スキップしてメイン コンテンツに移動

★★ F-35A>F-16との模擬空中戦に負ける 防空任務を任せられるのか



F-35がF-16との空中戦に勝てなければ、その他国の新鋭戦闘機に接近空中戦で勝つ見込みは少ないということになりませんか。ドッグファイト向きでないので、とロッキードは弁明しているようですが、電子戦用途を想定する米海軍除き、すべての導入予定国はF-16等の更新機材として想定知るのではないでしょうか。つくづくこの機体に西側防空体制が振り回され、致命的な穴があかないことを祈らざるを得ません。

Controversy Flares Over F-35 Air Combat Report

Jul 2, 2015 Bill Sweetman | Aviation Week & Space Technology
ロッキード・マーティンF-35A供用打撃戦闘機(JSF)はF-16に基本戦闘機操縦性能で勝てなかった。演習で証明された。実機を操縦したパイロットのロッキード・マーティン向け報告書がリークされている。
  1. エネルギー機動性energy maneuverability (EM)、ピッチレート、飛行性のいずれも「直感的でなく好ましく思えなかった」ことが模擬空戦の大部分であてはまったためF-16に戦術的優位性が与えられ、F-16パイロットはミサイル、機関銃の双方でF-35を狙う位置につけた。またヘルメットが大型のためF-35のキャノピー内で後方視野が制限されたのも欠点だ。
  2. ロッキード・マーティンとJSF推進室が報告書の存在を認め、最初に War is Boringのホームページに掲載され、偽造ではないことがわかった。ただし、「今回のシナリオの解釈は誤解につながりかねない」と米空軍でF-35実戦化をすすめるジェフリー・ハリジアン少将 Maj. Gen. Jeffrey Harrigianは言い、結論を出すのは「時期尚早」だという。
  3. JSFの開発は1996年から続いており、これまで800億ドル超が投入されている。

