経済産業省は国産防衛装備開発を支援している。
- アブラフィアも心神への資金投入は数十億ドル使ってよくわからない機体を作るだけなら防衛力整備で逆効果と見る。「防衛上のニーズよりも技術開発と自尊心の国家的な象徴にしかならないでしょう。ただし輸出を視野に入れた高い目標が本当にあれば話は別でしょうが」
- 一方で日本がF-35B取得に向かうとの観測が数年前から強まっている。DDHいずも級ヘリコプター駆逐艦にF-35B運用も可能な昇降機が装備されていることも材料のひとつだ。
- 「F-35Bはぜいたく品であり航空自衛隊が真剣に調達するとは思えない。航空母艦は低速で脆弱性があり、多大な支援を必要とする。海軍力を南シナ海以遠まで投射する意図があり、日米同盟が崩壊するのでない限り導入の可能性は考える価値がないですね」(奥村)
- アブラフィアも同意見で、固定翼機の空母航空戦力は兵力投射や域内プレゼンスの観点では魅力があるが、日本には高すぎる買い物だという。
- 「空母打撃兵力の整備はあまりにも高費用で踏み切れば問題は悪化するだけだ。もし日本が数十億ドルの防衛予算追加を決意すれば話は別だが、17機のV-22導入も何とか支払える範囲だったのではないか」
- だがガンヤードはF-35B導入が遠のいても米海軍の新鋭フォード級空母に搭載した電磁航空機発進システム(EMALS)にヒントがあるという。
- 「DDHにEMALSと拘束装置をつければよい。斜め飛行甲板をつけ、若干排水量と全長を伸ばせば海上自衛隊も固定翼機運用に復帰できる」
- 「ここまの方向転換では政府上層部もおいそれとは動けないだろうが、日本が空母戦力を再度整備すれば得られるメリットは戦略的に大きいのではないか」■
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