  1. 報告書が言及しているテストミッションは1月14日に行われたエドワーズ空軍基地を離陸したロッキード・マーティン社主任テストパイロット、デイヴィッド・「ドク」・ネルソンが操縦したフライトのことだろう。これはすでにAW&STが4月に報じている。記事では模擬交戦で有利に立ったのはどちらの機種か論じていなかった。なおAviation Weekは作成者氏名が削除されてた報告書の写しを入手した。
  2. 基本性能から言ってJSFはF-16やF/A-18C/Dに対し格闘戦で優位になれないが、gや加速を瞬時に得られ、持続できる点で有利になっている。しかし、ロッキード・マーティンの幹部やパイロットからはセンサー融合機能、ステルス性、その他を勘案すればF-35は空戦で優位性を確立できると言明しており、「第四世代戦闘機」(この用語はロッキード・マーティンの造語)に対しその差は 400-600%に及ぶとしてきた。
  3. 1月のテストでF-35に対して優位に立ったF-16はブロック40のD型で、F-16の中では比較的性能が低い方で1987年から1994年にかけて納入されている。ブロック40は武装を強化して、ハブ・グラスレーダー断面積削減措置が施されている他、空虚重量が増えたが、ブロック50から導入された高性能エンジンは搭載していない。テスト機のF-16は370ガロンの外部燃料タンクを搭載していたため機体操縦は7gに制限されていた。
  4. ロッキード・マーティンからはテストに投入したAF-2は初期開発機体であり、ステルス塗装がないと説明があった。しかし 有視界交戦within-visual-range (WVR)にステルスは無関係であり、むしろ塗装膜のなき機体は軽量だったはずだ。またロッキード・マーティンはAF-2には「ヘルメットで旋回、照準し、敵機攻撃を機体の方向を変えずに可能にするソフトウェアが搭載されていなかった」と説明するが、好天の昼間ではこの機能はテストのF-16にもなかった。またテストではF-35はステルス性を発揮できていないが、機内に搭載する空対空ミサイルで高機動型はまだ使用できるものがないのが現状だ。
  5. 報告書ではF-35の飛行制御ソフトウェアに欠陥が見つかったと指摘している。ただし、ソフトウェアをいじっても高機動性の不足は解消できない。なぜなら機体がどの速度で飛んでいても、抗力と重量が加速、上昇、方向転換を決めるからだ。
  6. F-35の迎え角 angle-of-attack (AoA) の制限はF-16より大きい。これは通常なら有利になるが、ピッチレートの成約やEMが低いことが加わると実用性が低くなる。高いAoAを実現するまでに時間が相当かかり、エネルギー機動性が低いということはF-35は高速飛行での再加速が俊敏でないことを意味する。
  7. 飛行テストでは模擬空戦を17回行い、高度は18,000 から22,000 ft. の間、下限は10,000-ft. で速度は380 から440 kt表示速度だったと報告書は記載している。テストは「高AoAを実用上想定される反応操作に与え、AoAを上げるとともに操縦入力を過激に与える」ものだった。操縦パイロットはテストは「飛行条件を制限した通常テストでは得られないデータを得られた点で極めて効果的だった」と評している。
  8. 報告書ではまず「F-35Aの飛行特性でもっとも目立つのはエネルギー機動性の欠如だ」とあり、操縦パイロットはF-35Aの主翼はF-15Eより小さいことを指摘している。両機は機体重量はほぼ同じだが、推力は15,000 lb.もF-15が小さい。
  9. 「ピッチレートが充分でないためEM不足が悪化した」と操縦パイロットは報告している。エネルギーが連続して低下したため、パイロットは機首をあげようとした。F-35にはピッチレートの制約がなければ武器発射のチャンスはもっとあったはずだ。ピッチレートは空力特性よりも飛行原理による制約を受ける。攻撃、防御ともに期間銃の反応は鈍く、簡単に相手に見つかり対策を取られていると報告書にあり、飛行中のg 最高値は6.5gだった。F-35の機体は9gに耐える設計だ。
  10. 高AoAのフライトでF-16へ「攻勢に回る機会はわずか」だったという。F-16もロールとヨーでAoA制約はある。たとえば、フルラダーの入力を長く与えるとF-35は鋭いヨーを起こし、F-16は機首を横切り、ミサイル発射の好機が生まれると報告書は指摘。だがこの操縦で「エネルギーを失う覚悟」が必要で、機体は設定高度の下限に向かい、「敵が間違いを犯さない限り、撃墜されることを意味する」という。
  11. F-35は繊細な飛行制御システム (FCS) を搭載し、操縦桿やラダーの入力に対する反応を変更するのは機体が性能上限に向かい、AoAが低いあるいは高い状態で、角度が20から26度にある際だ。この範囲での空戦能力が最高だったと操縦パイロットは報告している。ただし、操縦は容易ではなく、飛行性が「直感的でなく、また楽でもなかった」ことと「横方向と飛行方向での反応で予想がつかないことがあった」ためだ。
  12. 操縦パイロットの所見ではFCSがAoAに応じて入力反応を調整してしまうことが問題だという。飛行テスト時にはAoAを設定し、特定の反応をパイロットは想定できるが、動的なフライトでは「AoAがどうのこうのというより敵機の動きに注意を集中し、機体反応は戸惑わせるものがあった」という。
  13. ある例では操縦パイロットがフルラダーを試みたがまったく効果が生まれず、そのため操縦桿に入力し、ラダーを踏むこむのと同じ効果を試みた。操縦パイロットは更に強くラダーを試み、「大変大きなヨー」を期待したが、FCSのスピン防止機能で即座に打ち消されてしまった。
  14. スピンできない飛行制御とピッチレートが低いことからF-35はF-16の銃撃から逃れることはできなかった。「銃撃への防御で有効策はなかった」と報告書は指摘している。例えば標準的な回避行動はピッチレートが低いことで有効に使えなかったため、パイロットは「圏外脱出行動を執らざるを得ず、簡単に追尾されていしまった」という。
  15. ヘルメット装着ディスプレイの大きさも問題になった。「敵機が目視出来る場合の位置確認にヘルメットが邪魔だった」と報告書にある。バイザー部分も視野の邪魔になることが数回あった。
  16. そこで報告書では対策を数点指摘している。例としてAoA制限の緩和とピッチレートがある。ともに迅速な移動や高AoAの実施を妨げている。これが実現すればF-35はF-16に対する操縦性魚の優位性を確保できる。また操縦パイロットからは「混合」飛行制御の枠を拡げ、戦闘時に飛行制御が変化しないようにするとともに、スピン制御よりももっとヨーをおこなえるようにすべきだとする。
  17. エネルギー機動性が足りないことの解決はもっと困難だ。最新世代戦闘機でのAoA制約が低いことを考えると、「F-35がスホイやタイフーンを相手にすると、簡単に餌食になる」と経験豊かな軍のパイロットが評している。「向こうのほうが旋回率で優れており(推力に余裕があるため)エネルギーの有効利用でも優れている」
  18. 報告書を見た別のパイロットがAviation Weekに語ってくれた。その全員が戦闘機メーカーと関係があるわけではない。全員が一様にエネルギー機動性の不足に驚いている。ブロック40のF-16に制約があり、機外タンク装着も「F-35に有利に働いたはずだ」とそのひとりは指摘し、有視界戦闘であればF-35のエンジンが強力で新型であり有利になっていたはずだという。
  19. 「F-35の実態に目を向けるべきでしょう」と別の海軍パイロットは指摘する。「同機は格闘戦向け軽量戦闘機ではない。F/A-18E/Fの初期生産でも同じことがあり、コードを数百万行書き換え、何度も改修を行っています。ただ今回はコードの書き換えはずっと容易になっているはずですが」
  20. 「誰が見ても俊敏な戦闘機ではない」と三番目のパイロットが語る。フライトテストで条件を変えたことが問題になっていると指摘し、パイロットの操縦時間が削られ、飛行訓練を別の低価格機やシミュレーターで代用すれば問題になるという。
  21. 今回の報告書漏洩でロッキード・マーティンは空戦時の操縦特性は重要ではないと主張している。「F-35が搭載する技術は交戦し、射撃し、敵を長距離から排除することが目的です。目視による『ドッグファイト』は必らずしも必要ではありません」 ただし、Aviation Week’の情報入手先の一つが指摘している。視界外での交戦は開戦初期には困難だろうという。あるいは交戦規則が長距離攻撃を制約するかもしれない。「F-35に対する有効な対策は思い切り接近すること」だという。■
なお、報告書の原文は下を参照してください。


コメント

  1. 1対1でミサイル無しGUNのみという通常ありえない想定の訓練で、開発中のためにEO DASが未実装で7Gの機動制限がかかってるF-35が負けたからってF-35の性能を測る参考にはならないのでは?
    EO DASが実装されればF-35は全方位に完全な視界を得ることができて自由な方向にミサイルを撃てるようになりますから格闘戦でも遅れを取るどころか非常に優位に戦えるようになると思います。

    返信削除
  2. 記事書いた方へ

    F-35AF-2がどういう機体か知っていますか?
    なぜF-16はブロック40のD型と明確に記載してるのに対し、F-35はAF-2とだけしか書かないんですか?
    AF-2はどういう機体なのか?ブロック数は?性能は?答えを書いておきます

    AF-2はSDD(システム開発実証飛行試験機)F-35シリーズの第7号機で、A型の第2号機です
    馬車馬と呼ばれるほど試験を続けている機体でタービンブレードに亀裂が入るほどの過酷な高温試験なども行っています
    先日もAF-2がF-35史上初となるGAU-22の実弾発射テストを行った動画が公開されました

    AF-2のブロック数は0です。0。性能はブロック1以下です。ブロック1の性能は分かりますか?それ以下です

    つまりこのリークをより正確に書くと「F-35Aブロック0vsF-16Dブロック40」なわけですが、何か思うところはありませんか?

    返信削除
  3. 日々読ませて頂いています。
    英語力不足につき、このような詳細な和訳記事を見ることができてとても助かっています。
    ブロガー様は長年F-35に懐疑的であるというスタンスをちゃんと表明してから書かれているだけでなく
    F-35の良い進捗などの記事についてもしっかりと紹介してくれており
    私はF-35推進派ではありますが、とても参考にさせて頂いています。

    本リークについても海外でかなりの注目を受けており、それを受けて書かれた元記事もとても注目されています。
    AF-2だからと言われることもありますが、今後の改修により改善する部分もあれば、改善しない部分もあります。
    国内でのF-35推進派は推進派の記事しか紹介せず、否定派はあまり技術的な論調ではないので、とても貴重な意見だと思います。
    反響も大きいかと思われますが、今後もこのような記事の紹介をして頂けたら幸いです。

    (AF-2は機体固有名であり、そう書けば1機まで特定できるものですから、十分ではないでしょうか。
    そもそも元のBill Sweetman氏(とても有名な方です)の記事にも、Block0などという言葉は出ませんし
    他の航空系の記事においても、見たこともありません)

    返信削除
  4. そもそも、ステルス機が格闘戦を仕掛けられる距離まで詰められる事は考えにくい(と言うかそういう状態になる事自体が戦術的に既に負け)
    最近の戦闘、特に米軍のそれは視界外でアムラームを先に売った方が勝つ、というもので、F35はそうやって空中線に勝つ事を目的としている機材であって、F16の後継とはいえ、F16と同じ事をする必要はない

    返信削除

コメントを投稿

コメントをどうぞ。

このブログの人気の投稿

フィリピンのFA-50がF-22を「撃墜」した最近の米比演習での真実はこうだ......

  Wikimedia Commons フィリピン空軍のかわいい軽戦闘機FA-50が米空軍の獰猛なF-22を演習で仕留めたとの報道が出ていますが、真相は....The Nationa lnterest記事からのご紹介です。 フ ィリピン空軍(PAF)は、7月に行われた空戦演習で、FA-50軽攻撃機の1機が、アメリカの制空権チャンピオンF-22ラプターを想定外のキルに成功したと発表した。この発表は、FA-50のガンカメラが捉えた画像とともに発表されたもので、パイロットが赤外線誘導(ヒートシーキング)ミサイルでステルス機をロックオンした際、フィリピンの戦闘機の照準にラプターが映っていた。  「この事件は、軍事史に重大な展開をもたらした。フィリピンの主力戦闘機は、ルソン島上空でコープ・サンダー演習の一環として行われた模擬空戦で、第5世代戦闘機に勝利した」とPAFの声明には書かれている。  しかし、この快挙は確かにフィリピン空軍にとって祝福に値するが、画像をよく見ると、3800万ドルの練習機から攻撃機になった航空機が、なぜ3億5000万ドル以上のラプターに勝つことができたのか、多くの価値あるヒントが得られる。  そして、ここでネタバレがある: この種の演習ではよくあることだが、F-22は片翼を後ろ手に縛って飛んでいるように見える。  フィリピンとアメリカの戦闘機の模擬交戦は、7月2日から21日にかけてフィリピンで行われた一連の二国間戦闘機訓練と専門家交流であるコープ・サンダー23-2で行われた。米空軍は、F-16とF-22を中心とする15機の航空機と500人以上の航空兵を派遣し、地上攻撃型のFA-50、A-29、AS-211を運用する同数のフィリピン空軍要員とともに訓練に参加した。  しかし、約3週間にわたって何十機もの航空機が何十回もの出撃をしたにもかかわらず、この訓練で世界の注目を集めたのは、空軍のパイロットが無線で「フォックス2!右旋回でラプターを1機撃墜!」と伝え得てきたときだった。 戦闘訓練はフェアな戦いではない コープサンダー23-2のような戦闘演習は、それを報道するメディアによってしばしば誤解される(誤解は報道機関の偏った姿勢に起因することもある)。たとえば、航空機同士の交戦は、あたかも2機のジェット機が単に空中で無差別級ケージマッチを行ったかのように、脈絡な

主張:台湾の軍事力、防衛体制、情報収集能力にはこれだけの欠陥がある。近代化が遅れている台湾軍が共同運営能力を獲得するまで危険な状態が続く。

iStock illustration 台 湾の防衛力強化は、米国にとり急務だ。台湾軍の訓練教官として台湾に配備した人員を、現状の 30 人から 4 倍の 100 人から 200 人にする計画が伝えられている。 議会は 12 月に 2023 年国防権限法を可決し、台湾の兵器調達のために、 5 年間で 100 億ドルの融資と助成を予算化した。 さらに、下院中国特別委員会の委員長であるマイク・ギャラガー議員(ウィスコンシン州選出)は最近、中国の侵略を抑止するため「台湾を徹底的に武装させる」と宣言している。マクマスター前国家安全保障顧問は、台湾への武器供与の加速を推進している。ワシントンでは、台湾の自衛を支援することが急務であることが明らかである。 台湾軍の近代化は大幅に遅れている こうした約束にもかかわらず、台湾は近代的な戦闘力への転換を図るため必要な軍事改革に難色を示したままである。外部からの支援が効果的であるためには、プロ意識、敗北主義、中国のナショナリズムという 3 つの無形でどこにでもある問題に取り組まなければならない。 サミュエル・ P ・ハンチントンは著書『兵士と国家』で、軍のプロフェッショナリズムの定義として、専門性、責任、企業性という 3 つを挙げている。責任感は、 " 暴力の管理はするが、暴力行為そのものはしない " という「特異な技能」と関連する。 台湾の軍事的プロフェッショナリズムを専門知識と技能で低評価になる。例えば、国防部は武器調達の前にシステム分析と運用要件を要求しているが、そのプロセスは決定後の場当たり的なチェックマークにすぎない。その結果、参謀本部は実務の本質を理解し、技術を習得することができない。 国防部には、政策と訓練カリキュラムの更新が切実に必要だ。蔡英文総統の国防大臣数名が、時代遅れの銃剣突撃訓練の復活を提唱した。この技術は 200 年前のフランスで生まれたもので、スタンドオフ精密弾の時代には、効果はごくわずかでしかないだろう。一方、台湾が新たに入手した武器の多くは武器庫や倉庫に保管されたままで、兵士の訓練用具がほとんどない。 かろうじて徴兵期間を 4 カ月から 1 年に延長することは、適切と思われるが、同省は、兵士に直立歩行訓練を義務付けるというわけのわからない計画を立てている。直立歩行は 18 世紀にプロ